四電工 Research Memo(5):2025年3月期は、減益予想を増益予想へ上方修正
■今後の見通し
● 2025年3月期連結業績予想の概要
四電工<1939>は2025年3月期連結業績予想を2024年10月31日付で上方修正して、売上高が前期比14.0%増の105,000百万円、営業利益が同8.6%増の7,000百万円、経常利益が同7.0%増の7,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.6%増の4,600百万円とした。期初予想(2024年4月26日付公表値、売上高100,000百万円、営業利益6,000百万円、経常利益6,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益4,000百万円)に対して、上期の堅調な工事進捗などを勘案して売上高を5,000百万円、営業利益を1,000百万円、経常利益を1,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を600百万円それぞれ上方修正した。各工事とも順調に伸長して期初の減益予想から一転して増益となる見込みだ。
修正予想に対する上期の進捗率は売上高が47.3%、営業利益が64.9%、経常利益が63.6%、親会社株主に帰属する当期純利益が59.7%である。単純計算すると下期は上期に対して減益の形となる。上期は電気・計装工事の大型案件が寄与したのに対し、下期は資機材価格上昇や人手不足の影響など民間建築分野を中心とする事業環境の不透明感を考慮しているためと見られる。一方で、資機材価格上昇分の受注価格への転嫁が進んでいること、原価管理の一段の徹底が期待されること、採算性の高い案件を受注する選別受注を行っていることなどを勘案すれば、弊社では通期予想には再上振れ余地があるものと考えている。
■成長戦略
「中期経営指針2025」は2025年3月期に前倒しで超過達成する見込み
1. 「中期経営指針2025」
同社は2021年7月に「中期経営指針2025」(2022年3月期~2026年3月期)を策定し、数値目標として最終年度2026年3月期に売上高1,000億円、営業利益60億円、ROE8.0%を掲げた。基本方針として、売上面では営業強化や専門技術者の質・量の拡充を図り、設備工事企業に対するM&Aも積極活用する。利益面では売上拡大に加え、原価管理の徹底により収益性を高める。目標売上高1,000億円の内訳は、事業分野別で配電工事300億円、送電・土木工事50億円、電気・計装工事290億円、空調・管工事220億円、情報通信工事90億円、その他50億円、地域別で四国760億円、首都圏120億円、関西圏120億円としている。またM&A投資、ESG関連投資、研究開発・デジタル化投資として合計100億円の成長投資枠を設定している。要員計画は2025年4月時点の連結ベース従業員数を2,800人程度(うち単体ベースで2,320人)としており、定期採用(単体ベース)では年間100人強の採用を継続する方針だ。
取り組むべき重点課題は、「総合設備企業としての多面的な収益力の強化」「広域的な事業展開の拡充」「ライフラインの信頼性確保のための事業基盤の維持」「四電工グループとしての総合力の発揮」「環境・社会の持続性確保に向けたコミットメント」の5点としている。
具体的な重点戦略については、「総合設備企業としての多面的な収益力の強化」では、施工対象とする業態や施設用途の多様化・拡大、設備一式施工の機会拡充などを推進する。「広域的な事業展開の拡充」では、四国域内において市場シェアアップや利益率向上により売上・利益を最大化しつつ、首都圏・関西圏を中心とする四国域外での収益力を強化して総合設備企業としての収益基盤を整備する。「ライフラインの信頼性確保のための事業基盤の維持」では、協力企業を含めた施工体制・技術力の維持とともに、施工効率のさらなる向上に取り組み、事業の収益性を確保する。「四電工グループとしての総合力の発揮」では、特に首都圏・関西圏において現地の設備工事企業と新たな資本・事業提携関係を構築し、受注・施工面での協業やシナジー創出を推進する。これにより、パートナー企業やその協力企業を含めたグループとしての施工体制を拡充し、連結ベースでの収益力を高める。「環境・社会の持続性確保に向けたコミットメント」では、環境・社会の持続性確保に向け、雇用とダイバーシティの確保、従業員エンゲージメントの向上、省エネ技術の活用や再生可能エネルギーの開発等による環境負荷軽減、地域社会との共存・支援活動など多面的な取り組みを推進する。
「中期経営指針2025」の進捗状況は、営業利益が2024年3月期に6,444百万円となり、最終年度2026年3月期目標の60億円を前倒し達成した。また2025年3月期の連結業績予想を売上高105,000百万円、営業利益7,000百万円としており、最終年度目標値を売上高・営業利益とも前倒しで超過達成する見込みだ。これは、設備工事の比率が高い工場、物流倉庫、データセンターなどを中心に需要が高水準であり、受注価格上昇や受注採算性改善の進展に加え、原価管理部門が資材調達も担当するなどコストダウンに向けた各種取り組みの成果である。要員計画については、2024年4月時点の連結ベース従業員数が2,715人(うち単体ベースで2,226人)となっており、目標としている2025年4月時点の連結ベース従業員数をおおむね達成する見込みである。
なお2025年3月期中間期の地域別売上高(単体ベース)は、四国が358億円(売上構成比82%)、首都圏が56億円(同13%)、関西圏が22億円(同6%)となった。各地域とも大幅増収であるものの、売上構成比で見ると首都圏・関西圏を中心とする広域的な事業展開についてはやや進捗が遅れているもようだ。これは大型再開発案件(香川県)を受注するなど四国域内での受注が想定以上であることなどを考慮して、当面の四国域外への展開を抑えていることが主因である。今後は人材の再配置や現地採用の強化、M&Aなどによって徐々に施工力を高め、首都圏・関西圏への展開を強化する方針である。全体として「中期経営指針2025」の進捗状況は順調と弊社では考えている。
2. 弊社の視点
同社は電気設備工事から空調・給排水設備工事までワンストップで提供できる技術力や高品質の施工力を強みとしており、一般工事の受注拡大に向けた運転資金を安定収入源である送配電設備工事から得られるキャッシュ・フローによって安定的に確保できる強みも備えている。「中期経営指針2025」で掲げた2026年3月期の業績目標値を2025年3月期に前倒しで超過達成見込みとなったことは、これまで着実に推進してきた一般工事受注拡大や工事採算性向上への取り組みの成果である。また配当性向目安の引き上げなど株主還元を強化する姿勢を強く打ち出している点も弊社では高く評価している。今後は人材採用・育成やM&Aによる施工能力強化、首都圏・関西圏など四国域外への展開加速、資本収益性の一段の向上が課題となるが、受注環境は良好であり、次期中期経営計画においてはこれらの課題に対する積極的な取り組みが打ち出されることが期待される。次の成長ステージに向けた戦略に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《HN》
提供:フィスコ