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3445 RSテクノ

東証P
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時価総額 822億円
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RSテクノ Research Memo(5):8インチウェーハ生産能力を4倍に増強し、一気に業容を拡大させる戦略


■プライムウェーハ事業の詳細と見通し

3. RS Technologiesグループの事業戦略
RS Technologies<3445>はプライムウェーハ事業への進出に当たり、自前での進出ではなく中国の有力企業と提携する道を選択した。それが合弁企業を通じたGRITEKの連結子会社化だ。GRITEK(2001年設立)は親会社のGRINM(1952年創立)と合わせればシリコンウェーハの一貫製造について長年の蓄積があり、現状では8インチウェーハを公称能力どおりに生産可能な数少ない企業となっている。

こうしたGRITEKの強みを生かして、同社のプライムウェーハ事業は、能力増強からスタートすることになる。ターゲットとする生産品目は中国国内では最大となる8インチサイズだ。同社は8インチウェーハの生産能力を15万枚/月増強し、現状の5万枚/月から、2020年末までに20万枚/月へと引き上げる計画だ。

能力増強投資の実際については、工場移設の主力候補先の1つである河北省唐山市にある土地150,000平方メートル、建物約50,000平方メートルの新工場に、15万枚/月分の製造装置を導入する計画が公表されている。既に建物は建築済みであり、また、引上機などの主要な製造装置の発注も済んでいるもようだ。GRITEKは既存の5万枚/月の生産設備を北京市内に保有しているが、これらも将来的には新工場に移設され、工場設備は1ヶ所に集約される見通しとなっている。

2020年までの15万枚増設にかかる設備投資額は94億円が予定されている。土地・建物は中国政府や地方政府などからの補助を受けられる見通しのため、94億円という金額はほぼすべてが機械装置に投下されることになる。前述のように同社は2018年3月に資金調達を終えており、資金面での準備は万端な状況だ。

同社は中国国内のシリコンウェーハ需要の急拡大に合わせて、2021年以降に第2期の能力増強(15万枚/月)も視野に入れている。これが実現されれば8インチウェーハの月産能力は35万枚/月となり、現状の7倍となる。ただし、この第2期増設プランについては、スケジュールなど、具体的に決定していることはまだない。

同社の半導体関連事業のロードマップを見ると、祖業であるウェーハ再生加工事業をベースに、商社機能として半導体製造装置・消耗材等の取引に事業を展開してきた。今回8インチのプライムウェーハの製造への進出が決定されたが、さらにその先には中国国外への進出や、ウェーハサイズの12インチへのステップアップなども見据えている。


GRITEKの蓄積と、同社の人材登用策で、プライムウェーハ事業の成算は十分に高いとみる
4. プライムウェーハ事業の業績計画
(1) 業績計画
プライムウェーハ事業について同社は、向こう5年間の業績計画を公表している。5年後の2023年12月期においては、プライムウェーハ事業を手掛けるGRITEK及びその親会社のBGRSの業績として、売上高23,390百万円、営業利益5,690百万円を計画している。

この業績計画についてはいくつか注意が必要だ。まず前述した第2期の増設(15万枚/月)が織り込まれているが、これはまだ何も決定されていない。第2期増設自体は実施される可能性は高いが、能力などは変動する可能性がある。もう1つは、価格前提だ。この業績計画は2017年央時点のウェーハ価格で作成されたもようだ。その後、これまでのところ、ウェーハ価格は上昇基調にあるが、ウェーハは市況商品の一面もあり、下落することも十分に起こり得る。上記の業績計画はプライムウェーハ事業が有する収益ポテンシャルをイメージする手がかりの1つとみておくのがより現実的であると弊社では考えている。

2019年12月期において営業減益が想定されているのは、減価償却費と移転費用の2つによるものとみられる。同社は第1期分の能力増強で94億円の設備投資を実施するが、保守的な会計方針のもと、同社は減価償却を2019年12月期からフルに開始する計画だ。設備の搬入及び稼働は段階的に行われる計画で、2019年12月期時点では減価償却費が先行して発生し、利益を圧迫することが想定される。移転費用はGRITEKの北京工場の既存設備を新工場に集約する際に発生する費用だ。

弊社では、再生ウェーハ事業の動向次第では、上記の減益幅はかなり圧縮される可能性があると考えている。再生ウェーハ事業では2019年中に能力が約15%増加する。技術的に熟練した事業であるため順調に立ち上がると期待され、また需給バランスの面から価格面でも横ばいもしくは上昇を期待できることが、そう考える理由だ。設備の導入が上半期であればこのシナリオが実現する可能性は高いと考えている。

(2) プライムウェーハ事業についての考え方と今後の注目ポイント
同社のプライムウェーハ事業への進出について、弊社では成功する可能性は十分にあると評価している。同社はプライムウェーハ事業に進出するに当たり、事業リスクの低減を最優先に進めており、このことが今回の案件の最大の特長だと弊社では考えている。

生産面でのポイントは単結晶の引き上げであるが、取材・調査を進める中で、この点についても弊社の懸念は大きく減少した。ポイントは2つで、1つはGRITEKを子会社化したことだ。GRITEKは8インチを含めて安定的な引き上げを実現しており、単独で進出するケースに比べて事業リスクは大きく低減されたとみている。もう1つは、同社自身がプライムウェーハ事業進出の準備をはるか以前から進めていたことだ。“準備”の中核は人材の確保だ。詳細は明らかにされていないが、日本国内で豊富な経験を積んだ技術者を複数採用し、中国に派遣して中国でのプライムウェーハ事業の検討・準備を進めてきた。これら技術者が中国でのプライムウェーハ事業の成功を確信するに至ったことが、同社が事業進出を決断した直接のトリガーとなったものと弊社では見ている。

販売面での事業リスクについては弊社ではあまり懸念していない。最大の理由は、中国政府の後押しだ。半導体の国産化率引き上げ策の一環で、内資企業にはウェーハ価格の20%~30%相当の補助金が交付される。これは、GRITEK製品の価格競争力がそれだけ高まることを意味する。またGRITEKは現時点でも充実した顧客基盤を有している。現状は約30社を顧客として抱えており、なかでも中国の半導体メーカーとの結びつきは相当に強い模様だ。前述のように、中国でのウェーハ需要拡大見通しとあいまって、生産が順調に進展すれば販売面でのリスクは小さいと考えている。

今後の注目点は、第1期増設分の立ち上げだ。15万枚/月の増設分は早ければ2019年前半から段階的に設備が導入され、テストラン(試験運用)を経て商業生産へと移行していくとみられる。この最初期の設備の稼働が順調に立ち上がれば、その後の導入分の成功可能性は大きく高まると期待される。反対にここでトラブルに直面すると20万枚体制の完成が後ズレする可能性もある。今後の推移を見守りたい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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