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3392 デリカフHD

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デリカフHD Research Memo(6):カット野菜の需要増で中京FSセンター拡張工事に着手、JAとの協業も順調


■今後の見通し
2. 重点施策の取り組み状況
2019年3月期は重点施策として、「貯蔵機能を持つ新物流拠点の開設」「物流インフラの拡充及び受託サービスの展開」「業務提携による協業」を掲げ、それぞれ取り組みを進めている。進捗状況は以下のとおり。

(1) 貯蔵機能を持つ新物流拠点の開設
ここ数年、天候不順による野菜収穫量の減少、品質の悪化が業績に影響を与えるケースが多くなってきたことを受け、新たに貯蔵機能を持った物流センターを2拠点新設する計画を立て、うち、2018年5月に西日本エリアの原料調達を一元化する「中京FSセンター」(愛知県弥富市)を開設し、同年12月には東日本エリアの原料調達を一元化する「埼玉FSセンター」(埼玉県八潮市)を予定どおりに開設した。

中京FSセンターでは青果物を温度別に貯蔵する大型冷蔵庫を完備する。貯蔵能力は300パレット(約100トン)、年間売上規模で約30億円に達する。レタスを例にすると、10日間程度貯蔵できることになる。天候不順でレタスの収穫量が減少しそうな場合は同貯蔵センターに備蓄し、仮に国内での仕入れが途絶えても貯蔵期間内に海外から調達を進めることで安定供給を実現することが可能となる。実際、2018年夏場の野菜不足の時期においては早速、貯蔵庫が機能したと言う。また、輸入に関しては取扱量が少なかったこともあり従来は商社経由で行っていたが、中京FSセンターの開設により直輸入も開始した。1度の調達量が大きくなるため、物流コストがかさんだり廃棄ロスが出るなどの課題も出てきたが、自社物流による東名阪の幹線便ルートを活用し、各拠点へ効率的に出荷していくことで、スケールメリットを生かしていく考えだ。また、期初計画にはなかったカット野菜工場の拡張工事も開始している。カット野菜の需要拡大が見込めることになったためで、2019年春の完成予定で能力は現在の1.5倍になる見通し。追加投資額は4億円となる。

2018年12月に開設した埼玉FSセンターも大型貯蔵冷蔵庫を完備しており、貯蔵能力は350パレット(約120トン)、年間売上規模で約40億円となる。同センターでは立体自動倉庫による省スペース化を図っているほか、最新のAIシステムやロボットを導入するなど、人材不足を見据え省人化を実現した物流センターとなる。最新の在庫管理システムや高精度なピッキングシステムなどを導入している。また、トマトの自動選別装置やレモンの非破壊検査・選別装置を開発し、導入する予定となっている。レモンは中腐れの状態を非破壊検査によって分析、自動選別するシステムで、光学機器メーカーと共同開発した。中腐れによるクレーム削減率の低下により顧客満足度が向上するだけでなく、廃棄ロス・再配送費用の削減効果が期待できる。

なお、両拠点の開設により、売上能力は年間で70億円程度拡大することになるが、埼玉FSセンターの開設によって、三郷センター、東京平和島センターを閉鎖するため、純増になるわけではない。

その他、カット野菜の需要拡大に対応するため、九州または中国・四国エリアで新工場を建設する計画となっている。候補地もほぼ目途がついたもようで、2020年3月期後半の稼働開始が視野に入っている。設備投資額としては約30億円、年間売上能力としては35億円程度の規模になると見られる。

(2) 物流インフラの拡充及び受託サービスの展開
農産物の物流インフラに関しては、各地のJA(農協)→市場→小売店というBtoCを基本とした物流網となっており、デリカフーズホールディングス<3392>が展開する業務用として活用するには決して効率の良いものとは言えなかった。こうした状況を鑑み、物流網のリスク軽減及び物流コストの効率化を目的として同社は、2014年10月に物流子会社となるエフエスロジスティックスを東京に設立、自社グループ内における物流事業を開始、2018年9月末時点でグループ全体の約15%を自社物流で賄うまでになっている。

同社では2017年4月に名古屋に営業所を開設し、2018年3月期より東京、名古屋、大阪の幹線便についての運行を開始したほか、2018年4月に神奈川営業所、同年10月に大阪営業所を相次いで開設している。各拠点から顧客店舗までの配送を自社物流で賄っていくことで物流コストの削減を目指していく。

また、自社で構築した物流インフラを使って新たなサービスも今後拡充していく予定となっている。2018年3月期より開始している他社商材を顧客店舗まで届ける共同配送サービスに加えて、東京、名古屋、大阪間の幹線便の空きスペースを活用して各拠点に配送するサービス、産地農家からの引き取り物流サービスなどだ。同社にとっては追加のコストは掛からないため、売上げが増加すればそのまま利益に貢献することになる。あくまで補完的なサービスではあるが、収益基盤の強化につながるサービスとして注目される。

(3) 業務提携による協業
同社は青果物の流通インフラ企業として確固たる地位を確立するため、2017年10月に農業総合研究所(以下、農総研)と、2018年3月にはJA全農とそれぞれ業務提携も発表し協業を開始している。

a) 農業総合研究所との提携
農総研は、全国約7,800名の生産者と都市部を中心とした約1,200店舗の小売店を繋ぐプラットフォームを提供し、ここ数年成長を続けている企業で、2018年8月期の流通総額は前期比23.8%増の8,778百万円まで拡大している。顧客対象等が同社と直接競合せず、シナジーが期待できることから業務提携に至った(契約生産者は同社が大規模生産者、農総研が中小規模生産者、販売先は同社が外食・中食向け、農総研は小売店向け)。

提携の主な内容は、農総研の物流インフラとして同社が全国に展開する物流センターを活用し、調達から集荷、各店配送の物流インフラを提供していくというもの。農総研にとっては同社の物流インフラを活用することで、今まで以上に商品の安心・安全が確保できることになる。また、同社が独自に構築してきた「デリカスコア(抗酸化力などの成分分析による野菜の見える化)」を農総研の契約農家に導入し、農総研が消費者向けに提供する情報に活用していくことも予定している。現時点ではこれら取り組みは開始されていないが、農総研の香港子会社向け輸出業務の協業を開始している。農総研では従来、大阪から香港への物流ルートは持っていたが東京からのルートがなかったため、同社が野菜の調達も含めて協業することにした。なお、物流インフラの活用に関しては農総研が日本郵政グループと2018年10月に資本業務提携を締結したこともあり、今後、協業がどの程度進むかどうかは流動的だが、その他の取り組みも含めてシナジー効果は期待できるため、その動向が注目される。

b) JA全農との業務提携
JA全農との業務提携では、主に米作から転作する優良生産者の開拓と育成支援、国内産地におけるGAP※の普及推進による優良生産者の育成、全国に展開するインフラ(物流及び拠点)の相互活用、青果物の価値向上に向けた共同研究及び共同開発、収穫量予測システム及び在庫管理システムの共同開発、協業による販路拡大等に取り組んでいく。

※ GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)とは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組のこと。これを多くの生産者や産地が取り入れることにより、結果として持続可能性の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化に資するとともに、消費者や実需者の信頼の確保が期待される。


協業の第1弾として、2018年10月よりJA茨城で出荷するレタスの引き取り物流を開始した。従来は、市場を経由して仕入れていたが、直接仕入れることで同社にとってはコストダウンにつながる。JA全農の物流ネットワークは生産者から各市場への配送を前提に構築されているため、JAの野菜を仕入れる際は今まで市場を経由する必要があり、コスト高になっていた。今後も他のJAグループにおいて同様の取り組みが進む可能性がある。

また、新たな取り組みとしてAI技術を使った収穫量予測システムの共同開発も、2018年夏からレタスを使って実証実験を開始している。開発した予測システムに畑の面積や場所、レタスの植栽日等を入力し、現地の気温等を順次追加していくことで、2週間前に収穫量が把握できるようになる。外食や中食業界では年間を通じた数量、価格を収穫前に決めることが多く、天候不順で収穫量が予定を下回った場合、同社は市場から高値で仕入れて必要量を顧客に販売するため、収益悪化要因となっていた。同システムが実用化されれば、収穫量の減少予測が出た際に(市場で価格が高騰する前に)、事前に市場で安く仕入れて貯蔵施設に備蓄することが可能となるほか、輸入品を余裕を持って調達できるようになる。結果的に、天候不順による野菜価格の高騰で収益が悪化するリスクを軽減できることになる。同社ではレタスの実験を踏まえて、予測システムを導入する産地や農産品目を拡げていく予定にしており、2021年の実用化を目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SF》

 提供:フィスコ

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