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2479 ジェイテック

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ジェイテック Research Memo(5):社内技術者が開発する自社製品の第1弾がリリース


■安定成長のための施策

藤本社長が掲げた中期経営計画は、中長期的に安定成長を目指すという基本方針に基づいて策定されている。しかし、前期の単価引き上げ交渉に次いで、今期は人材不足という逆風に脅かされている。ただ、藤本社長は、40年以上に及ぶ業界での経験から、逆風を乗り切るノウハウも持ち合せている。そして、現在、様々な対策を打ち出し、安定成長を継続するための事業再構築を行っており、新規事業要員として技術者を配置し、事業体制の整備も進めている。次に具体的な施策の内容を解説する。

(1)新規事業への進出

今回のように景気の回復に伴う人材確保難という経営環境の一時的な変化で既存事業に逆風が吹いた場合、要因が解消できるまで収益を支える他の事業が必要になる。そこでジェイテック<2479>が乗り出したのが新規事業である。具体的には、社内の技術者が自社製品を開発する。その第1弾が、3月にリリースされた「グルくる」である。

「グルくる」は、飲食店の注文支援システムとして開発された。来店客が自分のスマートフォンを店内のQRコードにかざす、またはNFCタグにタッチすると、店のメニューが表示される。来店客はメニューを確認できるだけなく、そこから注文も出せる。

現在、このようなセルフ注文システムは店内のテーブルごとに置かれたタブレットで行うのが一般的である。注文を聞く人員が減らせるうえに注文間違いもなくなるというメリットがあるものの、タブレットをはじめとした初期投資に数百万円の費用がかかるのが大きなネックになっている。しかし、「グルくる」は、来店客のスマートフォンがタブレット代わりになる他、店側はパソコンやスマートフォンなどの端末及びインターネット接続を用意するだけで、システムの使用環境を整えることができる。スマートフォン表示用のメニューの入力も店側で行えば、初期投資の費用を大幅に抑えることができる。

しかも、「グルくる」はオプションで世界の主要13言語での対応が可能となっている。藤本社長は海外でのビジネスや滞在経験が長く、ネイティブ翻訳の人材ネットワークをすでに持っており、高品質な多言語対応機能という特徴が、リリースとともに市場に大反響を呼ぶ。

インバウンドによる経済効果が急拡大しているのに加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催で、訪日外国人に対するコミュニケーション問題への対応策に旅行客相手の店舗・企業が頭を悩ませている。設備投資がほとんど必要なく、多言語対応が可能な「グルくる」こそ、この問題を解決できる手段として市場は歓迎したのである。実際、2015年秋時点において、飲食店だけでなく、観光地のお土産屋の商品説明や神社・仏閣といった観光地のガイド用にも強い引き合いが来るようになっている。

さらに、観光振興を目指す商店会などの団体が観光地の周辺地域全体に「グルくる」を導入する検討も始めている。この動きの第1弾として、神奈川県鎌倉市で9月から同市内の観光の中心である小町通り商店街とその周辺の店舗での試験導入がスタートした。「グルくる」の試験導入が成果を収めたことが確認できれば、一気に本格導入が拡大する可能性が膨らむ。今後、同社は試験導入結果のフィードバックを活かし、さらにサービス機能の向上を進めるとともに、京都や奈良といった外国人観光客の多い他の自治体や観光施設にも売り込みを図る計画となっている。

新規事業は始まったばかりであり、「グルくる」は発売直後に一部のスマートフォンやタブレットにフリーズが発生する現象を修正し、より画面を見やすいように改良を加えた「バージョン2」を夏にリリースしたばかりであるため、2016年3月期第2四半期においては、まだ収益貢献までには至っていない。しかし、上述したように、例えば地域活性化を目指す全国各商業団体や自治体との協働の推進により、「グルくる」の本格導入が広がれば、早期に大きなビジネスとなる可能性を秘めている。

(2)ビジネス領域の拡大と人材層の拡充

新規事業と並び、ビジネス領域と人材層の拡大にも乗り出した。6月に人材派遣やアウトソーシング、Webマーケティングなど企業向けの様々な支援サービスを展開している(株)ベンチャー総研と、ベンチャー総研全額出資の広告制作・人材派遣会社であるベンチャービジネスサポート(株)から住宅販売・運送業などの販売支援のための人材派遣、ポスティング事業といった一般派遣事業の一部を6,220万円で買収した。さらに、買収した事業を行う受け皿として同社が資本金4,000万円を全額出資して大阪市北区にベンチャービジネスサポート(株)を設立し、7月1日から事業をスタートさせた。

買収の目的は、第1に、一般派遣事業の拡大である。同社は、既に説明したとおり既存の子会社で一時派遣である一般派遣事業を行っている。買収によって取得した住宅販売や運送業の販売支援といった新規ルートへの一時派遣を拡大することによって、安定した収益確保を目指す。また、ポスティングに関しては、安倍政権が掲げる「女性の活躍推進」に向けて新たに主婦層などを派遣の対象と考えており、派遣人材のすそ野の拡充を図る意図がある。

第2に、エンジニア派遣の拡大という目的もある。子会社では建築関連のエンジニアの派遣を既に手掛けている。住宅販売の派遣ルートを通じてこれらエンジニアのフィールドサービスの請負にビジネスのすそ野を広げる。具体的には、家屋やオフィスビルの保守などを請負う。引越しの際の電話やインターネット回線の設置、エレベーターの保守などを行う考えである。

エンジニア派遣の拡大に関しては、採用難への対応策という意味もある。今まではエンジニアの新規雇用をしていなかったが、子会社を通じてエンジニアの採用にも乗り出す。

エンジニア派遣には、さらに大きな目的がある。高齢の社員対策である。技術者派遣業界の共通の課題として、高齢となった技術者の処遇がある。フィールドサービスや建築関連の仕事を任せることで、終身雇用を実現する。社員の面倒を定年まで見るというのは、藤本社長の信念でもあり、この対応策は高く評価できよう。

第3に、住宅関連では、12月にも建築業者としての許可申請する予定となっている。同社には、機械設計に携わっているテクノロジストの10%程度が、実は建築分野を専門としており、一級建築士や施工管理技術者の資格保有者も10人程度いるという。これらの人材をより有効に活用する。

以上の3つの目的を統括すると、一時派遣による一般派遣、エンジニア、テクノロジストといった人材を「3層構造」にして、幅広い請負・派遣に対応できる体制を整え、収益の安定化につなげるという戦略になる。

(3)テクノロジストの確保

足元における最大の課題であるテクノロジストの確保にも対応策を打ち出している。まず、大学の新卒採用に関して、今までは長年にわたり採用してきた数十校のみに求人票を出すだけだったが、今秋から全国の約780校の大学のうち、工学系の学部のある大学すべてに求人票を送り始めた。来年春の新卒採用には間に合わないが、2年後の春の新卒採用への対応策として早めに手を打ったという。

優秀な学生確保のために、春の新卒の中から希望者を卒業から半年間、社費でオーストラリアに語学留学させ、10月に入社させる制度も継続する。技術者としてどのような企業でも通用することを目的とした教育もさらに強化していく。

また、入社後の適性や本人の希望を見たうえで、グループ内で転籍もできる制度を設ける。グループ全体で協力し、人材育成を図る。そのため、10月1日付で既存の子会社2社の社名を変更した。建設技術者のテクノロジストの派遣を手掛ける(株)エル・ジェイ・エンジニアリングを(株)ジェイテックアーキテクト、一般派遣及びエンジニア派遣事業を行っている全額出資子会社の(株)ジオトレーディングを(株)ジェイテックアドバンストテクノロジとした。「ジェイテック」の名を冠することでグループの一体運営がしやすくなった。社名変更は、子会社がより優秀な人材を採用しやすくなる効果も期待できる。さらに、人材交流の活発化を通じて、ビジネスでも協力関係を構築することを目指していく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)

《HN》

 提供:フィスコ

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