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2186 ソーバル

東証S
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時価総額 80.5億円
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ソーバル Research Memo(5):事業の多角化を図る。まずは利益確保よりも技術の蓄積や、新規顧客の開拓に注力


■人員確保と基本戦略の進展の今後

最後に、ソーバル<2186>の最大の課題である人材確保の克服と、今後、最も気になる基本戦略の進展の今後について触れる。

(1)人材確保

同社の主力であるファームウェアは、デジタル機器の性能競争が激化する現在において仕事はいくらでも確保できる環境にある。したがって、仕事をこなすための人員さえ確保できれば、比例して事業が拡大できる。

しかし、人材の確保は容易ではない。ファームウェアの開発は他のソフトウェア開発と違う特殊性があり、通常のエンジニアよりも高いスキルが求められ、それだけのスキルを持つエンジニアの絶対数がそもそも少ない。自社で育成するにしても、企業の人材不足から新卒の優秀な学生の確保が困難になってきている。このような背景から、人材確保は足元での最も大きな課題となっている。

この課題を克服するために同社は独自の採用戦術を展開している。2014年2月期までに自ら採用活動ができる体制を整えたが、広報戦略の強化として、複数の求人メディアの活用も行っている。さらに、2015年2月期から、インターンシップ制度を開始した。電子オルゴール用の組込ソフト開発のほか、2017年2月期からは、人型ロボット「Pepper」を導入し、Pepper用のアプリケーションソフトの開発体験も始めた。大手企業の内定式がある10月1日以降も採用活動を継続するなどの施策も行っている。

「人を何よりも大切にする」という経営姿勢も人材確保の大きなポイントである。人材育成の充実のほか、エンジニアのワークライフバランスを充実するため、残業時間を極力減らす運営を行っており、(株)東洋経済新報社が調べた「有給休暇取得率」ランキングでは、サービス業では2013年から4年連続で2位を獲得している。

さらに、社会貢献活動による企業イメージの向上にも引き続き力を入れている。2月の台湾地震、4月の熊本とエクアドル地震、8月の大雨による岩手と北海道の被害と、同月のイタリア地震など、日本のみでなく、世界の被災者へ支援金を贈った。昨年9月には恒例行事となった、東京・お台場海浜公園での清掃作業「東京ベイクリーンアップ大作戦」(公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン主催)に76人の社員が参加しており、毎年従業員が参加する社会貢献活動も積極的に実施している。

これら地道な努力によって、学生の興味は確実に高まっているようである。インターンシップは毎回、満員の状況が続いているという。しかし、実際の採用には直結していないのも現状と言えそうである。希望としては80人、最低でも70人を予定していた2016年4月期の新卒採用は64人にとどまった。2017年4月期も同様の採用計画だが、現実的には64人を若干上回る程度になる可能性が高いと予想している。

一方、人員確保は確かに最大の課題ではあるものの、同社は数合わせだけの確保は決してしない方針を堅持している。顧客との交渉力といったヒューマンスキルを含む技術者としての高い能力を求め、基準に満たないと判断した場合には、採用しない。この方針を堅持している点も人員確保のハードルをさらに高くすることにつながっている。人員確保の課題を根本的に解決する方策は今のところ見つかっていないと言える。

しかし、「人を何よりも大切にする」という姿勢が90%以上という高い定着率を実現していることも事実である。このため、社員数は着実に増えている。8月末は連結ベースで1,042人と、前年同月末に比べ18人増となっている。既に説明したが、ノウハウの共有促進により、業務の効率化が進んでおり、新卒の即戦力化も早い。これらにより、人員確保の課題を少しずつではあるが、緩和している。人材確保の難しさが同社の収益拡大のボトルネックになる可能性は否定できないものの、業績拡大の大きな妨げになるほどの深刻な問題ではないと考えていいだろう。

(2) 基本戦略の進展の今後

繰り返しになるが、同社の成長のための基本戦略は極めて明快で理解しやすい。成長のカギを握るのは、事業の多角化である。したがって、これがいつまでにどのような形や規模で収益に貢献するかという点が同社への最も大きな関心事になると言えよう。ただ、残念ながら、同社はこれに関して、明確な意思を表明していない。自動車の自動運転分野は2020年くらいをめどにそれなりの市場になることを期待しているとしているが、具体的なタイムテーブルを示しているわけではない。少なくとも、2017年2月期は、通期見通しの根拠としているように、収益構造の多角化実現のために新規の取り組みに対して、利益確保よりも技術の蓄積や、新規顧客の獲得を優先することにしている。

しかし、同社がこれから本格的に事業化しようとしている分野は大きな市場になることが期待されるものばかりであるものの、まだ、立ち上がりの段階にある。1社の努力で市場が確立される分野ではない。そういう意味で、事業多角化が進展する時間軸を想定すること自体が難しい。そこで同社は時間軸を表明する代わりに増収増益の継続を市場に対して打ち出している。2017年2月期の業績予想もそうである。事業多角化のためにコストはかかるかもしれないが、あくまで、増収増益が実現できる範囲内で行うという堅実経営のメッセージである。見方によっては、多角化の収益化に期限を設定しない分、時間にとらわれない着実な取り組みが期待できるとも言えるだろう。そして、このようなメッセージを打ち出せるのは、ファームウェアという盤石な事業があるからこそである。そういう意味では、株主・投資家にとっては今後の成長だけに注目していけばいい企業と言える。加えて、株主に対して手厚い配当や株主優待、自社株買いによる株式価値の向上といった施策を打ち出しており、足元においても株主重視の姿勢をはっきりとさせている。

ファンダメンタルに大きな懸念はなく、株主重視の姿勢も強化している銘柄といえることから、中長期的な投資先として引き続き目が離せないと言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柄澤 邦光)

《HN》

 提供:フィスコ

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