信用
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)のみができる銘柄
株価20分ディレイ → リアルタイムに変更

2376 サイネックス

東証S
746円
前日比
-4
-0.53%
PTS
-円
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
13.1 0.55 2.01
時価総額 48.3億円
比較される銘柄
Vゴルフ, 
Enjin, 
イード
決算発表予定日

銘柄ニュース

戻る
 

サイネックス Research Memo(2):IT活用による地域支援を目指す(1)


■会社概要

(1)沿革

サイネックス<2376>は1953年、三重県松阪市において電話帳及び各種名簿の作成事業を目的に、近畿電話通信社として創業した。1966年に(株)商工通信へと改組し、大阪市阿倍野区に本社を置いた。法人化を機に近畿のみならず関東や九州へと支店網の拡大を加速させた。

2000年代中頃までは電話帳『テレパル50』を事業の軸として業容を拡大させてきたが、その業務プロセスの本質は地域密着型の情報誌発行というものだ。同社はその知験を活かして官民協働型による地域行政情報誌発行事業への進出を決定した。2006年に大阪府和泉市との間で官民協働事業『暮らしの便利帳』発行協定を締結し、これに基づき2007年5月に和泉市の『市民便利帳』が発行された。この市民便利帳はその後、『わが街事典』ブランドに統一され、現在のプリントメディア事業の中核事業へと成長してきた。

同社はまた、IT活用による地域支援を目指し、2012年にはeコマースサイト『わが街とくさんネット』の運営を開始し、また2013年にはふるさと納税支援のための『わが街ふるさと納税』をオープンした。2014年には茨城県笠間市との間でふるさと納税制度に関する一括業務代行協定を締結するに至った。

資本市場には、2003年11月に大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場し、その後2015年6月に東京証券取引所第2部に市場変更して現在に至っている。

(2)経営方針

同社の経営方針は「地方創生のプラットホームを担う社会貢献型企業を目指す」だ。同社の展開するすべての事業にはこの経営方針が背骨として入り込んでいる。同社にとって最も根本的な考え方であり、同社の企業理念とも言える存在だ。

同社がこのような経営方針を掲げるに至ったのは、同社の創業事業に起因していると弊社ではみている。同社は創業以来60年以上にわたり地方自治体単位の電話帳『テレパル50』の発行で成長してきた。すなわち、同社の歴史は地方とともにあった。この間、日本では東京一極集中が進む一方、地方の衰退が進行してきた。地方・地域とともに歩んできた同社は、地方に権限と財源を持たせて“独立自尊”の体制を確立することが重要であるとの信念を持つに至り、それが冒頭の経営方針へとつながっていると思われる。

地方は、財政逼迫、人口減少、地域経済の衰退など、数多くの問題を抱えている。これらの解決には権限と財源について地方が主導権を有する地方分権体制が不可欠だが、その実現は簡単ではない。そうした現実の中で、地方が再生を果たす現実的方策として、官民の協働こそがカギになるというのが同社の実際の事業展開のベースとなっている。「PPP(Public-Private Partnership)」というスローガンのもと、自治体と民間企業である同社が協働で取り組むことで、官と民という異分子結合による化学反応で相乗効果を生み出そうという発想だ。

同社は前述の経営方針に基づき、官民協働事業の具体的展開を探ってきたが、その第1号が『わが街事典』の発行だ。詳細は後述するが、この事業の特徴は自治体、住民、事業者の“三方よし”の実現にある。『わが街事典』の発行をきっかけに、関連・周辺領域へと事業を展開し、地方自治体にとって必要不可欠なパートナーとして、プラットホーム的存在になることを目指している。

地方公共団体との取引を収益源とする企業は数多いが、同社のように地方自治体の財政負担を伴わない形で、自社の収益を確保し、自治体と住民の価値を高めて地方再生へつなげようというビジネスモデルの企業は非常に数が少ない。ましてや、全国展開している企業となるとなおさらだ。同社の経営方針は、他に例を見ないユニークなものと言え、そこに、同社の事業の成長可能性の根本があると弊社では考えている。

(3)事業の概要

a)全体像
同社は、従来は「メディア事業」の単一事業体制であったが、2015年10月に郵便発送代行事業を手掛けるエルネットを連結子会社化したのをきっかけに、メディア事業と「その他の事業」との2事業セグメント体制とした。その他の事業の中身はエルネットの郵便発送代行事業である。

メディア事業はプリントメディア事業とITメディア事業とに分けられる。プリントメディア事業の内容は『わが街事典』や『テレパル50』などの紙媒体を取り扱う事業だ。現状は『わが街事典』及びその派生商品であるジャンル別便利帳と、『テレパル50』とで売上高を2分している。

ITメディア事業はWebサイトを活用して地方経済活性化に貢献しようというもので、地域情報総合サイト『CityDO!』の運営などを行うメディア事業と、地域の特産品や旅行商品などをインターネットで販売するeコマース事業の2つから成り立っている。

2016年3月期のセグメント別売上構成比は、プリントメディア事業63%、ITメディア事業が27%、その他の事業が10%という構成であった(ただし、その他の事業は6ヶ月分のみの連結)。また、その中で『わが街事典』の売上高は、全社売上高の24%であった(派生商品は除く)。

b)『わが街事典』事業
1)事業の詳細
『わが街事典』は官民協働事業の第1号プロジェクトとして、2006年に始まった。大阪府和泉市の市民便利帳を発行したのが最初の案件だ。その後2009年に統一ブランドとして『わが街事典』を導入し、現在に至っている。

『わが街事典』は自治体ごとに制作され、製本されたうえで全世帯に無料配布される地域行政情報誌だ。内容は当該自治体についての歴史や文化などの知識やレジャー・イベント情報などから、行政情報(各種制度や手続き・窓口の案内など)や防災情報、医療機関情報、交通機関の情報などが網羅されたものとなっている。

その収益モデルはフリーペーパーと似ている。自治体側は行政情報の提供や紙面構成ななどで協力するが、資金面ではゼロ予算事業ということで、原則として費用負担はしない。同社は『わが街事典』の広告スペースを各種事業者に販売し、その広告収入が同社の収入となる。同社の業務は、『わが街事典』の企画・制作、広告枠の販売及び各戸への配本ということになる。

同社はこのビジネスを日本全国の市区町村の地方自治体を対象に展開している唯一の事業者だ。『わが街事典』という商品と似たようなものはあるが、真正面から競合するものはない。例外的に自治体が費用の一部を負担するケースもある。その場合には競争入札というプロセスを踏まねばならないため競合相手が出てくるが、ほとんどの場合は地元企業だ。同社にとっては、競合問題よりも、広告枠の販売をいかに順調にこなすかが、実務上の最大課題ではないかと弊社ではみている。

同社は『わが街事典』を全国645自治体と共同発行を行ってきた(2016年5月末現在)。日本の市町村(東京23区を含む)数は1,750(2016年6月現在)だが、全てが協働対象の自治体数となる。特に市区部では約58%の自治体が『わが街事典』を発行している。これまでの延べ発刊数は1,064版、総発行部数は5,800万部に達している。

同社はまた、『わが街事典』の派生商品も手掛けている。具体的には、防災やごみ、子育て、健康など、ジャンル別の便利帳や回覧板だ。これら派生商品の収益モデルも『わが街事典』同様、広告収入モデルが基本となっている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

株探からのお知らせ

    日経平均