アンジェス Research Memo(4):NF-κBデコイオリゴDNAは第2相臨床試験を日本で開始予定
■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向
2. NF-κBデコイオリゴDNA
NF-κBデコイオリゴDNAは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う転写因子となるタンパク質(NF-κB)に対する特異的な阻害剤となる。NF-κBがゲノムの特定の配列領域(炎症を引き起こすゲノム)に結合し、スイッチが入ることで痛みなどの炎症の原因となるタンパク質が生成されるが、NF-κBデコイオリゴDNAを体内に入れることで、炎症を引き起こすゲノムとNF-κBが結合しにくくなり、炎症の原因となるタンパク質の生成を抑制するメカニズムとなる。
現在は、椎間板性腰痛症を対象とした臨床開発を進めている。椎間板性腰痛症の患部にNF-κBデコイオリゴDNA(開発コードAMG0103)を注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに椎間板変性に対する進行抑制や修復を促す効果が期待される。新タイプの腰痛症治療薬として2018年2月より米国で後期第1相臨床試験(25症例、対象患者は32~70歳、平均年齢53.5歳)を実施し、全症例の投与後12ヶ月間におけるトップラインデータを2021年4月に発表した。
臨床試験はプラセボ対照無作為化二重盲検試験となり、「AMG0103」を椎間板内に単回注射投与し(0.3mg、3.0mg、10.0mgの3群に分類)、12ヶ月後までの経過観察を実施した。主要評価項目として忍容性と安全性を評価し、そのほか有効性の評価として腰痛の改善度、投与6ヶ月後の椎間板の高さの変化、患者自身の満足度の評価などを行った。発表資料によれば、12ヶ月間の観察期間を通じて重篤な有害事象は認められず高い安全性が確認されたこと、有効性についても10.0mg投与群では、投与後早期に腰痛が大幅に軽減し、腰痛の抑制効果も投与12ヶ月後まで継続したことが確認されたとしている。また、患者自身からも高い満足度が得られており、良好な結果が得られたものと同社では評価している。
治験責任医師からも、「AMG0103は素晴らしい安全性プロファイルを有し、12ヶ月にわたり腰痛を有意に軽減しており、慢性椎間板性腰痛症に苦しむ患者に対して画期的治療薬となる可能性があると考えています。さらに、腰痛の軽減に加えて、椎間板の高さを回復させる可能性が示唆されたことは注目に値します。」とのコメントを得ている。現在、慢性椎間板性腰痛症に関しては、一般療法としてステロイド注射(対処療法)が使用されることが多いが、同治療薬との比較においても同等以上の効果が得られたとしている。ステロイドが一時的な対処療法であるのに対してAMG0103は炎症を抑制する効果があり、その結果として腰痛の症状が改善することが理由と考えられる。
同社ではこの臨床試験結果を受けて、導出契約の交渉を進めるとともに今後の開発戦略を検討してきたが、2023年1月に国内で第2相臨床試験を実施する予定であることを発表した。国内にも慢性椎間板性腰痛の患者数は多く、事業性を見込めると判断した。既に医薬品医療機器総合機構(PMDA)との事前協議による治験プロトコルも固まったもようで、近々治験計画届を提出し2023年内にも開始できる見通しだ。有効性評価についての再現性を確認することが目的と見られる。なお、第2相臨床試験について塩野義製薬と協力に関する契約を締結している。価格面を考えると鎮痛効果だけでは既存治療法と差別化が難しいため、椎間板変性に対する進行抑制効果や修復促進効果などが確認できれば導出に向けて大きく前進するものと弊社では見ている。AMG0103の開発に成功すれば、慢性椎間板性腰痛症に使用される世界初の核酸医薬品となる可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《YI》
提供:フィスコ