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2788 アップル

東証S
394円
前日比
-2
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PTS
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業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
6.5 0.60 2.54
時価総額 54.6億円
決算発表予定日

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アップル Research Memo(6):CASEがもたらすパラダイムシフトによりビジネスモデル再構築へ(1)


■中長期の成長戦略

少子高齢化と人口減少が進む日本国内は、市場規模の縮小傾向が続くことが予想され、従来型ビジネスの急速な拡張は将来に禍根を残すおそれがある。自動車業界は、次世代車に移行することでCASE(コネクテッド、自動運転、シェア、電動化)がパラダイムシフトを起こす。トヨタ自動車<7203>の豊田章男(とよだあきお)代表取締役社長兼執行役員社長は、2017年11月に「100年に一度の大変革の時代に入った。(略)『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている」と宣言した※。

※2017年11月28日付トヨタ自動車「役員体制の変更、組織改正、および人事異動について」より引用。


アップルインターナショナル<2788>は、5年、10年先の業界の変化を見越して新たなビジネスモデルの構築に着手した。国内の中古車買取販売事業では、シェアリングエコノミーにより自動車の「所有」から「利用」へ移行することを捉えて、カーシェア、カーリース、レンタカー事業に参入した。カーシェアでは、後述するようにEVを取扱うことも検討する。カーリースでは専門店を設置した。レンタカー事業は、沖縄県と大分県で開始した。

1. 中国製EV(電気自動車)の日本独占販売権を獲得
次世代車となるEVでは、2019年3月に中国の電気自動車メーカーであるJIAYUAN EVから日本国内における独占販売権を獲得した。同社の日本の法制度や車両に関する知見などの専門性が評価され、総合商社に競り勝った。

まずは1人乗り電気ミニカー「e-Apple」を販売する。日本の道路交通法上では原付登録となるため、車検・車庫証明、重量税・取得税は一切不要。自動車税や保険料も安く、燃費(電費)も経済的になる。税金と保険を月額換算した金額は3,600円程度で済む。家庭用コンセント(100V)で充電でき、充電時間は6~8時間となる。1回の充電による走行距離は約150キロメートル、山岳路ではその半分程度になる。近場の買い物などの用途が考えられている。価格は70万円台を予定している。中国ではアリババ<BABA>が配達車として使用している。

2019年4月に行われるアップル加盟店オーナー会で紹介し、反響を見た上で各店舗に展示用車を置く予定にしている。新規事業のため、当期の業績予想には組み入れていない。電気ミニカーは、当面、加盟店のみの販売として、店舗への集客効果も期待している。2019年10月に開催される東京モーターショーへの出展が決まっている。

EV新車販売の第2弾は、EVトラックになる。日本の法令では軽トラックに該当する2人乗りのEVトラックは、最大積載量が軽トラックと同じ350キログラムとなる。既にドイツで行った衝突試験の基準をクリアしている。国土交通省の許認可を得て、今年度中の発売を予定している。既にスペインの警察が巡回用として数千台規模で導入している。

(1) EVの動向
a) 市場予測
国際エネルギー機関(IEA)によると、2017年のBEV(蓄電池式電気自動車)とPHV(プラグインハイブリッド車)を合わせた世界の新車販売台数が初めて100万台を突破し、114万8千台と前年比54.3%増加した。うちBEVは75万台、同63.2%増、PHVが39万8千台、同40.1%増であった。IEAは、2030年の販売台数を2017年の18倍(年率24%増)の2,150万台と予想している。各国の政策的な後押しが加速すれば、3,800万台に上振れするシナリオも示した。2030年の自動車販売台数を1億1千万~1億2千万台とすると、中央値シナリオのBEV・PHVのシェアは2割弱となる。累計販売台数では、2017年の370万台から2030年には1億3千万台へ増え、現在の自動車保有台数の約1割に相当することになる。

2017年のBEV・PHVの新車販売台数を国別で見ると、中国が57万9千台と全体の約半分を占めた。2位以下は、米国の19万8千台、ノルウェーの6万2千台、ドイツの5万4千台と続く。2010年までトップを維持していた日本は、5万4千台と5番手となった。

自動車業界の世界トップメーカーである独フォルクスワーゲン(VW)は電動化を加速している。ドイツでは、2018年10月に「2030年以降、ガソリン車及びディーゼル車の登録を認めない」と決議した。フランスと英国は、2040年までに内燃機関(ICE)車の発売を禁止する。VWのEVの販売台数は、2018年の実績がわずか4万台にとどまる。2019年3月に、2028年までのEVの販売台数を従来計画比約5割増の2,200万台に修正した。年間販売台数を数十万台ペースに引き上げ、2025年前後に300万台へと加速する。2030年には世界販売の4割をEVにする目標を掲げている。EVの車種は、2025年に50車種以上、2028年に70車種へ増やす。2023年までの投資計画は、EVなどの次世代車向けを従来計画比3割弱増の190億ユーロ(約2兆4千億円)へ増額した。

b) 中国市場の動向
世界最大の自動車市場となる中国では、2019年1月より新エネルギー車(BEV・PHV)の最低販売義務に関する新規制が施行された。新エネルギー車にかかるクレジットは、2019年に10%、2020年には12%のスコアを取得することが義務付けられる。10%のクレジットとは、新エネルギー車が販売台数全体の10%を占めるということではない。1回の充電による走行距離の長いEVは、パフォーマンスが劣る車よりも多くのクレジットを獲得できる。「伝統的な」自動車(ハイブリッド車(HV)を含む)の生産台数、または輸入台数が年3万台を超えるメーカーが対象となる。この規制は、炭素排出で世界的に導入されている「キャップ・アンド・トレード」方式と似ている。生産の最低要件を満たせない自動車メーカーは、達成した同業他社からクレジットを購入することが可能だ。規制をクリアできないメーカーには、罰金が科せられる。最悪のケースでは、組み立てラインの操業停止を余儀なくされる。中国指導部は、2025年までに新エネルギー車の年間販売台数を全体の約2割の700万台と想定している。

中国政府は、2019年のEVを対象とする販売補助金の総額を前年比約3割減らす。2018年のEV1台当たりの補助金は、走行距離150キロメートルの小型車種が前年比6割減の1万5千元(約24万円)となったが、同400キロメートルの中大型車種は1割増の5万元だった。車種別の金額に、政策が反映された。2010年に始まったEVにかかる補助金制度は、2017年から総額が段階的に減らされ、2020年には撤廃される予定だ。EVと従来車の価格差はいまだ大きく、補助金の減少によりEVメーカーのコスト削減競争が激化することになるだろう。

c) EVによるインパクト
内燃機関(ICE)の従来車1台当たりの部品点数は約10万点、うちエンジン部品が2万点を占める。それに対しEVの部品点数は10分の1の約1万点、モーターの部品点数に限れば50点未満で、関連部品を含めても100点ほどにしかならない。一方、走行用バッテリーが高コストの主因となる。ICE車からEVへの移行は、既存の大手自動車メーカーや一部の自動車部品会社、給油関連設備を不要にする。短期的な生産設備や要員の圧縮は、地域経済に打撃を与え雇用問題を引き起こす。また、EVは定期的なオイル交換などが不要であるため、整備の需要も減少する。このため、従来車にかかる企業は、保有資産の負の資産化を恐れ、EVへの移行を長引かせようとする心理が働く。

日本の自動車メーカーの新車販売網がすでに確立しているため、既存のディーラーをM&Aするしか新規参入や商圏拡大の余地がない。同社は、ICE車からEVへの移行の機を捉えて、輸入EVの販売権、それも日本国内独占販売権を獲得した。世界最大かつ急速に拡大するEV市場を自国に持つ中国メーカーは、俊敏に顧客ニーズに対応している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《ST》

 提供:フィスコ

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