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3341 日本調剤

東証P
1,502円
前日比
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PTS
1,504.1円
14:47 04/25
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
10.5 0.76 1.66 21.25
時価総額 466億円
比較される銘柄
クオールHD, 
アインHD, 
綿半HD
決算発表予定日

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クオールHD Research Memo(2):2018年10月からは持株会社体制に移行、経営のスピードアップを目指す


■会社概要

1. 沿革
クオールホールディングス<3034>は1992年、現代表取締役会長の中村勝(なかむらまさる)氏により設立された。1993年(4月)に日本橋兜町に調剤薬局第1号店を開設以来、調剤薬局店舗網の拡大を進めてきた。その傍ら、関連事業・周辺事業への進出も図り、2003年にはフェーズオン(株)を設立して治験関連事業に進出したほか、2008年には労働者派遣・紹介事業を開始した。

その後同社は保険薬局事業とBPO事業の2つの事業セグメントに事業を整理し、経営の効率化と業容の拡大を図ってきたが、さらに、2018年10月1日付で持株会社体制へと移行した。同社はクオールホールディングス株式会社に社名を変更し、コーポレートガバナンスの充実や中長期成長戦略の実現に向けてグループ全体を統率していくことになる。

一方事業面では、保険薬局事業については新たにクオール(株)を設立し、同社から事業を移管した。BPO事業については従来どおりアポプラスステーション(株)が中核の事業会社としてCSO事業や派遣紹介事業等を展開していくことになる。

事業セグメント別の収益の構成比を見ると、2018年3月期通期ベースでは、売上高は保険薬局事業93%、BPO事業7%、営業利益は保険薬局事業87%、BPO事業13%となっている。


マンツーマン薬局と異業種連携による新業態薬局の2つの業態で展開
2. 保険薬局事業
(1) 事業規模と業界内でのポジショニング
保険薬局事業セグメントの事業内容は、調剤薬局の運営と病院内売店の運営の2つだ。このうち、店舗数では調剤薬局が全体の約97%を占め、また売上高でも同様の構成比と推測される。

調剤薬局業界における同社のポジショニングは、店舗数で第2位、売上高で第3位というものだ。2018年9月末時点で同社は調剤薬局696店舗(売店24店舗を含む総店舗数は720店舗)を擁し、上場している調剤専門チェーンの中ではアインホールディングス<9627>に次ぐ位置にある。売上高についてはアインホールディングス、日本調剤<3341>に次いで上場企業の中では業界第3位の位置にある。同社の店舗当たり売上高が業界で平均的水準にあるのに対して日本調剤のそれは業界平均を上回っているため、売上高では同社を逆転している。両社の店舗当たり売上高の差は店舗戦略の違いに根差している。弊社では、店舗戦略について明確な戦略や思想があり、それに沿った適切な運営が行われていることが重要であり、店舗当たり売上高がそのまま企業価値の優劣につながるわけではないと考えている。

(2) 店舗戦略
保険薬局事業における同社の事業戦略上の特徴は、タイプの大きく異なる2つの業態で事業を展開していることだ。1つは『マンツーマン薬局』であり、もう1つはコンビニ大手であるローソン<2651>やJR西日本(西日本旅客鉄道<9021>)のグループ会社との事業連携による新業態薬局の展開だ。

『マンツーマン薬局』というのは同社の通常のクオール店舗を対象とした店舗展開の基本スタンスを表象するコンセプトであり、事業モデルにおける“コアビジネス”でもある。その内容は、処方元医療機関とクオール薬局が1対1(マンツーマン)の関係になれる薬局づくりを目指すことを意味している。マンツーマン薬局では医療と関係のない支出を最小限に抑え、その分を患者のためのサービス向上に投資している。より具体的には、当該店舗がターゲットとする医療機関(多くは個人医院や中小規模の病院)の診療科目や地域性等に応じて店舗設計や機能を変化させた店づくりを追求している。その原資はマンツーマン経営の利点である医薬品在庫の効率化を始めとする店舗の低コスト構造から生み出される。同社はマンツーマン薬局のコンセプトのもと、患者にとって利用価値の高い、患者から選ばれる薬局づくりを店舗戦略の中核に位置付けている。また、マンツーマン薬局のコンセプトは、後述する成長戦略においても重要なポイントとなっている。

異業種との連携による新業態薬局の展開は、2009年6月の薬事法改正により、コンビニやドラッグストア、スーパー等の他業種店舗が登録業者として一般用医薬品(いわゆる大衆薬)を販売可能となったことが背景にある。これを機に他業種から調剤薬局事業に参入する流れを受けて、それを迎え撃つ施策として同社は前述の2社との事業連携やビックカメラ<3048>等の異業種との事業連携等を逐次推進してきている。

事業連携を通じた店舗が“新業態”とされるのは、前出の“マンツーマン薬局”との対比において、ターゲット顧客層が異なることがその理由だ。前述のようにマンツーマン薬局では顧客層がある程度絞り込まれ、医薬品在庫等もそれを念頭において効率化されたものとなっている。一方新業態薬局は、人通りの多い立地で不特定多数の顧客をターゲットとする、いわゆる面対応型薬局となる。これらの店舗では在庫投資等の点ではマンツーマン薬局よりも負担が増えるが、より多くの来店客数(すなわち処方箋応需枚数)を期待できる。マンツーマン薬局をコアモデルと位置付けつつ、新業態によって成長の加速を図るというのが同社の狙いだ。


コントラクトMR派遣のCSO事業を中核にCRO事業等4つの事業を展開
3. BPO事業の概要
BPOとはBusiness Process Outsourcing(業務プロセスの一部を継続的に外部の専門的な企業に委託すること)の略であり、BPO事業セグメントは他社からの業務受託がその基本的な内容となっている。具体的には、CSO事業、派遣紹介事業、CRO事業、出版関連事業の4つの業務を展開している。

(1) CSO事業
CSOとはContract Sales Organization(医薬品販売業務受託機関)の略で、BPO事業セグメントの中では、CSO事業が圧倒的に大きなウエイトを占めており、中核事業という位置付けだ。CSO事業と後述する医療従事者を中心とする派遣・紹介事業とを合わせた売上高は、BPO事業セグメントの約90%を占めるとみられる。したがって、BPO事業を見るうえでは、CSO業界の事業環境及び医療従事者の労働需給動向が重要なポイントと言える。

CSO事業は製薬企業との契約により、マーケティング等の営業支援を行い医薬品の販売活動に関する一連のサービスを提供するもので、人材派遣事業の一種と言うことができる。具体的には、アポプラスステーションがMR(medical representative、医薬情報担当者)を採用し、契約した製薬企業にMRを派遣するというものだ。派遣されたCMR(コントラクトMRの略)は、医療機関・医療関係者に対して、担当する製薬会社の医薬品について営業活動を行うことになる。

(2) 派遣紹介事業
派遣紹介事業では多職種の医療従事者を対象としているが、その中では薬剤師が中心となっており、業種別派遣者数ランキングでは、薬剤師においては業界トップ10に食い込む規模と推定される。

医療業界では恒常的に人手不足感が強く、同社の派遣紹介事業も急成長が続いており、BPO事業の中で、派遣紹介事業は成長事業という位置付けだ。保険薬局事業とのシナジー効果を追求して、今後も高成長を継続することを目指している。

(3) CRO事業
CROはContract Research Organization(医薬品開発業務受託機関)の略だ。CRO事業では医療用医薬品、OTC薬品、食品、ヘルスケアの各領域において、治験・臨床研究に関して企画からパブリケーションまでトータルソリューションを提供している。最も典型的な業務は、製薬企業や食品メーカー等から委託を受けて、臨床試験の一部をサポートするというものだ。

(4) 出版関連事業
出版関連事業はメディカルクオール(株)が行っている。医薬品の販売促進用資料や、医療関係者・患者向けのパンフレット、書籍、雑誌等の受託制作を行っている。同社は、保険薬局事業やCSO・CRO各事業等を通じて、医療機関と患者の双方について深い知見及び商流を有しており、それを生かした事業と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《SF》

 提供:フィスコ

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