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2154 オープンアップグループ

東証P
2,048円
前日比
+4
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PTS
2,042.9円
12:32 04/25
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
15.9 2.62 2.69 8.14
時価総額 1,880億円
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トラストテック Research Memo(13):「地域」と「領域」の2つの軸で成長目標実現を目指す


■中長期の成長戦略

2. 中期成長戦略の詳細
トラスト・テック<2154>の中期成長戦略の骨格は「地域」と「領域」の2つの軸で事業を拡大し、その結果として同社の成長を実現するというものだ。そして、成長実現をより確実なものとするために、2つの軸のそれぞれにおいて目指すべき同社独自のポジションを掲げている。

(1) 「地域」の軸による成長戦略
地域とは、文字どおり同社が事業を展開する地理的な場所のことだ。同社は国内市場については成長スピードの維持が困難になるとの認識を有している。また、国内市場においては今後、競合が激化するとの認識も有している。他方、世界市場については、全世界の人材派遣市場が約42.4兆円規模に達し、日本の人材派遣市場(約6兆円)の7倍の規模があることに注目している。このマクロ観と、同社の顧客企業が設計・開発・製造の現場を海外展開している現況を踏まえれば、同社が世界展開に成長余地を見出そうというのは自然なことと言える。また、同社が国内市場で培った事業・経営ノウハウは、世界市場、特に先進国・成熟市場においては有効活用が可能だと期待される。

2017年6月期においては、「地域」軸において大きな進展があった。それが2016年8月の英MTrecの買収だ。MTrecは2006年設立の、イングランド北東部のニューカッスル・アポン・タインに本拠を置く人材サービス企業だ。MTrec本体では製造スタッフや技術者の派遣業及び人材紹介業を手掛けるほか、子会社のMTrec Careにおいては看護師やヘルパー等のケア人材サービスを行っている。MTrecの本拠地周辺には自動車関連メーカー等の製造業が集積しており、英国日産自動車の工場(サンダーランド)や日立レールヨーロッパの鉄道車両工場(ニュートン・エイクリフ)などの日系企業も多数進出している。同社はそうした自動車関連企業や家電企業、機械企業などを主要顧客として順調に業績を拡大させている。2016年3月期は売上高44.9百万ポンド、税引前利益2.3百万ポンドを計上している。

弊社では、今回のMTrecの買収は様々な点で非常に優れたディール(取引)だったと評価している。第1に、英国という人材派遣市場が成熟した国の企業である点だ。英国の人材派遣市場は世界市場の12%を占め、13%を占める日本市場と肩を並べている。両国の人口の差を考えれば、英国の派遣市場の成熟度は日本をしのいでいると言えるだろう。本格的な海外展開の第1歩として、派遣市場成熟国に拠点を確保できた意義は大きいと考えている。2つ目は創業者が主要株主かつ経営者として残った点だ。過去のM&Aでは100%の持分を取得することを基本としてきたが、今回は同社の意向もあって創業者の1人であるMusgrave氏が株主として残った。株主として同社と同じ利害関係を有する英国人(しかも創業者)を確保することは、経営リスク軽減に有効だと弊社では考えている。3つ目はアーンアウト方式の採用だ。アーンアウトとは、取得価額の一部について、将来の業績成長の実現まで、支払を繰り延べる方式をいう。日本ではなじみがないが欧米においては買収リスクを軽減するのに有効な手法として広く利用されている。

同社はまた、アジアにおいて先行投資を断行した。内容はインドネシアと中国での現法・合弁企業の設立だ。このうち特に注目すべきは中国・山東省での合弁企業であるTrust-Bridgeの今後の動向だ。Trust-Bridgeは中国全土で人材派遣・請負サービスを提供できるライセンスを保有している。また、Trust-Bridgeはライセンスの取得第1号企業であり、そうした時間軸での優位性をどのように活用して自社のプレゼンスを確立していくか、今後の大いなる注目点と弊社ではみている。

(2) 「領域」の軸による成長戦略
領域とは、同社が展開する事業ドメインのことだ。同社は技術派遣・製造派遣という領域で事業を展開しているが、このうち、製造派遣・請負は、顧客はメーカーであり、生産品目が何であれ“製造”に関する派遣・請負を行っている。一方、技術派遣は現状、同社本体を通じて主として機械・電気系領域の顧客に対してサービスを提供している。さらに、子会社のフリーダムにおいてIT・ソフト領域をカバーしている。今後はIT・ソフト領域を一段と強化するとともに、大きな市場が期待されている「IoT」や「AI」の領域にも進出することを目指すというのが、領域軸の目標であり、目指す独自ポジションの内容となっている。

(3) まとめ
今中期経営計画における同社の成長戦略をまとめると、以下のようになる。領域軸では、現状は国内市場で、製造派遣・請負と、機械・電気領域及びIT・ソフト開発領域における技術派遣・請負を展開している。地域と領域の2軸による成長戦略は、同社が経営上の意思決定を行う上で、明確な指針となり得るというのが弊社の評価だ。また、過去のM&Aや各種施策の評価を行う上でも2つの軸を切り口とすることで、正確な評価が可能になり、過去の成功・失敗の体験を積み重ねて将来の成功に結び付けていくことが可能になると考えている。

2017年6月期にあっては、この成長戦略に沿った複数の大きな進展が見られた。前述したように、国内・技術系領域では同社本体がトラィアルの吸収合併や領域特化型の組織再編を行った。また国内・製造系領域ではTTMがサテライトオフィスを拡充し、地域密着型による体質強化を図っている。海外領域(海外展開)ではMTrec買収に引き続き、インドネシアや中国で現法や合弁企業を設立した。これら施策の進捗・効果や更なる施策を期待をもって見守りたいと考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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