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3435 サンコーテクノ

東証S
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サンコーテクノ Research Memo(3):あと施工アンカー市場のトップ企業、新製品・新工法にも注力


■事業部門別業績動向

(1)ファスニング事業

(a)総論
ファスニング事業は、サンコーテクノ<3435>の主力商品である“あと施工アンカー”に代表される建設用ファスナーと言われる製品群を扱う事業だ。あと施工アンカーとはコンクリート構造物に設備を取り付ける際に使用されるものだ。木造構造物では釘やネジを打ち込んで固定するがコンクリートでは釘やネジは使えない。そこで使用されるのがあと施工アンカーということになる。同社はこの市場でトップ企業であり、あと施工アンカー業界シェア約33%、そのうち金属系アンカー市場シェア約46%を有している。

ファスニング事業で取り扱う製品・事業は大きく2つだ。1つはあと施工アンカーなどファスニング製品と、あと施工アンカーを取り付ける際に穴を開けるためのドリルの刃(ドリルビット)の製造・販売だ。もう1つはあと施工アンカーを用いた設置工事及びその工事管理だ。

同社の製品の需要先は、まずマンションや商業ビルなどの建設工事がある。これらの躯体は鉄筋コンクリートや鉄骨で建設されるが、エアコンや照明、屋内外の装飾物など、様々な設備・機器が後から取り付けられる。その際にあと施工アンカーが使用される。ここで重要な点は、一連のビルの建設期間(工期)の中で、あと施工アンカー需要が出てくるのは、終盤になってからということだ。

もう1つは土木工事だ。道路やトンネル、橋脚等の土木工事においても、標識や照明など、様々な設備が設置されるがその際にはあと施工アンカーが使用される。ただし、建設工事に比較すれば設置される設備機器の数は相対的に少ない。土木工事市場を考える上では、土木工事は官庁工事が主体であること、土木工事特有の製品流通ルートや製品認定の仕組みがあること、などの点で建設工事と異なっている点に注意が必要だ。

過去の流れを振り返ると、建設と土木という2つの需要先があるなかで、これまでは建設向けに主として目が向いてきたことは事実だ。建設用と土木用の区別があるわけではないが製品ラインナップとして土木向けが少なかったということだ。しかしながら、日本のインフラは大規模な更新期に突入しており、今後、土木向け需要が増えるのは確実な状況だ。また、ここ数年は太陽光パネルを設置するための架台を地面に据え付ける需要が急速に盛り上がったこともあり、同社も土木工事で使用されるファスニング製品の開発を強化しているという状況だ。

(b)建設市場の現状と取り組み
2020年の東京オリンピックを見据えた建設ラッシュや再開発ラッシュが起こっている状況で、建設用ファスニング製品の市場は追い風が吹いているのは疑いない。そうしたなかで、人手不足で工期が遅れて、同社のファスニング製品に対する需要が先送りとなって、今第2四半期は伸び悩んだというのは、皮肉としか言いようがない。

ポイントは、今第2四半期の遅れはあくまでタイミングの問題であり、構造的なものではないということだ。同社は品質やブランド力の高さもあって他社品よりも高い値付けがされているものも多いが、価格競争となって需要を減らしているという状況は見受けられていないようだ。また、詳細は後述するが製造におけるコストダウン対応も着実に進捗しており、製品力や製品の収益性での不安は小さいと弊社では考えている。

建設市場はさらに細分化すると、新設市場とリニューアル市場がある。2つの市場で使用される製品に差があるわけではないが、需要が出るタイミングが異なる。新設工事では前述のように工期の終盤に需要が出てくるが、リニューアル工事では工事の最初の段階から出てくる。このように考えると、人手不足で影響を受けているのは、リニューアルからの需要ではないかというのが、弊社の見方だ。

潜在的需要は確実に存在しており、その顕在化のタイミングは同社にはコントロールできない部分だ。そんななかで同社が取り組んでいることの1つに、樹脂接着系アンカーボルトの更新工法がある。接着剤を使用したアンカーボルトを更新する際に、従来は別な場所にアンカーを打ち直す必要があったのに対して、この工法は古いアンカーの埋め込み穴を再利用できる。これは、取り付ける設備器具をそのまま再利用できるというメリットがある。この工法はまた、接着系アンカーを(接着剤を使用しない)金属系アンカーに更新するものだが、防火扉のような、熱対策を求められる場所に大きな意味を持つ。接着剤は熱で変質する可能性があるためだ。このように、需要を掘り起こすような新製品・新工法の開発を地道に行っているのが現在の状況だ。

(c)土木市場の現状と取り組み
土木工事向けでは、製品開発を急ぐほか、土木分野での同社及び同社製品のプレゼンスを高めるための施策に取り組んでいる。

製品開発という点では、「ゆるみ止めナット」技術を持つ(株)冨士精密と共同で「メタルセーフアンカー」を開発したり、JR東日本<9020>と共同で「一面耐震補強工法」を開発したりという実績を積み重ねてきた。「メタルセーフアンカー」のラインナップは徐々に充実が図られている状況だ。また、太陽光パネル用架台の設置用に開発した「ディー・アーススクリュー」を改良して「マルチスクリュー」を開発した。これは高速道路などの立入防止柵の設置用などを念頭に、現在、スペックインに取り組んでいる。

自社のアピールという点では土木関連の展示会へのブース出展やPR活動を一段と強化している。2015年は鉄道技術展やハイウェイテクノフェアなどに出展を行った。高速道路工事や鉄道工事は、今や同社にとっての成長源に位置付けられていることが、明白に読み取れる。

ここ数年同社は土木への対応を強化してきたが、需要先を把握しやすい工事については、かつては約30%だった土木工事の比率が、現状では50%にまで高まってきているもようだ。あと施工アンカーなど材販については、発注者・購入者が建築工事と土木工事のどちらの用途に利用するのかを把握できないため、同社自身判断材料がない状況だ。製品ラインナップの現状に鑑みれば需要の中心は建築用と考えられるが、逆に言えば土木用途は成長余地が大きいと言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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