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2437 シンワワイズ

東証S
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シンワアート Research Memo(4):上期決算は計画を下回るが、太陽光発電施設販売は想定を上回るペースで拡大


■業績動向

1. 過去の業績推移
シンワアートオークション<2437>の上場後の業績推移を振り返ると、2006年5月期をピークとして2014年5月までは伸び悩みを続けてきた。特に2009年5月期はリーマンショックに伴う景気後退の影響を受けたことから取扱高及び売上高ともに大きく落ち込み、2期連続の営業赤字につながった。2011年5月期に黒字に転じたものの、その後も長引くデフレ経済の影響で、主力の近代美術オークションにおける平均落札単価が低迷し続けたことから、業績は停滞感の中で推移してきた。

ただ、2014年5月期にデフレ脱却に向けた政策の影響などで近代美術オークション市場が緩やかながら回復基調に入ると、同社のオークション事業の業績にもやや回復の兆しが見られ始めた。また、2014年5月期からは、新たな収益の柱として参入したエネルギー関連事業が連結化されると、2015年5期には本格稼働により業績拡大に大きく貢献した。同社の中期的な成長をけん引する勢いで進展しており、その他の新規事業の立ち上げなども含めて、同社の業績は新たな成長フェーズに入ったと言える。

財務面では、2013年5月期まではほぼ無借金経営を続けており、自己資本比率もおおむね70~80%の高い水準を維持してきた。エネルギー関連事業及び医療機関向け支援事業を連結化した2014年5月期以降は、太陽光発電施設の販売拡大に伴う運転資金や自社保有分を有利子負債で賄っていることから自己資本比率は大きく低下してきたが、財務基盤の安定性に懸念を生じさせる水準ではない。むしろ、これまでの手堅い財務方針が、成長に向けた攻めの姿勢に転じたことを反映したものとして捉えることができる。

一方、資本効率性を示すROEは業績の変動とともに不安定な動きをしてきた。ただ、2015年5月期には一過性費用(商品在庫の評価減など)の影響等により1.0%に落ち込んだものの、業績の伸びとともに改善傾向にあり、2016年5月期は9.7%に回復している。同社はROE15%以上を目標に掲げており、今後も適度なレバレッジ(有利子負債の活用)や収益力の向上によりROEの改善を図る方針である。

2. 2017年5月期上期決算の概要
2017年5月期上期の業績は、売上高が前年同期比3.9%増の1,794百万円、営業損失が0.9百万円(前年同期は169百万円の営業利益)、経常損失が36百万円(同160百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する純損失が37百万円(同96百万円の純利益)と増収ながら減益となり、経常損失(純損失)に落ち込んだ。期初予想に対しても、売上高、各利益ともに下回っている。

前期における特殊要因※のはく落は想定内であるが、オークション関連事業の低迷が業績の足を引っ張った。また、エネルギー関連事業も太陽光発電施設の販売が好調に推移しているものの、業績への寄与が下期にずれ込んだことで上期計画を下回る要因となった。

※自社保有の穂北太陽光発電施設(宮崎県西都市/993kW)の売却

また、利益面でも、前期における特殊要因のはく落による影響に加えて、オークション関連事業の低迷やエネルギー関連事業の下期偏重により売上高が計画を下回ったことで営業減益となった。さらには、太陽光発電施設の販売拡大に伴う運転資金調達(コミット型シンジケートローン)にかかる支払手数料及び支払金利の増加により経常損失(純損失)に落ち込んだ。

財政状態については、オークション関連事業における戦略在庫(商品勘定)の積み増しやエネルギー関連事業における開発案件(前渡金勘定)の拡大により流動資産が増加するとともに、自社保有目的の大型太陽光発電施設(2MW)の取得により固定資産も増加したことから、総資産は前期末比41.4%増の5,599百万円に大きく拡大した。それに伴い、有利子負債も長短合わせて前期末比126.3%増の3,103百万円に増加したことから、自己資本比率は32.1%(前期末は44.6%)に低下した。ただ、流動比率は157.1%の高い水準を維持しており、財務の安全性に懸念はない。

各事業の概要は以下のとおりである。

(1) オークション関連事業
オークション関連事業は、取扱高(落札総額)が前年同期比39.0%減の1,324百万円、売上高が同27.9%減の391百万円、セグメント損失が101百万円(前年同期は43百万円の利益)と減収減益となり、期初予想を大きく下回った。オークション開催回数が13回(前年同期は16回)に減少したことがマイナス要因となったが、平均落札単価でも低迷しており、総じて低調に推移したと言える。特に主力の近代美術オークションについては、デフレ脱却に向けた政策の遅れなどを背景として全般的に美術品の流通が停滞気味に推移しており、緩やかな回復基調にブレーキがかかる格好となっている。一方、プライベートセール(相対取引)については、積極的な取り扱いに努めた結果、小規模ながら伸長した。また、同社がプラットフォーム構想の中で戦略的に取り組んでいる商品在庫(期末残高)についても着実に積み増している(商品勘定全体で前期末比32.2%増)。

(2) エネルギー関連事業
エネルギー関連事業は、売上高が前年同期比18.3%増の1,398百万円、セグメント利益が同21.3%減の101百万円と増収ながら減益となり、期初予想を下回る進捗となった。前期における特殊要因のはく落は想定内。優遇税制措置による需要拡大を追い風として、太陽光発電施設の販売が61基(前年同期は35基)と大きく拡大したことが増収に寄与した。ただ、計画を下回ったのは、業績への寄与が想定よりも下期にずれ込んだほか、販売単価が想定を下回ったことが要因である。また、利益面でも売上高が計画を下回ったことにより、特殊要因のはく落によるマイナス分をカバーできなかったことで減益となった。

一方、売電収入については、兵庫県西脇市の太陽光発電所(800kW級)を中心として約20百万円を計上した。また、2016年11月からは埼玉県秩父市の太陽光発電所(2MW級)が稼働を開始している。秩父市の太陽光発電所の取得により、2016年11月末の有形固定資産は1,121百万円(前期末比832百万円増)に拡大した(減価償却期間は17年間を予定)。

(3) その他
その他は、売上高が4百万円(前年同期は0.6百万円)、セグメント損失が0.5百万円(同2百万円の損失)と小規模ながら伸長した。医療機関向け支援事業においては、医療ツーリズムを収益の柱とするべく、香港において、中国・アジアからのインバウンド旅行者向けに、銀聯カード決済機能付きプラットフォームの稼働を開始するとともに、日本国内の提携病院及びクリニックの同プラットフォームへの加盟促進に取り組んだ。また、新たなサプリメント「プラズマローゲン・プレミアム」を、オリジナルブランド「A|A|A|A」(Asian Anti-Aging Alliance)の製品として販売を開始している。ただ、まだ事業モデルの完成度を高める段階にあり、本格的な業績貢献には至っていない。

一方、2016年4月から開始した保険代理店事業(地震保険キャプティブ設立コンサルティング)についても大きな進展はなかった。太陽光発電施設の販売が好調に推移する中で、資源配分(特に人材の割り当て)の制約等により手が回っていないのが実態のようだ。

以上から、上期決算のポイントをまとめると、外部環境の影響等によりオークション事業の回復に遅れが生じたことは懸念材料となったものの、エネルギー関連事業では太陽光発電施設の販売案件(受注残)が2017年3月の系統連系※に向けて順調に積み上がっており、明暗が分かれる結果になった。決算数値で見ると全体的に後退した印象を受けるが、特殊要因のはく落や販売時期のずれ込み等を勘案すると、実態としてはマイナスとプラスが打ち消し合う形でおおむね計画どおりの進捗と言える。

※電力会社の系統(電力網)に接続すること。設備認定を取得済みであるが運転開始に至っていない太陽光発電事業においては、2017年4月1日までに電力会社と接続契約を締結していない場合、設備認定が失効することとなり、3月の系統連系に向けて案件の集中が予想されている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《SF》

 提供:フィスコ

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