貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
株価20分ディレイ → リアルタイムに変更

3341 日本調剤

東証P
1,507円
前日比
-37
-2.40%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
10.5 0.76 1.66 18.53
時価総額 468億円
比較される銘柄
クオールHD, 
アインHD, 
綿半HD
決算発表予定日

銘柄ニュース

戻る
 

クオール Research Memo(2):店舗数で業界2位。マンツーマン薬局と異業種連携による新業態薬局の2業態で展開


■会社概要

1. 沿革
クオール<3034>は1992年、現代表取締役会長兼CEOの中村勝(なかむらまさる)氏により設立された。1993年(4月)に日本橋兜町に調剤薬局第1号店を開設以来、調剤薬局店舗網の拡大を進めてきた。その傍ら、関連事業・周辺事業への進出も図り、2003年には治験関連事業に進出したほか、2008年には労働者派遣・紹介事業を開始した。

現在の同社は、保険薬局事業とBPO受託事業の2つの事業セグメントからなっている。詳細は後述するが、保険薬局事業は同社本体が、BPO受託事業は100%子会社のアポプラスステーションが、それぞれ中核企業となっている。

事業セグメント別の収益の構成比を見ると、2018年3月期実績ベースでは、売上高は保険薬局事業93%、BPO受託事業7%、営業利益は保険薬局事業87%、BPO受託事業13%となっている。

2. 保険薬局事業
(1) 事業規模と業界内でのポジショニング
保険薬局事業セグメントの事業内容は、調剤薬局の運営に加えコンビニ店舗・病院内売店の運営等がある。このうち、店舗数では調剤薬局事業が全体の約97%を占め、また売上高でも同様の構成比と推測されることから、保険薬局事業セグメントの実質は調剤薬局事業と言うことができる。

調剤薬局業界における同社のポジショニングは、店舗数で第2位、売上高で第3位というものだ。2018年3月期末時点で同社は総店舗数718店舗(うち24店舗含む)を擁し、上場している調剤専門チェーンの中ではアインホールディングス<9627>に次ぐ位置にある。売上高についてはアインホールディングス、日本調剤<3341>に次いで上場企業の中では業界第3位の位置にある。日本調剤は店舗当たり売上高が業界トップであるため、売上高では同社を逆転している。店舗当たり売上高の差は店舗戦略の違いに根差している。弊社では、店舗戦略について明確な戦略や思想があり、それに沿った適切な運営が行われていることが重要であり、店舗当たり売上高が店舗の優劣を決定的に決するものではないと考えている。

(2) 店舗戦略
保険薬局事業における同社の事業戦略上の特徴は大きく2つだ。1つは『マンツーマン薬局』であり、もう1つはコンビニ大手であるローソン<2651>やJR西日本<9021>のグループ会社との事業提携による新業態薬局の展開だ。

『マンツーマン薬局』というのは同社の通常のクオール店舗を対象とした店舗展開の基本スタンスを表象するコンセプトであり、事業モデルにおける“コアビジネス”でもある。その内容は、処方元医療機関とクオール薬局が1対1(マンツーマン)の関係になれる薬局づくりを目指すことを意味している。マンツーマン薬局では医療と関係のない支出を最小限に抑え、その分を患者のためのサービス向上に投資している。より具体的には、当該店舗がターゲットとする医療機関(多くは個人医院や中小規模の病院)の診療科目や地域性等に応じて店舗設計や機能を変化させた店づくりを追求している。その原資はマンツーマン経営の利点である医薬品在庫の効率化を初めとする店舗の低コスト構造から生み出される。同社はマンツーマン薬局のコンセプトのもと、患者にとって利用価値の高い、患者から選ばれる薬局づくりを店舗戦略の中核に位置付けている。また、マンツーマン薬局のコンセプトは、後述する成長戦略においても重要なポイントとなっている。

事業連携による新業態薬局の展開は、2009年6月の薬事法改正により、コンビニやドラッグストア、スーパー等の他業種店舗が登録業者として一般用医薬品(いわゆる大衆薬)を販売可能となったことが背景にある。これを機に他業種から調剤薬局事業に参入する流れを受けて、それを迎え撃つ施策として同社は前述の2社との事業提携やビックカメラ<3048>等の異業種との事業連携等を逐次推進してきている。

事業連携を通じた店舗が“新業態”とされるのは、前出の“マンツーマン薬局”との対比において、ターゲット顧客層が異なることがその理由だ。前述のようにマンツーマン薬局では顧客層がある程度絞り込まれ、医薬品在庫等もそれを念頭において効率化されたものとなっている。一方新業態薬局は、人通りの多い立地で不特定多数の顧客をターゲットとする、いわゆる“面対応型”薬局となる。これら店舗では在庫投資等の点ではマンツーマン薬局よりも負担が増えるが、より多くの来店客数(すなわち処方せん応需枚数)を期待できる。マンツーマン薬局をコアモデルと位置付けつつ、新業態によって成長の加速を図るというのが同社の狙いだとみられる。


CSO事業と医療従事者の派遣紹介事業を中心に4つの事業を展開
3. BPO受託事業の概要
BPOとはBusiness Process Outsourcing(業務プロセスの一部を継続的に外部の専門的な企業に委託すること)の略であり、BPO受託事業セグメントは他社からの業務受託がその内容となっている。具体的には、CSO事業、派遣紹介事業、CRO事業、出版関連事業の4つの業務を展開している。

(1) CSO事業
BPO受託事業セグメントの中では、CSO事業が圧倒的に大きなウエイトを占めており、中核事業という位置付けだ。CSO事業と後述する医療従事者を中心とする一般の派遣・紹介事業とを合わせた売上高は、BPO受託事業セグメントの約90%を占めるとみられる。したがって、BPO受託事業を見る上では、CSO業界の事業環境及び医療従事者の労働需給動向が重要なポイントと言える。

CSOとはContract Sales Organization(医薬品販売業務受託機関)の略であり、CSO事業は製薬企業との契約により、営業・マーケティング活動を受託・代行し、医薬品の販売活動に関する一連のサービスを提供するもので、人材派遣事業の一種と言うことができる。

具体的には、アポプラスステーションがMR(Medical Representative、医薬情報担当者)を採用し、契約した製薬企業にMRを派遣するというものだ。派遣されたCMR(コントラクトMRの略)は、医療機関・医療関係者に対して、担当する製薬会社の医薬品について営業を行うことになる。

CMRは業界全体で約4,000人が存在しているが、その中で同社(事業主体はアポプラスステーション)は520人のCMRを擁している(2018年3月期末時点)。CSO業界における同社のポジショニングは、CSO活用企業116社(2017年、日本CSO協会の調査ベース)に占める契約社数シェアで業界No.1の地位にある。他方、売上高では業界第3位グループに位置している。

CSO業界の売上高ランキングで同社に先行するのは、外資系のIQVIAサービシーズジャパン(2018年4月にクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン(株)から改称)とインヴェティヴ・ヘルス・ジャパン合同会社だ。製薬業界における外資系と国内系の規模の差や雇用に対する基本的なスタンスの違いがこうした業界構造につながっていると弊社ではみている。

(2) 派遣紹介事業
派遣紹介事業では多職種の医療従事者を対象としているが、なかでも薬剤師の派遣が多いとみられる。業種別派遣者数ランキングでは、薬剤師においては業界トップ10に食い込む規模と推定される。

医療業界では恒常的に人手不足感が強く、同社の派遣紹介事業も急成長が続いており、BPO受託事業の中で、派遣紹介事業は成長事業という位置付けだ。保険薬局事業とのシナジー効果を追求して、今後も高成長を継続することを目指している。

(3) CRO事業
CROはContract Research Organization(医薬品開発業務受託機関)の略だ。CRO事業では医療用医薬品、OTC薬品、食品、ヘルスケアの各領域において、治験・臨床研究に関して企画からパブリケーションまでトータルソリューションを提供している。最も典型的な業務は、製薬企業から委託を受けて、医薬品開発の際に医療機関において行われる臨床試験をトータルでサポートするというものだ。

(4) 出版関連事業
出版関連事業は子会社のメディカルクオール(株)が行っている事業で、医薬品の販売促進や、医療関係者・患者向けのパンフレット、書籍、雑誌等の受託制作を行っている。同社は、保険薬局事業やCSO・CRO各事業等を通じて、医療機関と患者の双方について深い知見及び商流を有しており、それを生かした事業と言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《MW》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均