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3538 ウイルプラス

東証S
1,005円
前日比
-12
-1.18%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
5.8 0.98 4.33 43.33
時価総額 104億円
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決算発表予定日

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ウイルプラスH Research Memo(8):店舗単位の高効率経営でインポーター等の高い信頼を獲得


■中長期の成長戦略と進捗状況

5. 同社の強み
ウイルプラスホールディングス<3538>の“成長の仕組み”、あるいは“成長のプロセス”を理解するうえで、同社の店舗の異動実績を見ることは非常に有効だと弊社では考えている。同社は創業から2019年6月期第2四半期までに37店舗をM&Aもしくは自社新規出店で展開してきた。一方で9店舗が閉鎖・統合されている。

興味深いのは、閉鎖・統合された9店舗のうち7店舗がM&Aで獲得した店舗で、自社新規出店の店舗ではわずか2店舗にとどまっており、両者の生存率に大きな差がある点だ。こうした差が生じた理由は、店づくりや店舗運営に対する取り組み姿勢の違いにあるものと弊社では考えている。同社が自身の手で新規出店を行う場合、既存の自動車ディーラーの土地建物を居抜きで賃借することを基本としている。その上でインポーターから求められるブランドCIに準拠した改装を行い、出店コストの削減に努めている。運営後の費用についても同様だ。一方、M&Aで獲得した店舗は、出店に際して過剰投資を行ったり店舗運営が高コスト構造であったりするケースが多かったのではないかと弊社では推測している。同社にとってM&Aはあくまで手段であり、目的はブランドの獲得(マルチブランド戦略)と商圏の獲得(ドミナント戦略)だ。“多店舗戦略”というのは同社の成長戦略にはない。

こうした経営戦略の下、M&Aで獲得した店舗についても(M&A店舗“だからこそ”)冷徹に収益性を管理し必要な経営判断を下している。結果として、店づくりの当初からローコストオペレーションの意識が徹底している自社新規出店の店舗が高い生き残り確率を有することにつながっているというのが弊社の考えだ。

もう1つ、同社の店舗異動実績から強く感じるのは、経営のスピード感だ。同社はスクラップ&ビルドのサイクルを速めていくという意識を持って経営に臨んでいるが、過去の動きを見る限りそれが実践されていると弊社では評価している。存続・閉鎖の判断については、一定の時間をかけて店舗収益の推移を見守り、その上で閉店を決断するケースもあれば、環境変化によってもはや先行きがないと判断すれば間髪を入れずに撤退を決断することもあるようだ。こうした判断ができるのは、同社の事業戦略の1つであるドミナント戦略の効果だと弊社では考えている。同社は近隣に複数の店舗を展開しており、ある店舗を閉鎖しようとする場合、近隣の同社の店舗に顧客と従業員を移管し、サービス低下を防いで顧客を囲い込むと同時に、雇用を守ることもが可能な体制にある。これが素早い意思決定を可能にしている大きな要因と考えられる。

以上のように、同社の成長は単なるM&Aによる店舗数拡大ではなく、その後の店舗単位での高い経営力によって実現されてきた。その結果、現在では既存店舗網におけるM&A店舗と自社出店の店舗の構成比がおよそ半々となっている。こうした結果は、立地選定や出店コスト、ランニングコスト等のコスト構造全般を含めた総合的な店舗運営力という点で、同社が優れていることの証左と言える。こうした実績と、M&Aから店舗再編の一連の流れの中で被買収企業の雇用を維持してきたことが、インポーターや同業他社からの信頼獲得につながり、M&Aの案件紹介や事業エリア拡大という形で同社の3つの成長戦略へとつながる好循環が生み出されている。この循環こそが同社の最大の強みと弊社では考えている。


出店費用を含めた店舗のローコストオペレーションの徹底で20%近い高ROEを実現
6. ROE分析
同社が、経営評価指標としてROEを採用し、業績面(売上高、利益)の成長と同様に、高ROE経営の実現を目指しているのは前述の通りだ。

ROEの目標値としては10%を最低限クリアすべき数値とし、できる限り高いROEを実現することを目指している。2018年6月期実績の同社のROEは前期の19.4%から低下したものの、18.2%と依然として高い水準を維持している。この数値は同社と同じ輸入車の正規ディーラー事業を手掛けているVTホールディングス<7593>やケーユーホールディングス<9856>と比較しても、非常に高い水準にある。

ROEはROA(総資産経常利益率)と財務レバレッジ(総資産/自己資本)から成り立っている(厳密にはリターン(R)を経常利益から当期純利益に変換するために、“当期純利益/経常利益”という要素も加わり、3つの要素で構成される)。2018年6月期実績についてみると、ROE18.2%は、ROA12.1%と財務レバレッジ2.31倍、及び当期純利益/経常利益比率64.9%から成り立っている。注目なのはROAの12.1%という高さだ。このROAが同社の高ROEに大きく貢献しているのは疑いなく、またROEの質を高めるという点でも寄与している。

ROAは売上高経常利益率と総資産回転率に分解することができる。同社の12.1%というROAは売上高経常利益率4.9%と総資産回転率2.49回から成り立っている。同社の売上高経常利益率の4.9%というのはごく平均的な数値であり、同社の高いROAは2.49回という高い総資産回転率によってもたらされているといえる。同業2社との比較においても同社の総資産回転率の高さは際立っている。

総資産回転率は売上高を総資産で除したものであるため、この比率を高めるには総資産の抑制と売上高の拡大のどちらか、もしくは両方を実現すればよい。

売上高を左右する外部要因は同業他社との間に大きな違いはないはずなので、まずは総資産の中身を探ることになる。この点、同社は総資産に占める有形固定資産の比率が27.6%(2018年6月期末の数値の計算値)と他の2社(34.3%、47.9%)よりも明確に低い水準にある。前述のように、同社は出店に際しての土地建物の手当て(賃借を原則)を初め、全般的にバランスシートの肥大化防止や運営費用の抑制を強く意識した経営を実践してきている。そうした同社の経営姿勢が総資産回転率に象徴的に現れたものと弊社では考えている。

現時点で20%近い高ROEを実現している同社であるが、この水準が今後も維持できるかは予断を許さない。懸念材料の1つは新規出店に係る費用だ。これまでは既存の自動車ディーラーの土地建物を居抜きで借りるという低コスト出店を行ってきたが、この手法が今後は取れなくなる可能性があるためだ。2019年1月に新規開設したポルシェセンター郡山は適切な賃貸物件がなく建物を自社で建設した。また、現在仮店舗で営業中のMINI山口もまた、適切な賃貸物件がなく、建物を自社で建設する予定だ。折からの建設費の高騰もあり、従来の居抜き物件の改装で対応するケースと比較すると、資産回転率を悪化させ、ROEにとっては下押し圧力となる可能性がある。

このように同社のROEは今後低下基調をたどる可能性が出てきている点は要注意だ。但しこの点について過度に悲観・懸念する必要はなく、現在の水準から多少低下することはあっても、同社が最低ラインとするROE10%の持続的な確保は十分可能だと弊社では考えている。

同社は決算説明資料においてROE向上のロードマップを公表している。興味深いのは『資本の効率化』で“中長期”という注釈付きながら『配当性向の向上』を掲げている。経験則上、高ROE経営を実践すると自ずと株主重視の経営になると弊社では考えているが、同社もその例に漏れないことを確認できた(ただし配当によって分母の肥大を抑えることの実効性は小さい)。ROEの計算式の分子、すなわち収益(当期純利益)の向上に向けては、既存店舗と新規(自社、M&A)店舗に分けて、それぞれ論理的に収益向上の取り組みを掲げている。強調されているのは“コストダウン”すなわちローコストオペレーションの徹底と、ストック型ビジネスの積み上げによる収益安定性の増大だ。前述のように店舗の土地建物の確保は条件が厳しくなりつつあるが、ここで掲げられている経営方針が徹底されるならば、同社の経営のトラックレコードに照らして、ROE10%という同社の最低目標は十分確保できると弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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