為替週間見通し:ドルは下げ渋りか、米利下げ年内終了の思惑強まる
【今週の概況】
■ドルは下落、日銀12月利上げの思惑強まる
今週の米ドル・円は下落。米連邦準備制度理事会(FRB)は12月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で政策金利を据え置くことを決める可能性があるため、週初に154円台後半までドル高円安に振れる場面があった。しかしながら、11月26日に公表された連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨(11月6-7日開催分) によると、多数の参加者は時間をかけて利下げを行うことが適切との認識を示していたことが判明した。FRBによる利下げペースは減速するものの、12月利下げの可能性は十分残されていることから、週後半は調整的な米ドル売り・円買いが優勢となった。ウクライナ戦争を巡って欧米とロシアの対立は解消されていないこと、日本銀行による年内利上げの可能性は消えていないこともドル売り材料となり、29日の東京市場で米ドル・円は下げ幅を拡大し、節目の150円を下回った。
29日のニューヨーク外為市場でドル・円は150円53銭まで反発後、一時149円47銭まで反落した。日本銀行植田総裁の円安是正発言を受けて、12月追加利上げ観測が強まり、リスク回避的な米ドル売り・円買いが加速した。米長期金利の低下も意識されたようだ。米ドル・円は149円65銭でこの週の取引を終えた。米ドル・円の取引レンジ:149円47銭-154円72銭。
【来週の見通し】
■ドルは下げ渋りか、米利下げ年内終了の思惑強まる
来週のドル・円は下げ渋りか。日本銀行植田総裁は金融正常化を推進する方針を堅持し、金融政策決定に関してはその時点で入手できるデータで判断するとの考えを伝えている。直近発表の日本のインフレ関連指標などから、12月18-19日開催の金融政策決定会合で追加利上げが決まる可能性がある。ただし、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げは今年12月が最後になる可能性があること、パウエルFRB議長はインフレ持続の可能性があるため、利下げを急がない方針のためドルは売りづらい。日米金利差の大幅な縮小は期待できないことから、リスク選好的な米ドル買い・円売りが一段と縮小する可能性は低いとみられる。
なお、米トランプ次期政権は中国とカナダ、メキシコに対する関税強化の方針を打ち出し、今後は欧州(特にドイツ)への対応も警戒される。こうした貿易面での衝突で世界経済の収縮が一段と懸念された場合、リスク回避の円買いがやや強まると予想される。一方、ウクライナとロシアの緊張は継続しており、ユーロ売り・米ドル買いが再び拡大した場合、米ドル・円の取引でも米ドル買いがやや強まる可能性がある。
【米・11月ISM製造業景況指数】(12月2日発表予定)
12月2日発表の11月ISM製造業景況指数は47.6程度と予想されている。節目の50を大幅に下回る見込みだが、市場予想を上回った場合はドル買い材料となる可能性がある。
【米・11月雇用統計】(12月6日発表予定)
12月6日発表の米11月雇用統計は失業率が4.2%、非農業部門雇用者数は前月比+20.0万人程度の市場観測。非農業部門雇用者数が市場予想を上回った場合、ドル売りは縮小する見込み。
ドル・円の予想レンジ:148円00銭-152円00銭
《FA》
提供:フィスコ