タナベ Research Memo(7):2024年3月期業績は売上高、営業利益で過去最高更新を狙う
■今後の見通し
1. 2024年3月期の業績見通し
タナベコンサルティンググループ<9644>の2024年3月期の連結業績は、売上高で前期比6.3%増の12,500百万円、営業利益で同6.8%増の1,230百万円、経常利益で同5.7%増の1,230百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同4.9%増の760百万円と3期連続の増収増益を見込む。人的資本投資やブランディング投資、デジタル投資を継続しつつも、売上高、営業利益で過去最高更新を目指す。
景気の先行きに関しては、ウクライナ情勢や米中の覇権争いなどが継続するなかで不透明感が強まっているものの、足元も前期に好調だったテーマを中心に受注は堅調に推移しているもようだ。特に人的資本経営に関するコンサルティングニーズは企業の規模を問わず旺盛で、市場環境としては追い風が吹いている状況とも言える。さらに、前期から本格的に取り組み始めた行政・公共分野では、マーケティングサイト「政府・公共・サービスコンサルティング」を立ち上げ、Webを通じたリード獲得を図っていくほか、専門人材の採用等による体制強化により、売上拡大に注力していく。コンサルティング領域としては、産業振興、「地域」創生、SDGs、DX、ブランディング、人材育成・活躍等の領域で、戦略策定支援から実行支援までニーズに合わせたソリューションを提供していく。同社では全国に10ヶ所の事業拠点を配置し、長年地域密着でコンサルティングサービスを提供してきた強みを生かして、早期に売上比率を3%の水準まで引き上げていく考えだ。
そのほか、2023年2月にグループ化したカーツメディアワークスとの連携によるブランディング&マーケティングやデジタル・DX領域での売上拡大も期待される。カーツメディアワークスが持つ戦略PR支援のノウハウや海外メディア向けプレスリリース配信サービス「Global PR Wire」を活用することで、グループシナジーをさらに高めていく。ブランディングを強化したい企業や、海外進出及び海外事業の拡大を目指す顧客企業に向けて、新たなコンサルティングサービスの提案が可能となり、グループ全体のシナジーによる収益貢献が期待できる。2024年3月期の売上計画は既存事業ベースだけで見ると実質横ばい水準の計画となっており、今後景気が急速に悪化するなど市場環境が急変するようなことがなければ、業績は上振れする可能性が高いと弊社では見ている。
なお、経営コンサルティング領域別の重点施策として、ストラテジー&ドメイン領域では、「中長期ビジョンの策定・推進」を軸に、大企業・上場企業向けの大型契約獲得を強化していくこと、「グローバル戦略」「ビジネスモデル革新」「ESG・SDGs」のコンサルティング機能の強化を図っていくことを挙げている。デジタル・DX領域では「DXビジョン&IT化構想の策定」コンサルティングを推進するほか、アライアンスネットワークを拡大し、業種別のプロフェツショナルDXサービスを拡充・強化していくことで年率2ケタ成長を目指していく。HR領域では、顧客企業の人的資本価値の向上を実現するトータルコンサルティングサービスを拡充していく。具体的には、賃金アップや生産性向上、ダイバーシティー&インクルージョンなど人的資本に関わる顧客企業の課題点を整理し、経営トップと十分議論したうえで最適解を提案していくことにしている。そのほか、経営人材を育成するトップマネジメントプログラムを中堅社員層や若手社員層まで広げ、顧客企業から好評を得ている「アカデミー企業内大学設立」を差別化戦略として提案していくことで受注拡大につなげていく。
ファイナンス・M&A領域では、「ホールディングス・グループ経営」「クロスボーダーM&A」を重点的に注力していくほか、顧客企業のサステナビリティ経営を実現する「企業価値ビジョン」コンサルティングも推進していく。また、中小企業の事業承継、M&A案件についてもグローウィン・パートナーズの知見を生かして積極的に進めていく考えだ。ブランディング&マーケティング領域では、「ブランド戦略の立案」から「現場における商品・サービスプロモーション支援」に至るまでの機能を強化していくほか、これらをつなぐ「戦略PR」コンサルティングをカーツメディアワークスと協業しながら国内外で推進していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ