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証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
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3653 モルフォ

東証G
1,878円
前日比
-17
-0.90%
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単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
69.3 3.16 15.24
時価総額 102億円
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中村潤一の相場スクランブル 「究極の輝き2017年AI相場本格始動へ」


株経ONLINE 副編集長 中村潤一

【第1部】2016年相場で何を見たか ―――――

●安倍首相の運の強さ映す5年連続陽線

 今年の日経平均株価は最終コーナーを通過した直線勝負で一気に上げ足を加速、年足は2012年から数えて5年連続の陽線を引く可能性が濃厚となっています。以前からの繰り返しになりますが、これは円安恩恵によるもの。経済実勢を見る限りアベノミクスの成果とは言い難いけれども勝てば官軍、この5年間の軌跡は安倍首相の運の強さを示すとともに、第一義に掲げたデフレ脱却を示唆する大きな礎と定義づけることもできそうです。

 2016年相場を振り返ると、年初は582円安の急落で幕を開け、その後も谷底に丸太を転がすような下げに呆然とさせられたことが思い起こされます。15年末の欧米株市場が総じて軟調だったことで一抹の不安はありましたが、引き金を引いたのは中国・上海株安。チャイナ・ショックの実体はとらえどころのないままに世界株市場を混乱に陥れましたが、そこからいち早く抜け出したのが米国株市場でした。NYダウは3月初旬に26週移動平均線を上回ってからは、これをサポートラインに上昇気流に乗り、安値圏で逡巡する日本株を横目に見事な立ち直りをみせて上値を追い続けました。

●強烈だったトランプ株高旋風

 今年は常に米国株が世界の中心軸を担っていたわけですが、圧巻だったのはやはり米大統領選後の恐るべき株高旋風でしょう。個人的な予想は、箸にも棒にも引っかからないヒラリー・クリントン氏勝利からの米国株ジリ高歩調継続でした。実際はトランプ氏がここを制し、さらにこれが日米株価の奔騰スイッチを押すかたちとなりました。

 しかし、ドラマチックな展開だからこそ、現実の世界ではその筋書きには乗りにくいという面もあります。

 11月第2週から始まった上昇相場、「トランプ劇場」の演目は“アメリカ・ファースト”で日本にとって必ずしも心地よいシナリオではなく、これが投資主体別の売買動向にもクッキリと顕れました。12月第2週までの6週間の間、外国人投資家はひたすら日本株を買い続け、現物で合計2兆2532億円を買い越しました。一方、同期間に対照的に怒涛の売り攻勢をみせたのが個人投資家で2兆3592億円の売り越しを記録。先物を考慮しなければ、個人は外国人の買いを丸飲みする規模の売り主体であったことが分かります。しかし、初動の外国人買いは空売り筋のショート・カバーとみられていただけに、相乗りするのは相当な勇気が必要であり、本能的に売りを優先するのは仕方のない流れだったともいえます。

●1塁から離れられなかった投資家心理

 作家でジャーナリストでもあるバーバラ・グリッツィ・ハリスンいわく「2塁へ盗塁するには1塁に足をかけたままではいられない」。なるほどこの言葉、当たり前のようでいて、言い得て妙。ランナーの心にスポットを当てれば、この1塁から足を離してダッシュする最初の一歩に“盗塁”におけるプレッシャーのすべてが集約されているといっても過言ではないからです。株式投資でいえば、資金をマーケットに投入するというのは、文字通り1塁ベースを蹴って勇躍2塁へ向かうことを意味します。今回のトランプ相場では、米大統領選までの過程で醸成されたメディア経由の既成概念が、執拗に繰り返されたピッチャーからの牽制球のように投資家心理に食い込み、何度も走れる好機に恵まれながら、最初の一歩が踏み込めなかったというのが実態ではないでしょうか。

 もっとも盗塁のチャンスを見送るだけではアウトにはならない。株式投資でいえば機会損失に過ぎないわけですが、乗り遅れた投資家は「空売り」という逆走によって実損を被るケースも相次ぎました。そのひとつの象徴が、前回の当コラムでも触れましたが、日経平均に対し逆方向に連動するNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信 <1357> [東証E]。日足チャートをみると、11月9日の大商いを伴った大陽線示現と合わせて、その後の地滑り的な下値模索が暗示的。米大統領選後の異次元の上昇シナリオに振り回された投資家の心にフィーチャーした波動を刻んでいます

●ヘッジで日経ダブルインバースの買い

 ただし、ここまでくれば今年の波乱の幕開けを教訓に一考を要する場面でもあります。日経ダブルインバースの2000円以下の水準を安易に拾い場と断じることはできませんが、市場に投下する資金の4分の1程度でもリスクヘッジ対象として押さえておけば、買いたい銘柄に素直に攻めの姿勢がとりやすくなると思います。

 どんなに強い波動であっても相場は生き物、年初はいったん下に振られるケースもあり得ます。16年の波乱の大発会はまだ記憶に残っていますが、遡れば15年は大発会の翌日に525円安を記録、14年は年初に382円安といずれも正月気分を吹き飛ばすスタートとなっているのです。慎重かつ大胆に、17年相場と対峙したいところです。

【第2部】2017年相場で何を買うか ―――――

●中小型株優位のなかで浮上するAI関連

 11月初旬を境に株式市場の景色は確かに変わりました。しかし、新年相場では中段を漂っていた中小型株にリターンリバーサルの流れが訪れる可能性があると思います。仮に日経平均が2万円を通過点にPER16倍程度の2万1000円近辺まで短期間で上昇したとしても、その上昇率は8%程度。日経225採用の主力株投資では1割の値幅をとるのも結構大変なのです。しかし、1割の値幅は値動きの速い中小型株であれば、瞬時にクリアできるハードルであることも事実です。

 では、どこに視点を向ければよいのか。株式市場に大きな影響を与える要素は、ひとことで言えば「時流」。曖昧なようですが、これは日々の新聞などをみて目にする機会の多いワードと解釈してもいいでしょう。それぞれが個別の材料で動くとしても、時流を反映した銘柄が最強なのです。とするならば、やはり要注目はAI(人工知能)関連でしょう。 IoTフィンテック自動運転ドローンバイオなどの有力テーマとは同列ではなく、その全てに横串を通すように関与しており、企業の動きを見ても、猫も杓子もAIという時代がすぐそこに来ていると思われます。

●AIの恐るべき進化スピード

 エポックメーキングとなったのは、今年3月にグーグルが開発したAI「アルファ碁」が囲碁の世界トップ棋士である韓国の李世ドル(イ・セドル)氏との5番勝負で圧勝したこと。昨年末の時点では、まだ10年は囲碁の分野でソフトは人類最強に勝てないといわれていただけに、そこから数ヵ月後のアルファ碁の快挙は業界に衝撃を与えました。ここを境に株式市場でも関連銘柄が総花的に急動意をみせるパターンが増えたように思います。

 少々脇道にそれますが、これまで囲碁、将棋、チェス、オセロなど戦いにおける全情報がプレーヤーに公開された「完全情報ゲーム」で人間がコンピューターに勝てるのは、唯一、囲碁だけでした。この最後の牙城もついに崩されたことになります。

 革命的な変化をもたらしたのは機械学習、特に人間の脳を模したニューラルネットワークを駆使するディープラーニング(深層学習)によるもので、これは ビッグデータの普及で学習教材が大量に存在することが大きいといわれています。もっとも1秒間に100万を超える局面を処理するAIであっても、10手先を読むのに気の遠くなる“年月”がかかることが試算されており、完全情報ゲームではこれを評価関数という「大局観」でフォローする仕組みでカバーしてきました。囲碁だけは評価関数が作りにくく、これがAIにとって「10年勝てない」といわれるハードルとなっていたのですが、ある局面からランダムに手を指し続けたときの勝率を計算し、勝ちやすい局面を見つけるモンテカルロ法という手法により、一気にブレークスルーを果たしたという経緯があります。

●そしてAI支配は杞憂ではなくなる

 あとは人間の「感性」がどこまでAIを引き離した状態でいることができるか。芸術や創造の領域では後塵を拝することはないと考えられがちですが、これも幻想かもしれません。ビッグデータを成長の糧とするAIは、人間では全くフォローできない膨大な量の情報を俎上に載せ、それを分析することでイノベーションの源泉も尽きることはありません。自我を持たないAIはあくまで人間の道具であって、主従関係の逆転を心配するのは杞憂に過ぎない、という見方も近い将来に揺らいでくる可能性は高いとみています。

 国内では、サウジアラビアの政府系ファンド「PIF」などと共同で、テクノロジー分野への最大1000億ドル規模の巨大投資ファンド設立に動いたソフトバンクグループ <9984> の存在感が極大化しています。AIや半導体という超成長分野での野心的な取り組みは、強力に推し進めるM&A戦略を底流に、株式市場でも今後注目を集める公算が大きいでしょう。また富士通 <6702> を筆頭に、大手電機メーカーもAI分野の開拓に向け総じて数千億円規模の資金を振り向けるとの観測も出ています。

 海外では汎用AIに意欲をみせる前出のグーグルはもとより、アップルやマイクロソフトといったITの大御所がAI導入に本腰を入れており、今の世界の潮流は止められないでしょう。もはや国境も関係なくなっています。独シーメンスは米IBMのAI型コンピューター「ワトソン」を自社のIoTプラットフォームに組み込みデータ分析を円滑に進める方針を発表するなど、国際的にもIT大手の連携、合従連衡は今後一段と加速していくことが予想されます。

●東京市場にひしめく注目の銘柄群

 日本でも企業間の資本提携や業務提携の動きなどが今後活発化してくることが予想されます。競争の激しい分野でもあり、将来的に玉石混交となる可能性も否定しきれませんが、現在の東京市場には注目すべき有望銘柄群がひしめいていることは確かでしょう。

 AIを活用したビッグデータ解析やアプリ収益化ビジネスを手掛けるメタップス <6172> [東証M]、AIエンジン「KIBIT(キビット)」やAI搭載ロボット「KIBIRO(キビロ)」を開発しているFRONTEO <2158> [東証M]、人工知能搭載予測システム「scorobo(スコロボ)」を販売するテクノスジャパン <3666> 、画像処理ソフト分野で実績を持ち、デンソー <6902> と連携してディープラーニング分野を深耕するモルフォ <3653> [東証M]、「ロボティクス・AI」を新事業の中核に位置付け積極展開する日本サード・パーティ <2488> [JQ]などの存在感が大きい。

 また、AIなどを活用したマーケティングサービス分野での展開を標榜するロックオン <3690> [東証M]やAIを活用した自動翻訳サービスを手掛るロゼッタ <6182> [東証M]、ディープラーニングによるソーシャルメディア分析などを活用して企業のマーケティング支援ニーズを取り込むデータセクション <3905> [東証M]、AI技術革新に向け積極的に取り組み、人間対AIに主眼を置く叡王戦スポンサーでもあるカドカワ <9468> 、自然言語処理エンジン「マインドプラス」を手掛けAIを利用した課題解決支援サービスを展開するブレインパッド <3655> などにも市場の注目度は高いようです。

 このほか、JIG-SAW <3914> [東証M]、ALBERT <3906> [東証M]、サイオステクノロジー <3744> [東証2]、エヌアイデイ <2349> [JQ]、インテリジェント ウェイブ <4847> [JQ]、フォーカスシステムズ <4662> 、安川情報システム <2354> [東証2]、ホットリンク <3680> [東証M]なども引き続きマークしておきたいところです。

(12月28日記、隔週水曜日掲載)

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