エージェント・インシュアランス・グループ Research Memo(4):2022年12月期は損害保険が伸長し増収
■業績動向
1. 2022年12月期の業績概要
エージェント・インシュアランス・グループ<5836>の2022年12月期の連結業績は、営業収益3,267百万円(前期比12.5%増)、営業利益197百万円(同5.2%減)、経常利益187百万円(同14.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益112百万円(同27.6%減)となった。また、計画比では営業収益が1.1%減、営業利益が13.4%減、経常利益が11.8%減、親会社株主に帰属する当期純利益が16.7%減となった。営業利益率は同1.2ポイント低下の6.0%となったが、(1) 積極採用に伴う人件費の増加、(2) 新システムの機能追加による営業費用の増加、(3) 上場申請に伴う各種費用の計上、の3点が要因であった。ただし、2019年12月期は7.4%、2020年12月期は7.6%、2021年12月期は7.2%、2022年12月期は6.0%と安定した営業利益率を維持しており、懸念すべき内容ではない。
損害保険のストック型ビジネスを基盤にKPIは順調に拡大
2. KPIの状況
同社は損害保険のストック型ビジネスを基盤に、M&A及び事業承継によるマーケットの拡大(顧客数の拡大)及びアップセル・クロスセルを通じた事業規模拡大(取扱保険料の増加)を目指している。このため、(1) 社員数(コア社員、パートナー社員、勤務型代理店別)、(2) 取扱保険料(損害保険、生命保険別)、(3) 顧客数(個人、法人別)の3つをKPIとしている。なお、弊社ではこれらに加え(4) 合流件数(事業承継やM&Aを実施した件数)を独自にKPIとして見ている。
(1) 社員数
同社は社員をコア社員、パートナー社員、勤務型代理店の3つに分類している。コア社員には役員や正社員、嘱託社員、パートタイマー社員を含み、パートナー社員は同社と雇用関係にあり、コア社員と同様に同社が取り扱う生命保険商品及び損害保険商品を販売する社員を指す。勤務型代理店は個人代理店としての登録であるため、生命保険は複数の保険会社の取り扱いはできないが、損害保険は損害保険会社との委託契約書締結により複数社の商品を取り扱い、活動実績に応じて保険会社から同社が受け取る代理店手数料を基に、委託契約書に基づいた報酬割合を払う。2022年12月期は47件のM&A及び事業承継を実施した結果、パートナー社員20名、勤務型代理店3名が増加した。パートナー社員の多くが損害保険募集人であり、同社への合流を通じて損害保険のマーケット拡大が進む。同社は拡大した損害保険マーケットでアップセルやクロスセルを推進することで、スピード感を持った成長を実現している。なお、M&A及び事業承継の件数(47件)に対して社員数の増加(23名)が少ないが、契約のポートフォリオだけを買い取るケースがあったことと、退職したパートナー社員及び勤務型代理店があった(定年退職や承継を終えて退職するケース)ことによる。
(2) 取扱保険料
取扱保険料とは年度末時点で顧客から受け取り保有している保険料のことであり、単年度での取扱保険料の増加幅は翌年度の営業収益の増加に直結する。2022年12月期はアップセル・クロスセルを推進したことに加え、事業承継1件当たりの取扱保険料は拡大傾向にあることが寄与し、取扱保険料は前期比約20億円増の307億円(損害保険は同14億円増の175億円、生命保険は同5億円増の131億円)と大きく伸長した。2022年12月期の取扱保険料の増加が2023年12月期の国内事業の営業収益予想3,574百万円(前期比15.5%増)のベースとなっている。2023年12月期はさらなる伸長を目指しており、想定どおりに推移すれば2024年12月期の業績加速が期待できる。
(3) 顧客数
2022年12月期に実施した47件のM&A及び事業承継によりマーケットは順調に拡大し、顧客数は個人が前期比19.5%増の124,400人、法人が同16.1%増の10,800社と2ケタ成長となった。
(4) 合流件数
同社は合流件数が営業収益の拡大に直結することから、弊社は独自にKPIとした。年間合流件数は2019年12月期の77件をピークに、2020年12月期は65件、2021年12月期は54件、2022年12月期は47件と減少傾向にあるが、これは小規模代理店の事業承継が一巡し、規模が段階的に大型化していることが背景にある。なお、累計合流件数は484件(2022年12月期)となった。
財務内容は良好、自己資本比率も高い
3. 財務状況と経営指標
2022年12月期末の総資産は前期末比401百万円増加の1,904百万円となった。主な変動要因をみると、流動資産は現金及び預金が同379百万円増加し1,414百万円、固定資産は同4百万円増の490百万円とほぼ変動がなかった。
負債合計は前期末比69百万円増加の809百万円となった。主な変動要因を見ると、営業未払金の増加が63百万円あった一方で、有利子負債は2百万円増とほぼ変動がなかった。また、純資産合計は同331百万円増加の1,095百万円となった。
経営指標を見ると、収益性についてはROAで11.0%、ROEで12.1%、営業収益営業利益率で6.0%といずれも良好である。安全性については、自己資本比率が前期末の50.8%から57.5%に上昇、D/Eレシオは0.31倍から0.22倍へと低下した。ネットキャッシュ(現金及び預金-有利子負債)は333百万円から710百万円へ増加しており、財務内容は良好な状態と判断される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
《SI》
提供:フィスコ