オートサーバー Research Memo(2):中古車流通市場の活性化を目指すテック企業(2)
■要約
3. 2023年12月期は会社予想を上回る増収増益で着地
オートサーバー<5589>の2023年12月期の業績は売上高が前期比9.0%増の5,846百万円、営業利益が同6.6%増の2,110百万円、経常利益が同5.9%増の2,084百万円、当期純利益が同7.8%増の1,301百万円だった。なお同社は2016年に実施したMBO時に計上したのれんを20年間の定額法により償却(年間236百万円)しており、のれん償却額の影響を除いた調整後経常利益(経常利益+のれん償却額)は同5.2%増の2,320百万円、調整後当期純利益(当期純利益+のれん償却額)は同6.5%増の1,538百万円だった。会社予想(2023年11月10日付で上方修正)を上回る増収増益で着地した。売上面は中古車流通台数の回復に加え、マーケティング強化などの施策も奏功して取引台数が順調に増加したほか、「オークション代行」の手数料改定も寄与した。コスト面では人件費、システム費、営業費などが増加したが、増収効果で吸収した。営業利益率は36.1%で同0.8ポイント低下、経常利益率は35.7%で同1.0ポイント低下したが、引き続き極めて高い水準を維持している。「ASNET」全体の取引台数は同4.8%増の228,173台で、内訳は「オークション代行」が同9.1%増の143,774台、「ASワンプラ」が同1.8%減の84,399台だった。「ASNET」全体では2021年の228,360台に次ぐ過去2番目に多い台数となり、市場を上回る成長が続いている。「オークション代行」は中古車流通台数の回復に伴い順調に増加した。「ASワンプラ」は、前期から続いた中古車供給不足や物価高騰に伴う小売の落ち込みなどの影響で第2四半期までが低調だったため、通期ベースでも減少となったが、2023年9月以降は回復基調となっている。
4. 2024年12月期は小幅増収増益予想、さらに上振れの可能性
2024年12月期の業績予想は、売上高が前期比3.6%増の6,054百万円、営業利益が同0.4%増の2,119百万円、経常利益が同1.3%増の2,111百万円、当期純利益が同2.2%増の1,330百万円としている。なお半期別では、売上高は上期3,119百万円で下期2,935百万円、営業利益は上期1,126百万円で下期993百万円を見込んでいる。オークション開催数の関係で上期の構成比が高くなっている。全体として小幅増収増益予想である。売上面は「ASNET」の新規会員獲得、掲載台数拡充、新サービス提供などの効果で取引台数の増加を見込んでいる。利益面は、BCP対策や情報セキュリティなどシステム関連費用の増加、採用強化や人的資本投資による人件費の増加、インフレ影響による経費の増加などにより販管費が増加するものの、増収効果で吸収する見込みだ。前提となる「ASNET」全体の取引台数は同1.7%増の232,035台を想定している。会社予想は中古車流通市場の不透明感を考慮して保守的だが、「ASNET」全体の月別取引台数(速報値)は2024年1月が前年同月比9.9%増、2月も同9.9%増と、想定を大幅に上回る好調なスタートを切っている。こうした点を勘案すれば、会社予想は上振れの可能性が高いものと弊社では考えている。
5. 「取引台数拡大×手数料単価UP」戦略を推進
同社の収益は基本的に「取引台数×手数料」で決定されるため、収益拡大に向けた成長戦略は「取引台数拡大×手数料単価UP」を基本に、「ASNET」の新規会員獲得や既存会員の利用拡大、取引1台当たりの手数料単価が大きい「ASワンプラ」比率の向上、取扱車種拡大や新たな取引形態の開発、安心して取引できるルールづくりや新サービスの開発、付帯サービスの収益化、国内中古車流通市場における「ASNET」関与率の拡大、「ASNET」の海外展開などを推進するとともに、コスト面ではDX推進による販管費抑制を推進する方針である。「ASNET」の魅力や利便性を向上させる具体的な取り組みとしては、「ASワンプラ」出品データの連携拡大や出品システムの改良、小売支援サービス強化に向けた付帯サービス「店頭商談NET」のマルチ展開、電子車検証活用などアプリによる中古車流通DXの推進、その他付帯サービスの拡充・収益化などを推進する。電子車検証を活用した新サービスについては2024年12月期中にリリースする計画である。この他にも「ASNET」の新規会員獲得や会員囲い込みに向けた付帯新サービスの開発を強化する方針である。
■Key Points
・中古車流通市場の活性化を目指し会員制BtoB中古車プラットフォーム「ASNET」を運営するテック企業
・会員業者の中古車オークション代行「オークション代行」と会員業者間取引仲介「ASワンプラ」が主力
・2023年12月期は会社予想を上回る増収増益で着地
・2024年12月期は小幅増収増益予想、さらに上振れの可能性
・成長戦略は「取引台数拡大×手数料単価UP」を推進
・高利益率のビジネスモデルを評価、さらなる成長戦略にも注目
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《SO》
提供:フィスコ