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2715 エレマテック

東証P
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時価総額 762億円
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エレマテック Research Memo(3):成長企業としての特長を依然として保持している(1)


■改めて同社の強みを考える

(1)同社の特長と強み

エレマテック<2715>の特長・強みはいろいろな捉え方があるが、弊社ではa)取引先と商材の多様性、b)成長市場への柔軟な対応力、c)メーカー的機能の3点に整理して理解している。

a)取引先と商材の多様性
同社は仕入先と販売先の双方にそれぞれ約6,000社もの取引先を有している。取引先と商材が多種多様に分散しているため、ある商材について商流を失ってもそれをカバーする商材が出てきて、安定・持続的な成長を実現できるという仕組みだ。後述する“成長市場への柔軟な対応力”という強みも、取引先と商材の多様性があればこそ実現できたものと弊社では考えている。

同社の規模の企業がこれほどまでに取引先及び取扱品目を拡大することができた要因については、弊社では「独立性」、「商材」、「オペレーション」の3要素が重要な役割を果たしていると考えている。

「独立性」は同社の自由度を確保し、取引先の多様性を実現できた大事な要素だと弊社では認識している。2012年に豊田通商グループ入りしてからも取扱商材や取引先数の拡大は続いており、独立系としての良さは損なわれてはいないと弊社ではみている。

「商材」というのは、同社の主力商材が電子材料や電子部品であることだ。この領域は、最終製品に比べて価格が相対的に安定的であるほか、日本企業が国際的に競争優位性を保持し、技術開発や新商品開発が活発だという特徴がある。

「オペレーション」とは商社としての同社の存在価値の生み出し方を表現している。顧客企業における一連の経済活動(開発、加工、品質管理、物流など)には「手間」の部分が存在する。同社の「オペレーション」とは、専門商社ならではの高度な知識と経験とノウハウ(同社が言うところの“現場力”、“海外ネットワーク”、“調達代行サービス”など)を活用して、顧客が抱える様々な問題についてワンストップ・ソリューションを提供することで、利益を獲得していくということだ。

顧客企業では一般に、合理化と効率性を追求して、「手間」を外に出す流れにあり、それが同社にとっての成長機会となっている。同社の強みは、以上の3要素を武器に取引先からの信頼感を獲得して、そうした成長機会を着実に取り込むことができている点にある。同社が目指すのは、顧客にとって必要不可欠の存在になるということだ。現状は、同一顧客における取引企業数と取扱品目数の拡大が象徴するように、同社をもはや手放せないと考える顧客数の拡大ペースが加速している状況だ。

b)成長市場への柔軟な対応力
安定成長を実現してきたもう1つのカギは、その時々の成長市場の変化に柔軟に対応し、成長の波をうまく捕まえてきたことがある。モバイル端末を例にとると、2000年代前半は携帯電話が中心で、同社は携帯電話向けに、ヒンジ(折りたたみ式携帯の蝶つがいの部品)やFPC基板(フレキシブル・プリント配線板)を供給していた。スマートフォンの時代に入ると、スマートフォンの画面である液晶パネル向けの光学フイルムや、スマートフォンの筐体部分のガラス板、タッチパネル用カバーガラスなど、携帯電話時代とは種類の異なる素材・部品を提供している。このように、その時々のニーズに応じて様々な素材・部品を供給できるところが同社の強みだ。

重要なポイントは商材の切り替えをスムーズに行ってシームレスな成長へとつなげることだ。同社にそれが可能だったのは、前述の取引先と商材の多様性という特長があったためと弊社では考えている。営業担当者が日々の取引先とのコミュニケーションの中で、常に次の商材を探し求めるという企業カルチャーとも相まって、成長市場を逃さず次のビジネスへつなげる好循環が実現できていると弊社ではみている。

c)メーカー的機能
企画開発と加工サービスも同社の重要な特長だ。同社は商社であり、自社ブランドを保有しない為顧客であるメーカー企業と競合しないという姿勢は一貫している。しかし一方で、同社は自社の加工拠点を擁して顧客に加工サービスを提供している。

同社の仕入先の電子材料メーカーには中小企業も多く、モジュール化に対応できないケースも多い。他方、同社の販売先は、それが大手であればあるほど、アッセンブラー(組立業者)としての色合いが強まる傾向がある。そうしたアッセンブラーは、工数削減のために、個々の部品ではなく、加工が進んだモジュール部品を嗜好する。仕入先の事情と販売先の間に立って同社が提供するソリューションが、加工サービスだ。

モジュール化は同社にとってはうまみが大きいと言える。取引金額が大きくなるだけでなく、モジュール化による付加価値を自社の利益として取り込める。また、モジュール部品取引は、顧客囲い込みの点でも有利と言える。モジュール化による納品はどの商社も目指すところだが、それを実行できている企業は決して多くはない。部品の選定・調達能力及び加工能力に加えて、モジュール部品ついての製品保証能力も必要となるからだ。企業の総合力が問われることになる。同社にはそれがある。

(2) 2017年3月期第2四半期決算のインプリケーション:成長企業としての特長を保持

前述のように、2017年3月期第2四半期決算は前年同期比で大幅な減収減益となった。これは2016年3月期第4四半期に起こったスマートフォンの急激な生産調整が直接の原因だ。このことをもって、同社に対する“スマートフォンに依存した企業”という評価や、(業績の出方が)“成長企業ではなくシクリカル(循環型)企業”といった評価は正しくないと弊社では考えている。弊社では主として以下の3つの理由から、同社は成長企業としての特長を依然として保持していると考えている。株式運用におけるポートフォリオの考え方と重ね合わせると理解しやすいかもしれない。

a)取扱商材の幅広いカバー範囲
同社の安定成長性が依然として保たれていると弊社が考えるもう1つの理由は、同社の主要取扱品目のカバー範囲の広さだ。創業事業の電気絶縁材料から発展した電気材料分野を始め、電子部品分野、機構部品分野などへと拡大している。その先の最終製品ベースではスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末からパソコン、白物家電、自動車、産業用機器などあらゆる分野に関わっている。1つ1つの需要先にはそれぞれの好不調の波があるが、すべての商材が同じ方向を向くことはない。また、同じ需要分野でも、素材や用途の違いで、マクロ的にはマイナス局面でも個別商材では成長するものもある。例えば、ガラスからプラスチックへの素材変更のケースなどが例として考えられるだろう。

b)次の成長市場への備えができている
a)の幅広い商品構成も、その1つ1つが成長ポテンシャルを有していなければ意味はない。どんな商材にもライフサイクルが存在するので、今日の成長商品も明日には衰退商品に変わる可能性がある。それゆえ、常に“次の成長商品”を探すということが重要になる。同社の特長と強みの項で述べたように、同社には、数多くの取引先との日々のコミュニケーションを通じて、次の商材を探し出すという企業カルチャーが営業担当者に根付いている。それがあるからこそ、現在の幅広い商材のカバレッジに至っているとも言える。詳細は後述するが、表示デバイスや自動車向け車載用電子部品といった漠然とした商品群の中で、伸びる市場を見分け、それらに対する商流を確立するという基本作業は着実に進捗している状況だ。

c)“スマートフォンに強い”企業ではなく、“表示デバイスに強い”企業
スマートフォン市場は依然として巨大な市場であるのは疑いないが、スマートフォン市場が成長市場かという点には疑問を持つ向きもあるだろう。しかしながら、同社はそもそも、スマートフォンに依存した企業ではないと弊社では考えている。同社の業績がスマートフォンの生産調整の影響を受けたのは事実だが、同社がスマートフォンメーカーに直接納入しているケースは少ない。同社は、表示デバイス市場で過去から今まで強みを発揮してきており、現在の主力表示デバイスである液晶パネルにおいても強い企業である。そしてその液晶パネルの用途で現在大きな割合を占めているのがスマートフォンである。すなわち、同社がスマートフォン市場に依存しているように見えるのは結果論だということだ。

前述のように、同社は成長市場の変化の波を捉えることで安定成長を果たしてきたが、今回のスマートフォン向け需要急減を別の成長市場に乗ることでかわせなかったのは、液晶パネルメーカー側がスマートフォンに代わる用途を育成できていなかったためというのが弊社の理解だ。同社はあくまで液晶パネルの部材供給者であり、自らが液晶パネルの用途拡大に向けて市場を開拓する立場にはない。同社ができるのは、スマートフォン以外の用途の液晶パネルに対しても部材供給の商流を確保することだ。この点については怠りない。

詳細は後述するが、現在の主力表示デバイスである液晶パネル、スマートフォンやPCモニターから車載や広告(デジタルサイネージ)、VR/ARなどへと市場が広がっている。同社は現にそうした市場向け液晶パネルに対しても商流を有しており、表示デバイス市場自体の成長からの恩恵を着実に享受できる立ち位置を確保している。

以上、a)、b)、c)を主な理由として、弊社では同社が依然として成長企業としての特長を保持していると考えている。弊社のこうした考えが正しいとするならば、同社に対する投資を考える上では、株価下落局面での“押し目買い”や“逆張り”といったアプローチは有効な投資手法となる可能性がある。この点もまた、2017年3月期第2四半期決算からのインプリケーションではないかと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《TN》

 提供:フィスコ

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