BS11 Research Memo(1):コンテンツ拡充による、非放送分野等へのマルチな展開が加速
■要約
日本BS放送<9414>は、無料のBSデジタルハイビジョン放送「BS11(ビーエス・イレブン)」を運営する独立系のBS放送局である。キー局系列に属さない独立系であることに加えて、無料放送という2つの特徴を持つ。独立系ならではの強みを生かし、全国のテレビ局及び制作会社との自由なコンテンツ制作・展開を実現している。
1. 2024年8月期第2四半期の業績概要
2024年8月期第2四半期連結業績は売上高が5,936百万円(前年同期比1.7%減)、営業利益927百万円(同16.4%減)、経常利益930百万円(同16.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益642百万円(同15.0%減)となった。計画値(売上高5,982百万円、営業利益826百万円、経常利益826百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益570百万円)に対して売上高は若干下回ったが、各利益は上回って着地した。タイム収入が営業活動による通販枠の拡充・強化により増加した一方で、スポット収入は新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)特需からの落ち込みにより通販スポットの広告が減少し、新規取引先開拓等の営業努力により純広告スポットが増加するも、減少分をカバーできずに減収となった。またその他収入は前年同期の人気アニメ作品の出資配当収入の反動で減収となった。利益面ではアニメコンテンツ等の強化・拡充を図る一方、番組関連費用や放送関連費用の効率的運用に努めたことにより、放送設備更新に伴う償却負担増をカバーし、各段階の利益において計画値を上回る実績を確保した。
2. 2024年8月期の業績見通し
2024年8月期の連結業績予想については、売上高12,600百万円(前期比1.5%増)、営業利益1,910百万円(同3.7%減)、経常利益1,910百万円(同5.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,318百万円(同4.9%減)と、期首計画を据え置いた。スポット収入は、コロナ禍特需からの落ち込みが予想される通販スポットの影響はあるものの、第2四半期までの営業活動の成果により、前期比5.1%減の予想を同4.1%減に見直した。タイム収入は同3.1%増とほぼ据え置きで、その他事業収入は同20.1%増から同16.1%増と増収幅を見直した。これは第2四半期までの実績が計画比減収となったためと考えられるが、それでも売上高合計では前期を上回る計画だ。
各利益については、通期で数パーセントの減益を見込む。2023年8月期に行ったスタジオ設備更新による償却負担に伴うもので、期初予想からの変更はない。売上高は増収、各利益は減益と慎重な計画に映るが、同社は計画に対しておおむね超過実績を示す傾向にあるうえ、見込んでいるのは数パーセントの減益であることからも、あくまで確度の高い最低ラインの計画であると弊社では考えている。同社としては通販関連の市況が弱含むなか、新規顧客開拓や既存顧客との取引増強、自社制作番組の販売や配信プラットフォームの活用等によって収益拡大に向けた取り組みを引き続き行うほか、適切な原価・費用のコントロールによって通期での計画達成を目指す考えである。
3. ファンのニーズを幅広く捉えたコンテンツのマルチユースの取り組みを評価
同社は見逃し配信「BS11オンデマンド」を、人気番組のアーカイブやオリジナルコンテンツ、ライブ配信等を視聴できる会員登録制視聴サイト「BS11+(プラス)」へ2022年7月にリニューアルし、一部コンテンツの有料配信もできるプラットフォームとして整備した。さらに2023年3月には、「すべての月額見放題プラン」(税込880円)と「ジャンルごと見放題プラン」(税込550円)の2つの課金プランを「見放題プラン」に統一し、価格も税込880円から税込550円へと引き下げた。これにより、無料トライアル期間からのスムーズな会員移行が促され、会員数は順調に増加しているようだ。また、配信プラットフォームの拡充として、「BS11」公式YouTubeチャンネル、FOD、U-NEXT等に加えて、2023年5月よりTVerでの見逃し配信を開始した。このほかにも番組関連グッズ等が購入できる「BS11」公式通販サイト「BS11SHOP」を開設、こうした取り組みがBS11のファン増加につながることが期待される。
■Key Points
・コンテンツのマルチユース等による非放送分野への展開を加速
・2024年8月期第2四半期はタイム収入が増加した一方、通販系スポットの落ち込みで減収となったが利益は計画を達成
・重点施策を新たに「Value 3」として推進
・配当性向40%程度を基準とした配当方針に変更
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
《HH》
提供:フィスコ