佐藤志樹氏【年内あと3週間、年末年始相場の見通しを聞く】 <相場観特集>
―3万9000円近辺で方向感見えにくい相場の対処法―
9日の東京株式市場は相変わらず方向感の見えにくい地合いで、日経平均株価は前週末終値をはさみ、比較的狭いゾーンでの往来となった。前週末の米国株市場ではハイテク株が買われナスダック総合株価指数が最高値を更新したが、景気敏感株の上値が重くNYダウは下値を試す展開となった。東京市場では高安まちまちの米株市場を受けて投資マインドは強弱拮抗した状態にある。ただし、個別株の物色意欲は失われていない。年末年始相場の展望と物色の方向性について、東洋証券の佐藤志樹氏に意見を聞いた。
●「3万8000~4万円のボックス推移続く」
佐藤志樹氏(東洋証券 ストラテジスト)
東京市場は上にも下にも方向感が出にくい相場となっているが、当面は今の地合いが継続し、年末年始は日経平均がボックス圏推移となる公算が大きい。前週末に発表された11月の米雇用統計は総じて堅調な内容だったが、今月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げの可能性を後退させるものではなかった。今週は11日に発表予定の11月の米消費者物価指数(CPI)などにマーケットの関心が高いが、事前コンセンサスと比較してよほどのブレが生じない限り、FOMCでは政策金利を0.25%引き下げる公算が大きい。また、来年の金融政策についてFedウォッチでは年間で0.75%の利下げのシナリオがやや優勢のようだ。今回のFOMCではドットチャートなども注目されるが、利下げ期待を底流に米株市場は当面下値に対する抵抗力が発揮されそうだ。
一方、国内ではFOMCに1日遅れのタイミングで日銀金融政策決定会合が行われる。ここ最近は0.25%の追加利上げが見送られる可能性が指摘されている。その場合は来年1月の決定会合で利上げが決められる確度は高く、1ヵ月のズレであれば株式市場の大勢トレンドへの影響という点でそれほど大きな差はないと考えられる。
来年1月20日以降はトランプ新政権に移行する。トランプ次期大統領が掲げる関税強化や減税などの世界経済への影響が警戒されているが、米株市場に限って言えば「アメリカ・ファースト」の政策が好感される方向となるだろう。外国為替市場の動向などに注意は必要ながら、基本的に日本株は米株市場との連動性が高く、米株高の流れを引き継ぐ形で当面は強調展開が維持できるのではないか。短期的にはボックス相場が続き、向こう1ヵ月の日経平均のレンジとしては3万8000~4万円のレンジを想定している。
物色対象としては電力エネルギー周辺(原発)と防衛関連の2つの側面から三菱重工業 <7011> [東証P]はマークが怠れない。また、データセンター関連では既にシンボルストックと化したフジクラ <5803> [東証P]のほか、データセンター向け蓄電装置で脚光を浴びる武蔵精密工業 <7220> [東証P]は要注目だ。このほか、12月の決定会合で利上げが見送られたとしても、中期的に国内金利は上昇傾向をたどることが濃厚であり、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]などメガバンクからも引き続き目が離せない。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(さとう・しき)
明治大学商学部卒。2013年東洋証券に入社。同年より、9年間個人投資家を中心とした資産アドバイザーを経験し、2022年4月より現職に。
株探ニュース