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3392 デリカフHD

東証S
586円
前日比
-1
-0.17%
PTS
588.4円
12:31 04/25
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
12.7 1.14 1.71
時価総額 95.9億円
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決算発表予定日

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デリカフーズ Research Memo(7):自社物流網の構築と貯蔵センターの開設により成長基盤を確立する


■今後の見通しと重点施策

2. 重点施策
(1) 自社物流網の構築
デリカフーズホールディングス<3392>が自社物流網を構築する契機となったのは、一時的に配送業務が混乱したことが端緒となっている。また、農産物の物流インフラに関しては、各地のJA(農協)→市場→小売店というBtoCを基本とした物流網となっており、同社が展開する業務用として活用するには決して効率の良いものとは言えなかった。こうした状況を鑑み、物流網のリスク軽減及び物流コストの効率化を目的として自社物流を立ち上げることを決断、2014年10月に物流子会社のエフエスロジスティックスを設立した。2017年秋時点では東京エリアにおける店舗配送の22%を自社物流で賄うまでになっている。

業界全体ではドライバー不足が慢性化しているが、同社においては順調にドライバーの確保が進んでいるようで、従業員数は40名規模まで拡大している。人材の採用が順調に進んでいる要因は、東証1部上場企業のグループ会社としての安心感があることや、労働条件や賃金体系がしっかりしており、口コミでその評判が広まっていること、また、勤続率を高めるための定期的な表彰制度等、同社独自の創意工夫を凝らしていることも人材の確保が順調に進んでいる要因になっているようだ。ここ最近では物流業界で値上げの動きが進み始めており、自社物流の立ち上げに成功したメリットは大きいと言えそうだ。なお、売上高については年間で12億円規模(100%グループ内売上)まで拡大している。

同社では、この自社物流網を全国の事業拠点に張り巡らせることを計画している。まずは東名阪の幹線便の開通と各エリアでの店舗配送業務の内製化を30%まで引き上げていくことを目標としている。前述したように2017年10月から東京-兵庫間の幹線便を開通しており、週5便体制で配送を行っている。現在の積載率は70%程度だが、今後は週7便体制で積載率100%を目指していく方針だ。また、2018年1月を目途に東京-仙台間についてもスタートする予定となっている。幹線物流網を構築することで、各拠点における在庫コントロールなども今後、効率化が進むものと期待される。一方、店舗配送についても各拠点に営業所を順次開設し、営業認可が下りた段階で開始する計画となっている。現在、神奈川、大阪、奈良で開設手続きを進めており、早ければ2018年3月期中、遅くとも2019年3月期には各エリアで自社物流による店舗配送を開始する。

また、自社の物流事業による収益力向上を図るため、他社商品も同時に積載する混載配送の請負サービスも開始している。顧客は配送先である外食企業のほか、店舗に食材や資材などを納入する卸業者等を対象としている。外食店舗における物流量は週末を100%とすると、月~木曜日は60%程度まで落ちるため、平日はトラックの積載率が低下しコスト高の要因となっている。こうした問題を解消するため、平日は割安な料金で同社の物流サービスを提供する。また、同様に他の食材や資材の卸会社でも物流コストの低減が経営課題となっているところが多く、コストメリットを打ち出すことで受注を獲得していく戦略だ。同社にとっては、自社商品を配送するトラックの空いたスペースを活用するだけであり、コストもほとんど掛からない。サービス料がそのまま利益に繋がるビジネスモデルとなる。既に、外食企業から引き合いがあり、売上高としては月額2百万円程度になっているもようだ。同サービスはあくまで補完サービスの位置付けだが、物流事業の収益力強化につながる取り組みとして注目される。

さらに、将来的には仕入調達ルートについても自社で物流網を構築する構想を描いている。配送便を活用することで、納入便から引取便にフレキシブルに変更できるシステムを構築する。仕入調達ルートまでカバーすることで、生産者の負担軽減や関係強化につなげていく考えだ。

(2) 農業総合研究所との業務提携について
同社は2017年10月に農業総合研究所(以下、農総研)と「青果物の流通インフラ構築」に向けた業務提携を発表した。農総研は、全国約7,000名の生産者と都市部を中心とした約1,000店舗の小売店を繋ぐプラットフォームを提供し、ここ数年成長を続けている企業で、顧客対象等が同社と直接競合せず、シナジーが期待できることから今回の業務提携に至った(契約生産者は同社が大規模生産者、農総研が中小規模生産者、販売先は同社が外食・中食向け、農総研は小売店向け)。

提携の主な内容は、農総研の物流インフラとして同社が全国に展開する物流センターを活用してもらい、調達から集荷、各店配送の物流インフラを同社が提供していくというもの。農総研にとっては同社の物流網を活用することで、今まで以上に商品の安心・安全が確保できることになる。また、同社が独自に構築してきた「デリカスコア(抗酸化力などの成分分析による野菜の見える化)」を農総研の契約農家に導入し、農総研が消費者向けに提供する情報に活用していくことも予定している。まずは、同社の物流拠点の活用から進めていく計画で、早ければ2017年内、遅くとも年明けには開始する。現在、農総研で取り扱う年間70億円規模の農産物を順次、同社の物流センターで取り扱っていくことになる。売上高としてはフィー収入で150万円/月程度からスタートする見込みで、2018年3月期の業績に与える影響は軽微だが、シナジー効果も期待できることから中長期的には収益貢献する取り組みとして注目される。

(3) 貯蔵センターの開設計画
同社の業績は外食業界におけるカット野菜の需要拡大を追い風として、売上高は2011年3月期以降右肩上がりに伸び続けているが、償却前営業利益率に関しては2015年3月期の4.3%をピークに2期連続で低下している。新工場立ち上げ段階での生産効率の一時的な低下も一因だが、天候不順や自然災害による野菜価格の高騰と野菜品質の低下によるカット野菜の生産効率低下も利益率の低下要因となっている。こうした人為的には防ぎようがない収益悪化リスクをどのように軽減していくことができるかが経営課題の1つであったが、同社では貯蔵センターを設けることでこうしたリスクを最小限に食い止める方針だ。

台風等の上陸で野菜の仕入に支障が出る可能性がある場合に、あらかじめ貯蔵センターに必要な野菜を貯蔵しておき、その間に海外調達の準備を進め、国内で野菜の仕入が滞った場合には貯蔵センターからの出荷で対応、その後に輸入品に切り替えていくことになる。

同社の計画によると、2018年5月に名古屋に大規模貯蔵センター(土地約1,000坪)を開設するほか、同年12月には埼玉県八潮市に同規模のセンター(約700坪)を開設する計画となっている。いずれも貯蔵目的のため、売上換算することは難しいが、レタスを例にすると10日間程度を貯蔵できる規模になる。また、両センターともにコンテナトレーラーのドッキングスペースも完備している。現在、商社経由で行っている輸入を将来的には直接取引に切り替えることを検討しているためだ。コンテナは40フィート長(約12m)で1度の調達量は大きくなるが、自社物流による幹線便ルートを構築し、東名阪の各拠点に一斉出荷することが可能となったため、直接輸入に切り替えても問題は無くなった。直接輸入で取引量が拡大すれば仕入価格面でも従来よりも有利となる。以上から、貯蔵センター稼働後は天候不順による収益悪化リスクの軽減と同時に、収益性の向上が期待できることになる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《MH》

 提供:フィスコ

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