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東証改革第2幕へ、新TOPIXルールで「持たざるリスク」の6銘柄 <株探トップ特集>


―定期入れ替えの新制度導入、83兆円超の巨額連動資産がもたらす株高効果に熱視線―

 日本取引所グループ(JPX) <8697> [東証P]による市場改革が加速している。JPXは今年6月、次期TOPIX(東証株価指数)の算出案を公表した。TOPIX構成銘柄はこれまでプライム市場のみを対象としていたが、次期TOPIXはスタンダード市場やグロース市場の上場銘柄を対象に加える。

 東証は2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3市場への再編を実施した。これを受けて始まったTOPIXの第1段階の見直し作業により、小粒で流動性の乏しい銘柄は構成銘柄から排除され、22年4月時点で約2200あった銘柄数は25年1月時点では約1700銘柄に絞り込まれる見通しだ。

 そのうえで新たな算出ルールのもと、26年10月にTOPIX構成銘柄の初回の定期入れ替えが実施される。継続採用とならなかった銘柄のウエートを段階的に低減させたうえで、2回目の定期入れ替えが行われる28年10月に構成銘柄は約1200銘柄に減少する。次期TOPIXの構成銘柄となるべく、企業の間で熾烈な競争が繰り広げられることは必至の情勢だ。

●スタンダード・グロース市場の主要銘柄に熱い視線

 日経平均株価やTOPIXなど株価指数の構成銘柄に新たな銘柄が採用された場合、指数と連動したパフォーマンスを目指すパッシブ型ファンドの機械的な買い需要が発生する。除外の場合は、売り需要となる。TOPIXに連動するETF(上場投資信託)や年金信託などによる運用資産は23年3月末の段階で83兆円超となっている。

 次期TOPIXでは「年間売買代金の回転率」と「浮動株時価総額の累積比率」の基準をクリアした銘柄が選定対象となる。平たく言えば、一定の時価総額があり、流動性が高い銘柄が採用候補となる。スタンダードとグロース市場からは、約50銘柄が採用される方針が東証から示されている。

 スタンダード市場の時価総額上位銘柄には、日本オラクル <4716> [東証S]や日本マクドナルドホールディングス <2702> [東証S]、東映アニメーション <4816> [東証S]などがある。グロース市場ではトライアルホールディングス <141A> [東証G]やフリー <4478> [東証G]といった銘柄がある。もちろん、足もとで時価総額が上位にあったとしても、業績のトレンドが下向きであれば、その立場を維持することは容易ではない。次期TOPIX採用のための流動性基準をクリアするには、業績面での安定性が前提要件となると考えていいだろう。

 大株主が上場会社である「親子上場」の問題を抱えている銘柄の場合、株式の流動性は高めにくい状態に置かれることとなる。上場コストやその意義などに照らし合わせ、親会社やファンドによるTOB(株式公開買い付け)、あるいはファンド勢と組んだMBO(経営陣による買収)などの選択に迫られる銘柄も引き続き現れることとなるだろう。これらの観点で、投資妙味を強めつつある銘柄をピックアップしていく。

●TOPIX見直しで注目の6銘柄

◎ハーモニック・ドライブ・システムズ <6324> [東証S]

 産業用ロボットなどに搭載される減速機大手。シクリカル性が強く、前期は中国での設備投資需要の低迷のあおりを受けて業績が大幅に悪化した。25年3月期の最終損益は20億円の黒字転換を計画するが、第1四半期(4~6月)の営業損益は2億3800万円の赤字と、四半期ベースでは23年7~9月期以降、営業赤字が続いており、結果として株価の出遅れ感が顕著となっている。もっとも9月以降に公表された中国当局のバズーカ的景気刺激策の効果が製造業の投資拡大につながれば、ハーモニックの業績回復スピードは想定を超えるペースとなる可能性がある。スタンダード上場ながら時価総額は3000億円を上回っている。

◎ナカニシ <7716> [東証S]

 歯科治療時に使用されるタービンなどを製造。8月に24年12月期の業績予想を引き上げ、最終利益予想は前期比57.7%減の96億5200万円に見直した。コロナ禍後の歯科治療機器への世界的な需要が一巡し、人件費負担が増加するなかで、買収した米国企業の業績が想定を上回って推移したほか、為替の円安も寄与した。修正後の想定為替レートは1ドル=140円、1ユーロ=155円と実勢はこれよりも円安の水準にあり、業績下振れ幅の更なる縮小が期待される。JPX日経400指数に採用されており、スタンダード銘柄で時価総額は2500億円前後。7月以降の2750円を上回った局面での戻り売りをこなし、逆三尊(トリプルボトム)形成後の本格的な反騰局面入りを期待したい。

◎ヨネックス <7906> [東証S]

 テニスやバドミントンのラケットなどを手掛けるスポーツ用品大手。25年3月期の最終利益予想は前期比5.0%増の93億円と前期に続き連続最高益を見込む。景気減速が懸念されていた中国でも4~6月期はバドミントン用品の販売を伸ばすなどブランド力は強く、バドミントンの人気が高く経済成長が続くインド市場の攻略により、トップラインが一段と拡大することも期待される。株価は上場来高値圏で推移しているものの、足もとで信用倍率は1倍を下回る売り長の状況で、ショートカバーが誘発された際には株高に弾みをつけそうだ。

◎MCJ <6670> [東証S]

 「マウスコンピューター」ブランドでパソコンの製造・販売事業を展開する。25年3月期の最終利益予想は前期比4.1%増の127億円に設定。国内PC事業が好調に推移し、前期に続き最高益の更新を計画する。5年連続でJPX日経400構成銘柄として採用。今期のROE(自己資本利益率)は16%台の見通しで、成長力の高いクオリティー銘柄として全体相場が調整した局面では資金余力のある機関投資家から選好されやすい素地を持っている。200日移動平均線は右肩上がりを続けており、中長期目線で押し目買いスタンスで臨みたい。

◎ライフネット生命保険 <7157> [東証G]

 インターネット専業の生命保険会社で、KDDI <9433> [東証P]子会社のauフィナンシャルホールディングスが筆頭株主。業績は拡大フェーズに入り、25年3月期の最終利益は前期比8.1%増の62億円と連続最高益更新を計画する。団信(団体信用生命保険)事業では7月の保険料率更新による利益押し上げ効果が見込まれているほか、銀行業界での住宅ローン業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を追い風に、パートナー銀行の更なる増加による拡販効果が期待されている。6月につけた上場来高値1900円を奪還すると上値余地が広がってくる。なお、同社は25年度にプライム市場への移行を目指す方針を掲げている。

◎GENDA <9166> [東証G]

 アミューズメント施設「GiGO」を運営する。25年1月期の営業利益は前期比30.3%増の70億円と過去最高益を見込む。M&Aを駆使して事業規模を拡大させており、「カラオケBanBan」や映画配給の「GAGA」などを傘下に持ち、エンターテインメント分野での存在感を高めている。7月に海外での公募増資を発表。調達資金で一段とM&Aを加速させる方針を示している。10月2日に上場来高値を形成してから株価は頭打ちとなっているが、テクニカル的な過熱感は和らぎつつある。

 これらの銘柄以外に、親子上場に絡んだ銘柄に対する投資家の注目度も引き続き高い状態が続きそうだ。時価総額の比較的大きいところでは、三菱商事 <8058> [東証P]傘下の三菱食品 <7451> [東証S]、三菱重工業 <7011> [東証P]子会社の三菱ロジスネクスト <7105> [東証S]、日産自動車 <7201> [東証P]グループの日産車体 <7222> [東証S]、コロワイド <7616> [東証P]が筆頭株主のアトム <7412> [東証S]などがある。日本製鉄 <5401> [東証P]傘下の大阪製鐵 <5449> [東証S]は、アクティビストとして知られるストラテジックキャピタルの保有割合が8%超となっている。

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