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2427 アウトソーシング

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アウトソシング Research Memo(4):2017年12月期業績は計画を上回る大幅な増収増益を実現


■決算概要

1. 2017年12月期決算の概要
2017年12月期の業績(IFRS)は、売上収益が前期比71.4%増の230,172百万円、営業利益が同104.2%増の11,360百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同103.4%増の6,180百万円と期初予想を上回る大幅な増収増益となり、売上収益、利益ともに過去最高を更新した。また、EBITDAも138億円(前期は72億円)に拡大し、中期経営計画(2017年12月期の目標)を大きく上回る進捗となった。

売上収益はすべての事業が順調に拡大した。好調な外部環境や独自戦略の進展によるオーガニックな成長に加えて、前期及び当期に実施したM&A(買収後の業績向上分を含む)が大幅な増収要因となった。特に、海外事業が大きく拡大したのは、前期にM&Aした豪州、英国、マレーシアの各企業が期初から寄与したことや、当期にM&Aしたドイツの企業が新たに上乗せされたことによる。一方、国内においても、「国内技術系アウトソーシング事業」が独自の人材教育カリキュラムの活用等により伸長したほか、「国内製造系アウトソーシング事業」も労働者派遣法の改正に伴いPEOスキームが順調に伸びた。「国内サービス系アウトソーシング事業」も、当期にM&Aしたアメリカンエンジニアコーポレイション(以下、AEC)とのシナジー創出により、国内米軍施設向けの事業が順調に拡大している。

利益面でも、グループガバナンス体制の強化のための費用増のほか、一部の事業において需要拡大に向けた先行投資を行ったものの、増収により大幅な増益を実現した。営業利益率も4.9%(前期は4.1%)に改善している。

財政状態は、資産合計が、M&Aによる影響を含め、「現金及び現金同等物」や「のれん」等の増加により前期末比38.0%増の124,645百万円に拡大した一方、「親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)」も内部留保の積み上げのほか、新株予約権の行使に伴う資本増強により同224.2%増の24,958百万円に大きく拡大したことから、「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」は20.0%(前期末は8.5%)に改善している。なお、のれん計上額は前期末比49.1%増の39,239百万円に増加した。

キャッシュ・フローの状況については、「営業キャッシュ・フロー」が「税引前利益」の増加等により大きくプラスとなった一方、「投資キャッシュ・フロー」は引き続きM&Aの影響によりマイナスの状態(マイナス幅は縮小)が続いている。また、「財務キャッシュ・フロー」は新株予約権の行使(約105億円の資金調達)によりプラスとなったことから、それらの結果として、「現金及び現金同等物」の期末残高は大きく増加した。

主な事業別の業績は以下のとおりである。

「国内技術系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比27.6%増の51,264百万円、営業利益が同12.0%増の3,290百万円と計画を上回る増収増益となった。ハイエンド技術者の採用難が深刻化している業界の中において、KENスクールを活用した未経験者を教育して配属する独自スキーム等により採用人数を伸ばすことができた。2017年12月末の外勤社員数は8,716名(前期末比2,650名増、計画比150名増)と大きく増えたが、そのうちKENスクールによる教育後配置人数が1,356名(計画は1,300名)、2017年4月入社の新卒採用が550名であったほか、労働者派遣法の改正に伴う業界淘汰の取り組みでも452名(計画は315名)とすべての手立てが計画を上回る水準で着地した。一方、利益の伸びが比較的緩やかなのは、新卒採用者を増やしたこと※やKENスクールの増設など先行費用によるものである。

※ 2017年4月入社の新卒採用者(550名)の教育研修コスト(配属される6月まではコストセンターとなる)のほか、2018年4月入社の新卒採用者(約1,000名)の採用コストによるもの。


「国内製造系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比33.6%増の46,231百万円、営業利益が同35.7%増の1,803百万円と増収増益となった。労働者派遣法の改正に伴う期間社員から派遣活用への転換ニーズが顕在化するなかでPEOスキームが大きく伸長した。2017年12月末の外勤社員数は11,094名(前期末比2,061名増)と増えたが、そのうちPEOスキーム在籍は10,021名(計画は10,000名)となっており事業セグメントの90%を占めるまでになった。また、利益面でも増収効果や契約単価の向上により、売上総利益率は業界トップ水準となっており、狙いどおりの結果がついてきている。

「国内サービス系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比277.1%増の13,086百万円、営業利益が776百万円(前期は258百万円の損失)と大幅な増収増益となり、先行費用等の影響により営業損失となった前期からの黒字転換を図った。特に、2017年4月よりAECがグループ入りしたことから、景気の影響を受けにくい米軍施設向けのアウトソーシング事業が大きく拡大した。AECのノウハウ(軍用設備等の保全・改修業務)とアウトソーシング<2427>の信用力を生かしたシナジー効果(米軍施設向け事業の入札時に必要なボンド(保険)の枠を同社の信用力により拡大)が発揮されたことが大幅な業績の伸びにつながったと言える。

「国内管理系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比35.2%増の1,181百万円、営業利益が同6.7%減の260百万円と増収ながら減益となった。国内の労働力不足や労働者派遣法の改正に伴う期間社員の代替として、メーカーによる外国人技能実習生の活用ニーズが増加している。2017年12月末の管理人数は5,628名(前期末比4,150名増)と大きく拡大し、そのうち外国人技能実習生は5,127名(計画は5,100名)となっている。ただ、利益面で減益となったのは、管理業務受託のニーズが日本人から外国人実習生へ移行したことにより、その移管コストがかかったことが理由である(一過性の要因)。

「国内人材紹介事業」は、売上収益が前期比28.0%増の1,763百万円、営業利益が同7.9%減の594百万円と増収ながら減益となった。売上収益は、既存顧客メーカーの増産に伴う旺盛なニーズにより伸長した。一方、利益面では、高利益率だった自動車メーカーのニーズが、人材紹介からPEOスキームの派遣へ移行したことにより減益となった。もっとも、メーカーの直接雇用が減少する傾向のなかで、期待分野としては捉えていない。

「海外技術系事業」は、営業収益が前期比37.6%増の28,925百万円、営業利益が同78.9%増の1,232百万円と増収増益となった。欧州・豪州において、独自開発のシステムを活用した各国政府・地方自治体からの各種業務の受託や、公共施設での各種アウトソーシング事業が順調に拡大した。

「海外製造系及びサービス系事業」は、営業収益が前期比171.4%増の87,262百万円、営業利益が同170.9%増の3,727百万円と大きく拡大した。前期にM&Aした各企業が期初から寄与したことや、2017年1月にM&AしたOrizon(ドイツ)による業績貢献により、欧州・アジア・豪州・南米で製造系及びサービス系がともに大きく拡大した。特に、サービス系は、景気の影響を受けにくい各国政府系機関等への人材サービスや公的業務のBPOによる受託、ペイロール(給与計算代行)事業が順調に伸びている。

2. 2017年12月期の総括
以上から、2017年12月期を総括すると、計画を上回る業績の伸びを実現したことに加えて、1)KENスクールやPEOスキームなど独自の取り組みが好調に推移したこと、2)注力する米軍施設向けが順調に伸びたこと、3)海外事業(特に、公務の民間委託事業)もM&Aやグループシナジーの創出により大きく拡大したこと、4)グループガバナンス体制の強化※を図ったことなど、戦略面や体制面においても大きな成果を残したと言える。特に、2)及び3)については、景気の影響を受けない新たな事業領域への展開という点で大きな進展と言える。また、4)についても、守りの側面はもちろん、さらにM&Aを推進するための攻めの側面としても評価できるだろう。

※ 同社は、これまで積極的なM&Aにより事業拡大(特に、海外事業)を図ってきたが、それに伴うリスクへの対応のほか、戦略の精度及びスピードを高めることを目的として、グループガバナンス体制の強化に取り組んでいる。1)グローバルガバナンスポリシー設計、2)リスクマネジメント基盤整備、3)経理機能の更なる強化、4)情報システムセキュリティ基盤構築、5)コンプライアンスの徹底、を重点課題に掲げているが、特に、喫緊の課題として、月次決算のスピードを早め、外部及び内部環境の変化に迅速に対応できる体制の早期実現を目指している。


3. 業績推移
これまでの業績を振り返ると、景気変動の影響を受けながらも、製造工程の外注化ニーズに対応する形で人材提供数(外勤社員数)の拡大を図ってきたことが同社の成長をけん引してきた。特に、2012年12月期以降、同社の業績が大きく伸びているのは、国内メーカーによる海外生産移管や国内産業構造の変化(鉱工業からIT産業や土木建築産業へのシフト)への積極的な対応を図ることにより、「海外事業」や「国内技術系」が順調に拡大してきたことが寄与している。足元では全般的な人手不足感や労働者派遣法の改正に伴う規制緩和により人材派遣市場全体が活況を呈しているなかで、積極的なM&Aを通じたグループシナジーの創出を含め、景気変動の影響を受けない事業構造への変革を進めることによりオーガニックな成長を実現してきたと言える。

財務面では、M&Aを含めた積極的な投資により有利子負債は拡大傾向にある。特に、2016年12月期は投資総額約430億円のM&Aを実施したことにより、有利子負債残高は大きく拡大し、「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」も8.5%に低下した。ただ、2017年1月に発行した新株予約権により約105億円の資金調達を実現しており、2017年12月末の「親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)」は20.0%に回復している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)

《TN》

 提供:フィスコ

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