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3179 シュッピン

東証P
1,142円
前日比
-20
-1.72%
PTS
1,148.2円
17:52 04/19
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
11.6 3.21 2.89 4.68
時価総額 265億円
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ワットマン
決算発表予定日

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シュッピン Research Memo(4):Web会員数の月間増加ペースが4,000人台へ加速


■業績の動向

3. 主要KPIの状況
シュッピン<3179>は収益拡大に向けて創業以来様々な新機軸の施策を打ち出してきたが、近年取り組んできたのがOne-to-Oneマーケティングだ。これは、一般的には不特定多数の顧客に画一的に行われているマーケティング活動を、“パーソナライズ”すなわち、各個人のニーズに合わせて必要な情報を提供する形にするというもので、有効に機能すれば高い営業効率が期待できる。しかし仕組みづくりには相応の時間を必要とし、同社も2年間をかけて段階を踏んで仕組みづくりに取り組んできた。最終的に、2018年3月期に“パーソナルレコメンド”の仕組みが完成し、One-to-Oneマーケティングの全体が完成した状況にある(One-to-Oneマーケティングを始めとする同社の売上拡大のためのプラットフォームの詳細については、2019年1月17日付レポートを参照)。

こうした同社にあっては、KPI(重要経営評価指標)も少しずつ変わってきている。かつては中古品比率や販売チャネル別(ECか店舗か)の動向などに注目していたが、同社の収益モデルやマーケティング施策が進化した現在、それらはもはや“結果”以上の意味はないと弊社では考えている。現状分析に有効な、あるいは先行性のあるKPIとしては以下の指標に注目している。

2019年3月期はOne-to-Oneマーケティングの完成後の初めての1年であり、運用面では未熟な部分や改善点・反省点もいろいろ出てきた。2020年3月期はそうした経験を踏まえて臨んだが、結論としては、One-to-Oneマーケティングの各種ツールの“使いこなし”にかなり自信を深めたもようだ。

(1) Web会員数
同社は、取引する顧客を「Web会員」として管理している。Web会員数の動向については以下の2つの点が重要と弊社では考えている。1つは新規会員、すなわち新規顧客数の動向だ。セールなどの販売促進策やECシステムの仕組みづくりなどの営業努力の成果がここに表れると考えられる。もう1つは総(累計)会員数だ。これは同社が積み重ねてきたアセットと言える。会員は継続的・反復的に取引するアクティブ会員と、一定期間以上取引実績のない非アクティブ会員とに分けられるが、総会員数の一定割合がアクティブ会員になるという仮説が成立する条件においては、総会員数は大きな意味を持つことになる。

2020年3月期第2四半期末のweb会員数は431,807人となった。2019年3月期末の406,981人から半年間で24,826人増加し、月間当たりでは4,137人の増加となる。これは2019年3月期(3,835人/月)や2018年3月期(3,688人/月)の増加ペースから加速した状況にある。これを生み出した背景には、One-to-Oneマーケティングの各種ツールの本格稼働、ブランディングや知名度向上への取り組みが奏功した結果と考えられる。

今後については、足元の会員数増加のペースが継続すると弊社ではみている。そう考える大きな理由は、会員の若年化と女性客の増加だ。年齢別では、かつては趣味に資金を投じる余裕がある50代、60代の比率が高かったが、近年は20代の構成比が上昇し20%に近づきつつある。そしてその20代の顧客の中では女性の割合が26.7%と4分の1を占めている。女性客の割合は、年代別に見て若年層ほど高いという点も注目されるところだ。この集計はすべての商材を合算しているためその点は注意を要するものの、売上構成比から見てカメラ事業の顧客割合が高いと推定される。

そのカメラ市場においては、かつてはデジタルカメラ(レンズ固定式の、いわゆるコンパクトカメラ)からスマートフォンへとシフトが進んだ。スマートフォンのカメラ機能は年々高機能化しており、カメラ市場を奪い取った形となったが、同時にまた、カメラで撮影することを日常化し、カメラや撮影に対する意識を高める効果ももたらした。さらにはより高画質な写真へのニーズを引き起こした。これが現在ではスマートフォンからカメラへの回帰(ただし、レンズ交換式の高性能カメラへのシフト)につながっている。この大きなムーブメントが同社の会員の年齢構成や女性客会員の大きな要因になっているとみられる。これはある種構造的なもので、まだ当面続く可能性が高いと考えられる。

(2) 購入会員数とアクティブ率
購入会員数は、各四半期に同社の自社サイトで購入した会員のうち新規会員を除いた数、すなわち既存会員の中の現に購入した会員ということだ。アクティブ率は各四半期初めの会員数に対するその四半期の購入会員数の割合だ。

同社は総会員数の増大に伴い、既存会員の活性化により大きな期待をかけている。理由は効率性の高さだ。目下、月間4,000人台のペースで新規会員が増加しているが、総会員数が40万人を大きく超えた今、新規会員の増加率は年間10%前後(すなわち増収率も10%前後)でしかない。他方、既存会員で現にアクティブな会員が年間にもう1回購入を増やした場合には、売上高を30%押し上げるとの試算結果を得ている。購入会員数とアクティブ率を重視する意味はここにある。

2020年3月期第2四半期は、第2四半期単独期間のアクティブ率が4.54%と四半期ベースで過去最高となった。欲しいリスト登録数や入荷お知らせメール登録数などの数値が着実に積み上がっていることと考え合わせると、One-to-Oneマーケティングの効果が出ているという評価が可能だろう。しかし一方で消費増税を前にした駆け込み需要が押し上げている部分もあると推測されるため、第3四半期以降の数字がどういう推移を見せるか、慎重に見守る必要はある。

(3) 中古カメラ買取額
中古カメラの買取額は、同社の中核ビジネスであるカメラ事業の動向を見る上で非常に重要だと考えている。同社のビジネスモデルの特長は、中古品が新品販売のカタリスト(触媒)として働き、新品と中古品の売上を拡大させていく点にあると考えているが、これは純粋な工業製品であるカメラにこそ良く当てはまる。

2020年3月期第2四半期のカメラ買取額は第1四半期(4月-6月)が前年同期比12.7%増、第2四半期(7月-9月)が同12.3%増と、順調に拡大した。同社にとって中古品の仕入れは生命線と言えるほどに重要な部分だが、ワンプライス買取りや先取交換・下取交換などの施策で、順調な買取りが続いている。買取価格の面でも前期とは異なり適正な買取価格での調達が維持できており、それが前述のように粗利益率の拡大へとつながっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)

《ST》

 提供:フィスコ

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