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原油相場はFOMCの金融緩和が左右へ、鬼が出るか蛇が出るか? <コモディティ特集>

 今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定は 原油相場の動向を左右しそうだ。米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のニック・ティミラオス氏の記事を手がかりに、0.50%の大幅利下げ観測が再び強まっている。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長らは0.25%か、0.50%の利下げで判断に迷っているようだ。

 今週のFOMCを皮切りに金融緩和が始まる見通しであり、市場参加者は米金融当局者がどれだけハト派寄りなのか注目している。積極的な金融緩和が始まるならば、石油も含めて消費を刺激する可能性が高い。利下げ開始で、世界最大の石油消費国である米国の家計や企業は重い金利負担から解放されることになる。

 ただ、FRBが大幅な利下げを実施すると、抑制されているインフレ圧力が再び高まるリスクがある。金利コストの低下は消費を押し上げるほか、株式市場の上昇を促し、ドル安も伴うだろう。金融引き締め局面でも米株高は継続しており、株価がさらに高みを目指すかは不明だが、米利下げ開始を見据えてすでにドル売りは強まっているため、物価の上昇圧力はすでに高まりつつある。7月以降のドルインデックスは低下傾向にあり、年初来の低水準で推移している。

●0.25%か0.50%か、双方にリスクが存在

 米大幅利下げが必要であると思われる根拠は、求人件数の減少が示すように米雇用環境がすでに悪化しており、米景気の下振れが迫っている可能性があるためである。FRBの責務は物価の安定と雇用の最大化であり、雇用悪化の兆候を見過ごすわけにはいかないが、FRBが景気や雇用について過剰な危惧を示すと金融市場全体が震え上がり、株式市場の急落など余計な変動が生まれるリスクがある。大幅利下げという行為そのものから米経済の悪化が連想され、マーケットが混乱しかねない。原油相場でも大幅利下げが好感されない可能性はある。

 一方、米大幅利下げは思惑先行で余計な景気懸念を膨らませる可能性があるが、FRBが景気悪化に対して遅れを取っており、利下げ開始が後手に回っていると警戒されていることもあって、0.25%の利下げでは失望を招くかもしれない。物価に配慮し、慎重に金融緩和を開始しようとしても、金融市場が動揺し神経質に反応するリスクがある。

 結局のところ、最初の一歩としてなにが正解なのかいくら考えても不明である。FRBの判断を受け止めるしかないが、パウエル議長は昨年のクリスマス前にも利下げ開始を示唆しており、市場参加者をずいぶん待たせた。今回のパウエル議長の判断は信頼してもよいのだろうか。米金融当局者の物価・景気見通しを鵜呑みにするリスクは否定できず、どのような決定となっても、信頼感の欠如から落ち着かない反応となるかもしれない。特に、近年のFRBの物価見通しは当てにならない。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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