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明日の株式相場に向けて=蟻の一穴を侮ることなかれ

 きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比162円安の2万8906円と反落。薄商いのなかも相変わらず先物主導で上下に不安定な値動きが続いている。前日の米国株市場ではNYダウがしっかりだったものの、ハイテク系銘柄に弱いものが目立ち、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も下落したことで、きょうの東京市場は出足から軟調な地合いが予想されていた。

 ところが、寄り付き日経平均はマイナス圏でスタートしたが、その直後から畳み込むようにインデックス買いが入りプラス圏に切り返す場面があった。受け渡しベースではきょうから新年相場入りとなることで、ご祝儀買いでも入ってきたかと思わせたが、例によって買いは続かず、ほどなくしてマイナス圏に引き戻された。

 その後の動きを追ってみると、大口の売り注文が複数回入り日経平均の下げ幅は一時340円程度まで広がったが、午前11時を回ったあたりから再び風向きが変わることに。一転して買い注文が間断なく流入し、後場寄り後もしばらくは同じ“勾配”の坂道をのぼるように上値指向を続けた。午後1時を過ぎると、今度は定規で線を引くように再び水準を切り下げ始め、取引終盤になって目が覚めたように再浮上し、大引けは162円安で着地している。今日は12月末の権利落ちで37円程度押し下げられており、それを考慮すれば底堅いといえる。値上がり銘柄数は全体の7割強を占め、決して弱い地合いではなかった。

 しかしそれでも、きょうの一連の全体株価の値動きは無機質な印象を受ける。特に材料に反応したということではなく、意思なき売りと買いの交錯で、中小型材料株を除いて実需のやり取りがどの程度含まれていたかと考えさせられる。アジア株や米株価指数先物の値動きを横にらみにAIアルゴリズムの“気まぐれ”で振り回されているように見えなくもない。機関投資家(人間)にすれば、年末年始の4連休を前に「とりあえず手仕舞い」的なムードが強かったのではないか。悲観に与する意図は全くないが、年明けの相場は仮に上昇したとしても足もとの確認を怠らず、波乱に備えるという姿勢を基本としておきたい。

 今、市場関係者の間で関心が高まっているのが、来年1月5日に公表予定のFOMC議事録(12月14~15日開催分)である。来年については、量的緩和(QE)の前倒し終了と年3回の利上げシナリオを米株市場は既に織り込んでいるとみられるが、量的引き締め(QT)についてはそれほど意識されていない。行われるとしても複数回の利上げに目が慣れた、年末(22年末)あたりであろうと高を括っているようなフシがある。しかし、証券関係者によると「(今年の)12月のFOMCで早くも議論の俎上に載った可能性がある。議事録の内容次第では量的引き締めが早い段階で実施されるとの思惑を呼び、マーケットを波乱に陥れる可能性がある」(国内証券マーケットアナリスト)という。

 コロナ禍から脱却し経済活動が正常化に向かうなかで、FRBが膨張したバランスシートを縮小させる方向に舵を切るのは当然のアクションだが、もし現在の米国株がコロナマネー(新型コロナ対策で掛け値なしに注ぎ込まれた資金)によるバブル的要素を強く内在させていた場合、よほど慎重に行かないと風船に針を刺すようなことになりかねない。「QTというオペレーションは比較的地味で、通常FRBが米国債への再投資を止めるという柔らかめの手段で行われる。その分を購入する側に回る金融機関にすれば労せずして収益機会を増やすことができるためウェルカムなのだが、問題はその分だけ株式市場に回ってくる資金が減少するということだ」(前出のマーケットアナリスト)と警戒する。

 これは個別の金融機関の話ではない。超金融緩和局面の終局に際し、リスク余地の少ない選択肢を採るのは賢明と言えるが、皆一斉に同じ方向に動くことで「合成の誤謬(ごびゅう)」が生じる。中国の古典に「千丈の堤も螻蟻(ろうぎ)の穴をもって潰(つい)ゆ」という言葉があるが、どんなに頑丈な堤防であっても、“蟻の一穴”が崩壊の端緒となることもある。QTへの前倒し的な言及は、現在の株式市場にとってはそれなりの下値リスク要因になると認識しておかねばならない。

 あすのスケジュールでは、東証は21年の大納会となる。海外では12月の米シカゴ購買部協会景気指数など。なお、フィリピン市場は休場。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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