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2412 ベネフィット・ワン

東証P
2,165.5円
前日比
+1.0
+0.05%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
61.7 15.29 3.84
時価総額 3,447億円
決算発表予定日

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べネ・ワン Research Memo(8):「HR Tech」による生産性革命


■ベネフィット・ワン<2412>の中長期の成長戦略

(2) 「HR Tech」の活用
日本は、生産年齢比率が高く、人口構造が経済発展にプラスとなる人口ボーナス期が1990年代に終わり、現在は逆の人口オーナス期にある。人口ボーナス期は、低コストで豊富な労働力を使えるため、男性社員の長時間労働に依存し、子育てや介護はもっぱら女性の役割とした。新卒を一括採用し、適材適所を図るためローテーション人事を行い、知識や技能習得のためOJTなど社内教育を施した。その見返りとして勤務地、職務、労働時間が限定されない無限定正社員が主体となる組織を作った。キャリア形成プランは会社に任せ、社員が主体的に選択する機会は少なかった。

人口オーナス期は、従属人口指数の上昇に対応することになる。生産年齢人口の減少ペースを鈍化させるため、女性及び高齢者の労働力率を高める必要がある。出産、子育て期における女性の労働力率低下を抑え、第2子以降の出生を促す少子化対策は、男性の家事・育児に割く時間の長さに大きく依存している。現在、男性の家庭を顧みない長時間労働が、少子化の最大の要因とみなされている。また、1年間の介護離職者数は10万人に上り、その8割が女性となる。2017年4月の全国待機児童数は2.6万人だが、特別養護老人ホームの待機人数は52万人に上る。2025年にすべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、事態がさらに悪化することが危惧される。人口オーナス期は、ボーナス期に比べ時間当たりの人件費が高く、また長時間労働が困難な労働者が増えている。企業は、多様な働き方と少ない時間で効率良く働き、1人当たり・時間当たりの付加価値生産を高めることを目指すマインドセットに改めることを迫られる。

2017年11月に発足した第4次安倍内閣は、今後の経済運営を「生産性革命と人づくり革命の両輪」とした。生産性革命は、ITの活用抜きには語れない。働き方改革による生産性の向上は、新しいルール(制度)とツール(HR Tech)の導入による。「Human Resources (HR)×Technology (Tech)」の造語である「HR Tech」は、米国で最もホットなテーマの1つとなっている。人事関連業務である採用、育成、評価、配置などに、クラウド、ビッグデータ解析、人工知能(AI)など最先端IT技術を活用する。

HR Techの中でも注目を浴びているのが、「ピープル・アナリティクス(People Analytics)」と「エンゲージメント(Engagement)」である。「ピープル・アナリティクス」は、社内のコミュニケーションなどを含む社員の行動データを収集・分析して職場管理の最適化と効率化を図る。エンゲージメントは、社員の仕事に対する「熱意度」と訳されている。米ギャラップは、仕事の熱意度(エンゲージメント)により上位4分の1と下位4分の1の社員のパフォーマンスの比較調査を行った。上位グループは、下位グループに対し利益性で21%、売上高で20%、生産性で17%といずれも上回り、一方、離職率は低離職率の職場で59%、高離職率の職場で24%下回るといった調査結果を発表した。米国では、エンゲージメントを向上させるITシステムの開発、販売、導入が盛んだ。OECD加盟国の時間当たり労働生産性調査(2016年版)では、日本は35ヶ国中、20位の下位にある。ドル建て比較のため為替変動の影響を受けるものの、日本の時間当たりの付加価値生産は米国の6割強の水準にとどまる。日本でも生産性改善のため、ツールを導入する余地が大きい。

2015年4月に、「HRテクノロジーコンソーシアム(HR・Learning Technology & Big Data Analytics Consortium (LeBAC))が設立された。2016年の第1回「HRテクノロジー大賞」は、コンソーシアムにも加盟している日本オラクルが大賞を、日立製作所<6501>と(株)ワークスアプリケーションズがイノベーション賞を受賞した。日本オラクルは、クラウドテクノロジー「Oracle HCM Cloud」を提供しており、自社の採用、評価、育成、リテンションといった社員ライフサイクルごとの人事施策に最大限に活用している。

同社は、人事データを核としたBPOプラットフォームを提供することで、福利厚生、報奨、教育、給与計算、出張精算、小口精算、金融、健康などに関するビッグデータを押さえていく。また、クラウドサービスの一環として、HR Tech、タレントマネジメント、グループウェア、コミュニケーション、統合基幹業務、顧客管理、レコグニション、Health Techなどの他社ソフトとの連携を可能にすることでワンストップソリューションサービスを提供していく。

同社は、人事データを中心としたビッグデータを集積・分析し、従業員一人ひとりに最適なアドバイザリーサービスを提供していく。目的は、会員となる従業員と顧客企業の継続的成長である。企業は、職場環境のチェックなどの組織分析や評価、育成、人材配置に関わるタレントマネジメント、それらを活用して経営効率化や生産性向上を図る。従業員には、データヘルスや健康ポイントの健康、FinTechや401kの金融に係るアドバイザリーサービスを提供することで、セルフマネジメント能力を向上させる。社会経済環境が極めて予測困難なVUCA時代にあって、企業はHR Techなどのツールの助けを必要とする。同質の従業員により構成された人口ボーナス期の経営スタイルは、多様化する働き方のオーナス期には適さない。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

《MW》

 提供:フィスコ

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