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3479 ティーケーピー

東証G
1,606円
前日比
-8
-0.50%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
13.2 1.69 13.63
時価総額 680億円
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TKP Research Memo(8):宿泊研修市場の確立や商業施設への展開を図る


■成長戦略

1. 中期経営計画
ティーケーピー<3479>は、2021年2月期を最終年度とする中期経営計画を推進している。「持たざる経営」、「積極的な出店の継続」、「宿泊を含めた周辺事業の取り込み・内製化」、「M&Aを含む新規事業分野の開発」、「既存スペースの更なる有効活用」、「高付加価値化と効率化」などに取り組む方針である。特に、業績の伸びをけん引するのは開発案件(パイプライン4拠点)が進んでいるホテル事業であり、宿泊研修市場の確立によって成長を加速する戦略を描いている。2021年2月期の目標として、売上高45,858百万円(3年間の平均成長率16.9%)、営業利益6,702百万円(利益率14.6%)を掲げている。

2. 今後の事業戦略
同社の成長モデルは、(1)スペースの確保(拠点数の拡大)、(2)稼働率の向上、(3)利用単価の向上の3つの掛け合わせによって構成されるが、同社はそれぞれについて拡大(向上)を図る方向性を描いている。

(1) スペースの確保(拠点数の拡大)
好調な外部環境のもと、積極的な出店を継続する方針である。出店には仕入れが欠かせないが、国内の不動産市況を見ると、都心地区では築20年以上のオフィスビルの割合が60%超と高く、老朽化によるオフィスの移転により、同社の仕入れ対象が今後も増加する可能性が高い。特に、前述のとおり、都心における新築オフィスビルの供給は今後も高水準で推移する見通しであり、ハイグレードな新築ビルへの出店を検討する一方、それらの大量供給に伴って空きスペースが生じやすい中古ビルとの大口取引を推進する方向性を描いている。また、大塚家具との業務・資本提携を契機として、商業施設への展開にも取り組む方針である。特に、家電量販店や百貨店、大型書店などが入居している商業施設においては、ECの普及に伴う店舗のショールーム化(店舗はモノを買う場所から体験を得る場所へと変化)の影響などにより余剰スペースが発生しやすい状況がみられるため、潜在的な需要は大きい。また、商業施設ではこれまでと違って、「商売する人に貸す」ことが可能となるため、販売会・催事場・ポップアップストアなど、利用用途が広がり事業ドメインの拡大にも結びつくと考えられる。

(2) 稼働率の向上(短期~中期のオフィス利用への用途拡充)
これまでの会議室利用(時間貸し)に加えて、短期~中期のオフィス利用(月貸し等)へと用途拡充を図ることにより稼働率の向上にも取り組む。すなわち、必要な時に必要な広さのオフィススペースを流動的に企業に月貸しするとともに、空いたスペースはこれまで同様、会議室(時間貸し)として利用することにより稼働率を高める戦略と言える。現在の短期~中期のオフィス市場は、リージャスやウィーワークなどが手掛ける高価格帯の領域と、スタートアップ企業向けの低価格帯(コワーキングスペース)の領域の両極に分かれるが、そのどちらにも属さず、かつ需給ギャップの大きい真ん中のボリュームゾーン(すなわち、普通のオフィスビルを必要な時に必要な広さで比較的安く借りたいニーズ)を取り込む戦略であり、特に既に一定規模に達している成長性の高いベンチャー企業を始め、大手企業向けの短・中期的なオフィス需要(サテライトオフィスやプロジェクト単位での利用など)に対して、柔軟性やコストパフォーマンスに優れたオフィススペースを月単位でレンタルすることをイメージしているようだ。同社がこれまで貸会議室用に仕入れてきたスペースは、もともとオフィスとして使われていたところがほとんどであり、オフィス仕様への変更に障害はない。また、同社の稼働率の状況を見ると、新入社員向けの研修など月単位での利用が増える4月から6月は高い水準にあるものの、年間を通じた平均では30%程度の稼働率に過ぎない。つまり、70%程度は空いている状況となっている。したがって、そこを月単位でのオフィス利用で埋めていくことができれば、稼働率を高い水準で安定化させるとともに、収益性をさらに高めることが可能となる。また、通常のオフィスにおける賃貸契約(定借)と比較して、契約期間や契約面積が流動的なオフィスを提供することにより、新しい市場(賃貸オフィスのセカンダリーマーケット)を創出することが可能となるため、既存のオフィス賃貸市場からのシフトを進めることで、景気変動の影響を受けづらい形での規模拡大を目指していく。

(3) 利用単価の向上(宿泊研修市場の確立や大型イベントの開催等)
同社は、貸会議室を起点として、料飲・ケータリング、コールセンター(BPO)、ホテル&リゾート(宿泊研修)、イベント運営・制作などコンテンツの拡充を図ってきた。特に、ホテル事業と一体となって進めてきた宿泊研修市場の確立は今後の成長のカギを握ると考えられる。米国などではリゾート施設などで行う「オフサイト・ミーティング」が定着しているが、日本でも生産性の向上や連帯感の醸成、創造性の発揮などを目的として、拡大の余地があるとみられている。同社においても、会議室利用の法人からの要望に対応する形で、郊外型宿泊研修施設(石のや・レクトーレ)を展開しており、研修による法人利用が増加する傾向にある。同社の場合、年間利用企業約24,000社がターゲットになるとともに、年間延べ利用企業数は約95,000社に及ぶため、10回に1回の泊り込み研修でも展開余地は大きい。また、宿泊研修の1名当たりの売上単価は平均15,000円以上となっており、会議室のみでの利用に比べ、1名当たりの売上単価を大幅にアップすることが可能となる。

また、前述のとおり、商業ビルへの展開による単価向上にも取り組む。特に、商業ビルでは物販を伴うイベントの開催が可能であり、好立地・高グレードの場所を販売会場として提供することにより、顧客の売上拡大への貢献を目指す。

弊社でも、貸会議室・宴会場運営事業が順調に拡大していること、ホテル事業も計画どおり進捗していることから、同社の中期経営計画は十分に達成可能であるとみている。むしろ、1)営業体制の強化やコンテンツの拡充(宿泊研修を含む)により顧客単価の向上余地が十分にあること、2)東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてホテル事業の稼働率や宿泊料金の上昇が期待できること、3)計画に織り込まれていない商業施設への展開を含め、今後も積極的な出店を継続する方針であることから、計画を上振れる可能性が高いと捉えている。また、短期~中期のオフィス利用(月貸し等)への用途拡充による稼働率の向上や、それに伴う収益性の改善にも注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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