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3538 ウイルプラス

東証S
1,021円
前日比
+11
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PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
5.9 1.00 4.26 36.39
時価総額 105億円
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決算発表予定日

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ウイルプラスH Research Memo(7):顧客に対する面対応や人材の効率配置で、店舗収益の拡大を追求


■中長期の成長戦略と進捗状況

3. ドミナント戦略
ドミナント戦略は特定の地域に店舗を集中的に出店する戦略をいう。しかしながらこれは、1店舗あたりの商圏が大きく、エリアフランチャイズ制がある輸入車ディーラーでは簡単なことではない。

こうしたハードルをクリアするのに貢献しているのが、ウイルプラスホールディングス<3538>のマルチブランド戦略だ。同社の3事業会社・9ブランドを組み合わせることで、ある地域に5店舗~10店舗をドミナント出店することを実現している(ポルシェ2店舗で展開する東北地方とMINI2店舗で展開する中国地方についても将来的にはドミナント戦略での業容拡大が期待されるが、現状はまだアーリーステージであり、当レポートにおけるドミナント戦略の議論では除いて考えている)。

2018年12月末時点では、ポルシェセンター仙台を除く26店舗の内、13店舗を福岡エリアに、13店舗を東京・神奈川エリアに出店している。東京の店舗は世田谷区や大田区の城南地区に集中させており(例外的に新宿、池袋に1店舗ずつ展開)、神奈川県と合わせて地域ドミナントを構築している。

こうしたドミナント戦略の狙いと効果として同社は、グループ内での人材の流動化・最適配置が可能になり、顧客を面でフォローできることを挙げている。面でフォローというのは1人の顧客に対して3つの事業会社の各ブランドの情報を提供し、グループとして当該顧客を囲い込むということだ。この点について弊社では、輸入車オーナーはブランドロイヤリティが高いのでワークしないのではないかと考えていたが、実際にはモデルサイクルの谷間に他のブランドに乗り換えたい、同タイプ(例えばSUV)の車で他ブランドのものを試したい、といったニーズは強く、同社のドミナント戦略は狙い通りの効果を発揮しているとみられる。

弊社では人材の流動化・最適配置という点に注目している。詳細は後述するが、同社は店舗のスクラップ&ビルドを競合他社よりも速いペースで行い、店舗をフレッシュに保つとともに店舗収益の黒字確保に注力している。これが可能である大きな要因がドミナント戦略であるとみている。同社はM&Aに際しても雇用維持を大原則に掲げており、それは既存店舗も同様だ。雇用維持と効率的な店舗展開を両立して利益最大化を図ることがドミナント戦略の最大のメリットだと考えている。

今後注目されるのはポルシェで初進出を果たした東北エリアだ。同社は当初、ポルシェセンター郡山を新規出店することで東北進出とポルシェブランドの取扱開始を狙っていたが、ほぼ同時期にポルシェセンター仙台を譲り受けたことで、ポルシェについては東北エリア全域をカバーすることになった。これ自体は当初の想定以上のポジティブ要因ということが出来よう。しかしながら、東北地方の人口動態やポルシェの価格帯やラインナップなどを考えると、ポルシェの店舗については当面はこれで打ち止めと考えるべきであろう。したがって東北エリアでのドミナント戦略の実現には他のブランドでの多店舗展開が必要になる。マルチブランド戦略やM&A戦略とも絡んで今後の展開が注目される。

これと全く逆の考え方として、東北ではドミナント戦略を行わないという選択肢も可能かもしれない。ポルシェは高価格帯に寄ったラインナップであるため、利益率が他のブランドに比べて高いと推測されるためだ。東北エリア全域を同社の2店舗でカバーする有利性を活かしきれば、福岡エリアや東京・神奈川エリアとは異なる新たな成長モデルを構築できる可能性もあろう。東北という新たなエリアで同社がどういうモデルで営業地盤を確立していくのか注目される。


企業としての高い信頼がM&A候補案件の呼び込みに大きく貢献。可否の判断ではドミナント戦略やマルチブランド戦略とのシナジーの視点を重視
4. M&A戦略
沿革の項で述べたように、同社は業容拡大の過程でM&Aを最大限活用してきた。今後についても、1)新たなエリアへの進出や、2)新たなブランドの獲得(マルチブランド戦略の推進)、3)既存ブランドのシェア拡大、に向けてM&Aを積極的に活用していく方針だ。

M&Aで最も重要なのは案件のソーシング(調達)だ。大別すれば金融機関(証券会社含む)、インポーター、直接紹介(同社自身の接触及び他社オーナーからの接触)の3つの入り口があるが、それが有効に機能しているかが重要だ。後述するように同社は、上場企業であることに加えて、着実な収益成長、被買収会社の従業員の雇用の確保、ガバナンスなど様々な面で、周囲の高い信頼を獲得している。この信頼感が同社へのM&A候補案件の流入増大につながり、常に複数の案件が机上に乗っている状況を生み出している。同社はそれらの中で同社の基準に沿ったものについてデューデリジェンス(精査)を行い、交渉を経て成立という流れで作業を進めている。

成長戦略の全体像の項で述べたように、同社の3つの成長戦略(マルチブランド戦略、ドミナント戦略、M&A戦略)を有機的に結合させて企業業績の成長へとつなげている点が特長的だ。M&A戦略の実行に際しても、投資回収期間などの数値基準もさることながら、同社のマルチブランド戦略やドミナント戦略の観点からの評価を非常に重要視してM&A実行の可否を判断している。単独での収益性が高くても、ブランド戦略的、地理的に“飛び地”のような案件には手を出さないという独自ルールを徹底している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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