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2733 あらた

東証P
3,105円
前日比
-25
-0.80%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
10.0 0.97 2.98 3.58
時価総額 1,120億円
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決算発表予定日

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あらた Research Memo(7):中期経営計画を上方修正し、2020年3月期に経常利益で105億円を目指す


■今後の見通し

2. 中期経営計画
(1) 中期経営計画の概要
あらた<2733>は2017年5月に3ヶ年の中期経営計画を発表し、2020年3月期までの3年間を「10年後を見据えて、卸売業の新たな可能性を追求」する期間として位置付け、更なる成長戦略を推進していく方針とした。経営数値目標としては、売上高で7,600億円、経常利益で100億円、親会社株主に帰属する当期純利益で60億円、ROEで9%台の水準を掲げていたが、2018年3月期の業績が当初計画を上回ったため、売上高は7,800億円、経常利益は105億円、当期純利益は68億円に今回それぞれ上方修正した。2019年10月に実施される消費増税の影響がどのように出るかは流動的ではあるものの、実施時期が10月と期央であるため、前回のような駆け込み需要発生による業績への影響はないものと考えられる。むしろ、足下の消費動向が引き続き堅調を維持すれば利益ベースでは1年前倒しで達成される可能性もあると弊社では見ている。

(2) 基本戦略
a) 成長戦略
中期経営計画の基本戦略の1つである成長戦略としては、カテゴリーの強化で、なかでも家庭用品の取り組みを強化していくこと、また、成長著しいEC市場(越境EC含む)に向けて取り組み強化を掲げている。

特に注力する家庭用品については、2018年3月期の売上高で約542億円と業界トップの(株)友和(約800億円)に次ぐ2位のポジションで、将来的に業界トップを目指している。売上拡大戦略としては、従来家庭用品の取扱いが少なかったドラッグストアを中心に拡販を進めていく。子会社で店頭管理を行うインストアマーケティングと連携して、2018年3月期から商品提案や売場構築の提案活動に取り組んでいる。2018年3月第4四半期(2018年1月-3月)の増収率で見れば、前年同期比8.7%増と全カテゴリーの中でトップの増収率となるなど、徐々にその効果も出始めており、2019年3月期以降も同レベルの成長で売上げを伸ばしていく計画となっている。家庭用品カテゴリーでは2012年に関西を拠点とする市野(株)(現(株)リビングあらた)を子会社化したが、今後もエリア強化につながる案件があればM&Aにより売上げを拡大していく可能性も考えられる。

その他のカテゴリーでは、Health&Beautyで子会社のファッションあらたと連携を強化し、さらに売上げを伸ばしていくほか、ペット用品についても2019年3月期中に子会社のジャペルへ商流を一本化することを計画している。商流を一本化することで、さらなるシェア拡大や事業効率の向上が期待される。また、新たなカテゴリーへの進出も計画している。

また、年率2ケタ成長が続くEC市場への対応も進めていく。2017年4月に事業開発本部を新設し、その下に開発戦略部(国内EC事業者を担当)と海外事業部(越境EC事業者や一般貿易を担当)を組織化し、営業体制を強化して売上拡大に取り組んでいる。全体に占める売上比率は大きくないものの、直近3年間の平均売上成長率は40%を超えており、今後も2ケタ増収ペースで売上げを拡大していく計画となっている。

b) 経営基盤の強化
経営基盤の強化については、深刻化する人手不足対策の一環として、生産性向上を目的とした組織改革、営業・管理強化、物流効率化に取り組んでいる。

組織改革では2018年3月期に支店制から機能別組織に変更したほか、各拠点に分散している事務センター機能の集約化を進めている。営業・管理強化では管理システムにおけるRPAの導入を進めていく。人事データや商品データの入力・管理作業といった定型業務について、RPAを活用することで大幅な業務効率の向上が見込まれるためだ。同社の試算によれば、人事データの入力・管理作業は手作業だと1ヶ月に全社で約1,400時間かかっていたが、RPAを活用することで速度は約6倍になり時間短縮が見込まれる。2018年7月より業務改革本部と連携し、実際の適用業務を検討した上で、2019年3月期下期からRPAを導入し、稼働する予定となっている。また、営業支援システムを導入し、社内情報の共有やテレビ会議の参加などを、スマートフォンで実現できるようにすることで営業スタッフの生産性向上につなげていく。

物流の効率化では、2018年6月に稼働を開始した九州南センターで、同社として初めてAI機能を搭載したデパレタイズ※ロボットを導入し、物流センター内の省力化、効率化につなげていく。同ロボットは搭載したカメラとAIエンジンによって箱の形状や数量を認識し、荷卸しが必要な箱のみをピッキングするロボットとなる。作業員の荷物を軽減させる効果と24時間稼働させることができることから導入後の運用状況を見て効果が確認できればほかの物流センターにも導入していく計画となっている。

※パレットに積まれた荷物を下ろす作業のこと。逆にパレットに荷物を積む作業をパレタイズと言う。


■CSRの取り組みについて
同社は社会貢献を果しながら持続的な成長を目指していくため、2018年4月にCSR(Corporate Social Responsibility)本部を設置し、取り組むべき重点項目とその目標を策定し、その施策を実行していく方針を明らかにした。

地域環境への取組みとしては、環境省の推進する「3R」活動※に賛同し、「Reduce」につながる商品の販促活動を小売業並びにメーカーと共同で実施している(2018年3月期はメーカー5社、小売業19社、1,100店舗と実施)。2019年3月期以降もさらに協力企業を増やしながら「3R」活動を推進していく予定だ。

※「3R」とは、Reduce、Reuse、Recycleの3つの取組みにより、ゴミの排出を削減し、地球の限りある資源を有効に繰り返し使う社会(=循環型社会)を目指す活動。


また、物流拠点におけるトラック納品時の待機時間削減に向けた取り組みも進めている。物流拠点では納品車輛の長時間待機(ドライバーの長時間労働)が社会的な問題となっており、同課題に対してITを活用した「入荷合理化システム」を導入することで大幅な待機時間短縮を実現した。愛知県の江南センターで実施した実証実験では、事前情報による仕分け作業の効率化、入庫時間予約、電子タグ(RFID)を用いた自動検品などの施策によって、入荷・検品・仕分け・搬送までのトータル時間を従来比270分削減し、大きな成果を挙げている。同成功事例は2018年2月に首相官邸で開かれた「生産性向上国民運動推進協議会」で発表されるなど、政府も関心を示しており、今後、物流現場で導入を進めていく方針となっている。

ステークホルダーに対する取り組みとして、社員に対しては人事制度の再構築に取り組み、職種ごとの報酬体系の見直しや適切な評価に基づく報酬を受けられる制度への見直しを図っていくほか、定年制の見直し(60才から上限を70才まで引き上げ)を検討しており、社員の能力開発促進やモチベーションの向上を図っていく。また、女性活躍の推進については、女性が働きやすい職場環境の整備や女性採用率の向上に取り組んでいくほか、管理職に占める女性割合についても今後5年間で1.5倍を目途に引き上げていく。

コーポレート・ガバナンスへの取り組みとしては、透明性のある企業経営や積極的な情報開示を引き続き行っていくほか、競争・取引に関わる法令を遵守し、公正かつ公平な取引を行うことで正しい企業経営を推進していく。また、コンプライアンス体制や情報セキュリティ体制についても維持向上を図っていく方針となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《NB》

 提供:フィスコ

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