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1905 テノックス

東証S
1,150円
前日比
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業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
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時価総額 84.5億円
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日本乾溜工
決算発表予定日

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テノックス Research Memo(6):減収も利益は2ケタ増益を確保


■業績動向

1. 2020年3月期の業績動向
テノックス<1905>の2020年3月期の業績は、売上高18,583百万円(前期比10.5%減)、営業利益1,139百万円(同19.5%増)、経常利益1,179百万円(同16.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益768百万円(同20.1%増)と、減収ではあったが2ケタ増益となった。国内経済は相次ぐ自然災害や消費税増税などの影響を受けたものの、良好な企業収益や雇用・所得環境の改善に支えられ緩やかな回復基調で推移した。しかし、米中貿易摩擦や英国のEUからの離脱など国際情勢に加え、2020年明けには新型コロナウイルスの感染が世界規模で拡大、国内においてもあらゆる業種に影響を及ぼす状況となった。建設業界においては、民間設備投資が一部弱含んだものの企業収益は高い水準を維持し、公共投資も底堅く推移している。一方、特に現場では「働き方改革」が途上であり、施工の担い手の確保や育成が課題となっている。

同社は、中期経営計画に基づき、引き続き施工品質の向上や安全管理の強化、人材の育成と適正な人員配置による施工体制の強化に取り組んだ。売上高については、杭工事(土木)で、北陸新幹線(福井~敦賀)の高架橋や新名神高速道路関連の工事が順調に推移したが、東北の震災復興関連の水門工事が終盤を迎えた。杭工事(建築)では官庁物件は増勢だったものの、民間の工場や集合住宅などが減少、地盤改良工事では大型の工場や商業施設で一巡感が生じた。加えて、期末に向けて完成を予定していた工事に着工遅れが生じたこともあり、比較的大きな減収となった。大型土木工事向けに鋼管杭の商品売上が増加したが、競争が徐々に厳しくなってきていることも要因のようだ。利益面については、売上高は減少したものの、前期に計上した施工不具合の関連費用がなくなったこと、事前にリスクを十分把握するなど施工管理を徹底したこと、小規模だが競争の少ない好採算の工事が増えたことにより2ケタ増益となった。

期初計画比では、売上高で2,416百万円、営業利益で10百万円の未達となった。売上高は大きな未達となったが、むしろ利益率が改善したことで、営業利益はほぼ期初計画線を確保することができたといえる。売上高の未達は、計画していた一部工事で着工や完成に遅れが生じたことが要因である。遅れた工事の一部については、2021年3月期に売上計上されるものもあると見られる。一方、利益率が改善したのは、施工管理の徹底を進めたことで効率が向上したこと、小規模工事の採算が良好だったことなどが要因である。

なお、官庁と民間、土木と建築の間で相互に補完し合うポートフォリオ効果が認められ、同社の堅実性が伺える。しかし、景気回復や東京オリンピックを前にした着工増を考慮すると、2020年3月期の売上高は平常時に戻ったと言うこともできる。また、第1四半期より非連結子会社で持分法非適用会社であったTENOX ASIA COMPANY LIMITED(ベトナム)を連結の範囲に含めた。


セグメントの大半を占める建設事業
2. 2020年3月期セグメント別業績動向
セグメント別では、建設事業が売上高17,963百万円(前期比11.4%減)、セグメント利益1,055百万円(同21.6%増)、土木建築コンサルティング全般等事業が売上高598百万円(同22.3%増)、セグメント利益78百万円(同19.8%減)、その他の事業が売上高21百万円(前期は0百万円)、セグメント利益は5百万円(前期は12百万円の損失)となった。建設事業は、売上高の大半を占めることから、前述した連結業績の内容とほぼ同様である。土木建築コンサルティング全般等事業の増収要因は主として設計・計算業務に関する収入が増加したことで、減益要因は大学への寄付や展示会への参加費用などが増加したことである。その他の事業の売上高は、神奈川県川崎市に所有している土地に建設した賃貸不動産が第1四半期に稼働したことによる。


新型コロナウイルス感染拡大の中、今後に向けて巻き返しを期待
3. 2021年3月期業績見通し
2021年の国内経済は、新型コロナウイルスの感染拡大によりリーマンショックを上回る影響が生じると予測されている。建設業界でも、公共投資は自然災害対策など補正予算の執行が期待されるものの、民間においては新規設備投資の減少や建築施工計画の中止?工事の延期などが懸念されている。その一方で、現場作業員の雇用の確保とともに、現場への「働き方改革」導入にも取り組む必要もあり、建設業界を取り巻く環境は厳しくなってきている。同社は、新型コロナウイルス感染拡大への対応として、従業員や取引先などステークホルダーの安全確保を最優先し、万全の態勢で事業の継続にのぞんでいる。しかしながら、現状、影響は軽微とはいえ、元請の要請で中断せざるを得ない工事がわずかながら発生したこともあり、今後の感染状況によっては、工事の進捗や受注の先行きを見通すことが困難となっていることから、同社は2021年3月期の業績予想を未定とした。

杭工事(土木)は、新名神高速道路関連が継続しているが、北陸新幹線関連の工事が前期でほぼ終了したため、やや端境期的な状況と言える。しかし同社は、整備新幹線関連や高速道路の拡幅・新設などの計画があることから、北陸新幹線での実績を背景に建設コンサルタントや事業主への営業を強化する方針である。一方、杭工事(建築)や地盤改良工事に関しては、商業施設の動きは鈍そうだが、ネット通販が伸びていることもあって物流施設の計画が非常に多く、しかもリードタイムが短いことから、重点注力分野として受注活動を強化する方針である。工場も前期並みを確保する方針のため、一定水準の売上高は確保できると考える。この際、高い評価を得ているVCCSは、施工管理ツールとしては当然だが、差別化へ向けた営業ツールとしても活躍しそうだ。利益面では、前期に引き続き施工管理の徹底などにより売上総利益の拡大を目指している。このため、もちろん不透明感が非常に強いなかでの話だが、一定水準の売上高が達成できれば前期並みの利益は射程圏内と思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

《ST》

 提供:フィスコ

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