貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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4183 三井化学

東証P
4,410円
前日比
-89
-1.98%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
16.8 1.02 3.17 2.58
時価総額 8,857億円
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決算発表予定日

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三井化学 Research Memo(6):業績変動性をやわらげ、最低限の利益を確保できる体制を整える


■各事業セグメントの詳細

(4)基盤素材事業

a)事業の全体像
基盤素材事業はいわゆる石油化学コンビナートで生産される基礎素材としての石化製品を製造販売する事業だ。石油化学プロセスの各段階で他社に原料として供給したり、自社で製品にまで加工してから販売したりと、様々な形で販売されて売上に立つが、三井化学<4183>は4つのサブセグメントで管理している。

具体的には、ナフサを原料として投入し、ナフサクラッキング・プロセスを経て、エチレン、プロピレン、B-B留分などを生産する。同社はこの段階で中間品であるエチレンやプロピレン等の一部を製品として販売しており、それが石化原料というサブセグメントとなる。残りのエチレンやプロピレンは自社グループ企業に送られ、そこで完成品であるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)という合成樹脂(プラスチック)が生産・販売される。また川下のプロセスではPEやPP以外にもフェノール等の数多くの誘導品が生産・販売され、基礎化学品として売上に立つ。また同社が強みを持つポリウレタンも独立したサブセグメントとなっている。

売上高の地域別内訳は日本が約4分の3を占めている。しかし、中国やシンガポール、タイなどアジア各地に生産拠点を擁して、地産地消を進めていることもあり、この比率は今後次第に低下していく方向にある。

b)収益構造
基盤素材事業の収益構造は、国内と海外とで異なる点がポイントだ。国内ではいわゆるフォーミュラ方式の値決めが浸透している。これは原料ナフサの価格を基準に一定の利幅を載せる形で各種誘導品の価格が決定されるという仕組みだ。両者の値動きのタイムラグで一時的には利幅の縮小・拡大はあるが、基本は一定という構造だ。したがって収益は数量の変動に左右されることになる。

海外市場では、各化学品の価格は、コモディティ商品の原則通り、その時々の需給バランスにより市況が決定され、その価格での取引となる。需給バランスを崩す要因は新工場の稼働や、既存工場の増産またはトラブルなどによる減産など、様々だ。海外市場では数量要因と価格要因の両方により収益が影響されることになる。

為替影響についてはニュートラルと考えてよい。後述のように、同社は原料のナフサを用いて製品を作りその80%を国内で販売している。フォーミュラ方式による値決めは円建ての原料価格をベースとしているため、為替影響はニュートラルと言える。

c)基盤素材事業における同社の特長と強み
基盤素材事業の製品はいわゆるコモディティ(市況品)型のものも多く、需給バランスによって価格が大きく上下動するためそれだけ業績も影響を受けやすい。これに対して同社は、後述する3つの施策を進めて、こうした業績変動性をやわらげ、また、市況のサイクルが最悪期にあるようなケースでも最低限の利益を確保できるような体制作りに取り組んでいる。

1)エチレンセンターのフル稼働体制の確保
石油化学コンビナートは典型的な装置産業であり、設備稼働率がコストに直結する。特に、一番の川上であるナフサクラッカーの部分の稼働率がカギを握っている。この点について同社は、2015年3月をもって京葉エチレン(株)から離脱した。京葉エチレンはエチレン不足の時代に丸善石油化学(株)、住友化学<4005>、同社の3社が出資して設立され、同社は京葉エチレンから年産768千トン/年(定修スキップ年)の25%を引き取っていた。しかしエチレン余剰時代となってからは、京葉エチレンからの引き取り分があるがゆえに、自社の千葉プラントの稼働率を落とさざるを得ない状況となっていた。京葉エチレンからの離脱で、千葉と大阪の両エチレンセンターでフル稼働ができるようになり、コスト競争力が大きく改善している。

2)“地産地消”政策によるエチレン国内消費率90%
同社は生産したエチレンの90%以上を国内で消費している。しかも国内消費分の90%(生産量に対しては約80%)は自社誘導品で消費している。この意義は非常に大きい。国内の値決め方式はフォーミュラ方式で、原料ナフサの価格変動を製品価格に転嫁できる仕組みとなっているのは前述のとおりだ。それに対して輸出は、価格はその時々の需給で動くため、大儲けできるときもあれば、赤字での輸出となることもある。一般には日本勢は諸外国勢に比べてエチレンのコストは高いとされているため、輸出に頼る事業モデルはそれだけ赤字になるリスクが高いと言える。生産量の90%を国内で消費する同社は、業績安定性や赤字転落への抵抗力がそれだけ高いと言える。

3)高付加価値ポリマーの構成比率90%
上記2)とも密接な関係にあるが、高い国内消費率を維持するためには、各種誘導品(製品としての化学品)をきちんと国内で売り切る力が必要だ。エチレンを始め化学品の中間体はガスであることが多く、その状態で在庫として保持することが難しい。これが鉄鋼や金属などとの大きな違いであり、それゆえ国内の需給が崩れると減産する(稼働率を落とす)か、余剰分を海外に輸出せざるを得なくなる。こうした事態を防ぐために、同社は需要が安定してより高価で販売できる高付加価値型ポリマーに注力している。エチレンの最大消費先はポリエチレン(PE)樹脂だ。ここに関して同社は、汎用ポリエチレンのプラントを停止する一方、高機能タイプのポリエチレンの能力を増強した。これはメタロセン触媒を利用した直鎖状低密度ポリエチレンで、エボリューRブランドで販売されている。同社の包装用フィルムの基材としても利用されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《TN》

 提供:フィスコ

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