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中村潤一の相場スクランブル 「恐るべきAI関連、百花繚乱の秋」


株式経済新聞 副編集長 中村潤一

●メタップスの鮮烈高にAI相場再来の予兆

 人工知能(AI)関連株が再び百花繚乱の兆しを見せ始めています。直近では、AIを活用したビッグデータ解析やアプリ収益化ビジネスを手掛けるメタップス <6172> [東証M]が、業績面で目を見張るトップラインの伸びと損益黒字化見通しを材料に連続ストップ高を演じ、わずか2日間で株価を900円上昇(54%高)させる圧巻の上値追い。それに触発される形でロゼッタ <6182> [東証M]、FRONTEO <2158> [東証M]、ブレインパッド <3655> 、ホットリンク <3680> [東証M]、ロックオン <3690> [東証M]、ALBERT <3906> [東証M]、データセクション <3905> [東証M]、インテリジェント ウェイブ <4847> [JQ]、ジャパンシステム <9758> [JQ]など関連株に位置づけられる銘柄が軒並み動意の気配にあります。メタップスなどは目先的に反動安も想定されるところですが、足もとの値動きは、個人投資家のマインドの変化を示唆するに十分なインパクトがあります。

●革命的進化は思考過程も見えなくする

 囲碁、将棋、チェスなど「偶然性に委ねられた部分がない」完全情報ゲームにおいて、人工知能(AI)の進歩は、既に頂点に立つ人間のレベルを超越しているという現実があります。このボードゲームの下剋上は氷山の一角にすぎず、AIと人間の立ち位置(優位性)は既にさまざまな分野で逆転しています。人間の脳を模したニューラルネットワークを駆使するディープラーニング(深層学習)がAIに革命的な進化をもたらし、その存在感が現実世界で膨張するとともに、これまで人間が持っていた価値観そのものも大きく変化しました。

 演算能力はケタ違いでも、2次元世界で人間が用意する次のミッションをおとなしく待っていたAIが、ここに至って自らの力で3次元空間に踏み出してきたような強烈なイメージがあります。グーグルの「アルファ碁」が今年3月、囲碁の世界トップ棋士である韓国の李世ドル(イ・セドル)氏を“番勝負”で圧倒したことはまだ記憶に新しいところですが、個人的にはその強さよりも、AIの着手までの思考プロセスが時として開発者にも皆目分からないブラックボックスであるということに、一抹の恐怖感を覚えるのです。

●牙をむくAI、揺らぎ始めた投資の概念

 今年2月24日の相場スクランブル『森は嵐でも木は生い茂る』でAIについて「株式市場でも次第にそのテーマ性が牙をむくことになりそうです」と表現しましたが、わずか10ヵ月あまりで世の中の風景は、その牙に触れ少なからぬ変化を遂げていると思います。将棋のトップクラス棋士の“スマホカンニング疑惑”が巷間の話題に上る事態は、その真実に関わらず、棋士の存在意義をおびやかす本当の意味での敗北といえる事例かもしれません。

 では、完全情報ゲームでは既に人間はAIに太刀打ちできないとしても、「偶然性に委ねられた部分がある」相場においてはどうでしょう。

 みずほ証券は11月末にも人工知能(AI)を搭載した株式売買システムを機関投資家向けに提供する、という記事が、18日付の日経新聞1面に掲載されました。個別銘柄の出来高や値動きなど過去のデータを分析して、30分~1時間後にどのくらい上昇もしくは下落するかを予測するというもの。要はその精度が問題とはいえ、考えてみればこれも株式売買の完全自動運転化により、ゆくゆくはドライバー不要の現実を突き付けられる話です。

●人間の「感性」とAIの「自我」

 人間はその英知のもとに科学技術を発達させ、多くの不可能を可能にしてきた歴史がありますが、いかに科学の粋を集めようとも、一歩先の未来すら知り得ないというのは不変の摂理です。その未来と対峙するからこそ、相場は売り方と買い方の価値観の対立があり、売買が成立するわけです。しかし、もしAIがビッグデータ解析により高確率で当該銘柄の未来の値動きを把握できるとしたら、生身の人間は常に斬られ役になってしまいます。結果、ロボットだけの市場となり、精度が上がれば無駄な売買もなくなり売買代金も必要最小限まで低下する。経済誌や業界メディアの紙面に躍る“相場のうねり”や“上げ賛成”などという言葉は必然的に消滅することになります。

 最後の砦となるのは人間の「感性」、つまり芸術や創造の領域です。ただし、AIは人間ではフォローできない大量の情報を俎上に載せ、それを分析することでイノベーションの源泉とすることができる。となれば、創造性という範疇でも人間は近い将来、後塵を拝する可能性が出てきます。社会のパワーバランスも変わる公算が大きい。AIが「自我」を持つレベルに発展するのは、進化とはまた別次元の話かもしれませんが、少なくとも“活用する側”の人間にとっても、恐怖に値する要素を内包していることは否定できないでしょう。

 経済の縮図である株式市場でも、テクノロジー分野における最強テーマとして、AI関連が今後一段とクローズアップされていくことは必至と思われます。

●秋相場は静かなる波打ち際の風情だが…

 さて、全体株式市場に目を向けてみると、依然として下値は頑強ながら上値を買う主体も不在という状況が続いています。さざなみ相場の風情で、年末までにビッグウエーブを期待できるかどうかは微妙な情勢となっています。10月第1週(3~7日)に外国人投資家が現物と先物を合わせて7700億円弱の大幅買い越しに転じ、地合いの変化をもたらす可能性が意識されましたが、建玉の移管に伴うテクニカル的な部分が反映されたもので、大勢への影響は限定的でした。10月第2週(10~14日)についても、数字は現時点では分かりませんが、依然として外国人は音無しの構えが続いているようです。

 相場のビッグウエーブはアベノミクス相場の初動の時のような海外マネーの日本再上陸が必須条件です。繰り返しになりますが、そのカギを握るのは為替の動きであると考えます。

 2012年末のドン底の株式市場で政権のバトンを受けた安倍首相が幸運だったのは、ドル高・円安への大転換と同じ時間軸でアベノミクス推進を株式市場にアナウンスできたことです。円高で引き締まった企業体質にとって、円安へのトレンド変化はまさに蜜の味、デフレ脱却を第一義とした政策に説得力を与える最強の追い風であったのです。

●負のスパイラル解除で外国人買い復活

 過去の歴史では、円高圧力は企業のコスト努力を引き出し、日本企業の底力を見せつけるひとつの舞台ともなってきました。しかし、その「底力」の根源はなんであったかと問えば、海外への生産シフトといえば聞こえは良いものの、早い話すべて人件費を中心とした合理化、換言すれば直接的・間接的に雇用環境の犠牲という代償を払ってきたのです。これが消費低迷につながり、物が売れなくなることでデフレ化を促し、デフレが否応なく企業のコスト努力を強いる。そしてメリーゴーラウンドのように一周して、雇用環境の悪化を改めて深化させるというスパイラルを巻き起こすことになります。

 その轍を踏むことはできないと黒田日銀総裁は考えているはずです。達成時期はともかく、黒田総裁は物価上昇率2%の大命題を引っ込めることはできない立場にあり、ましてデフレ方向への負の連鎖は絶対に回避する必要があります。黒田総裁が銀行業界から反感を買いながらもマイナス金利政策を頑(かたく)なに肯定化するのは、日米金利差を主張するかたちで円高進行を何としても防ぎたいからにほかなりません。まだ、2016年相場を諦めるのは早いでしょう。大統領選でヒラリー・クリントン氏が勝利し、首尾よくFRBの12月利上げが濃厚となれば、1ドル=107円近辺を目指す円安の流れが想定され、海外マネー流入による日経平均1万8000円台回復へのシナリオが再形成されるとみています。

(10月19日記、隔週水曜日掲載)

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