【特集】一時停戦は米国・イランの疲弊を示唆、インフレ懸念強めるホルムズ逆封鎖 <コモディティ特集>
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)●米国の海峡封鎖は中国が原油の奪い合いに参加することを意味
要求を受け入れないイランに対して、米国はイランに対する海洋封鎖を開始した。イランの生命線である石油収入を断つことが狙いだろう。イランの港へ出入りするすべての国籍の船舶が対象であると発表されているが、イラン戦争が始まる前からイラン産原油はほぼ中国向けである。中国の董軍国防相は、イランとの貿易・エネルギー合意を尊重し、遵守すると述べ、米国に対して中国向けのタンカーに干渉しないよう要求した。世界のサプライチェーンの中心である中国は世界最大の原油輸入国であり、中国で石油不足が始まるようだと世界的なインフレ懸念が一段と強まるが、米国は中国向けのタンカーを拿捕するのだろうか。
イラン戦争が始まる前と比較して、ホルムズ海峡の封鎖や戦後補償も含めて協議する必要が生じたため、交渉の難易度は確実に上がっている。トランプ米大統領が大規模な地上戦を開始しても死傷者数が膨らむだけで、更なる軍事行動は米国にとってほとんど意味がないように見える。米国が開始したイランに対する海洋封鎖は、イランの石油収入を限定する可能性がある反面、イラン産原油を絶たれる中国石油企業が供給不足の原油の奪い合いにより積極的に参加することを意味し、石油価格の上昇に苦しむ米国にとって理想的な一手ではない。
●和平協議はイスラエルの干渉を排除できるかどうかが鍵
先週、米国とイランが2週間の一時停戦で合意したことは、双方がかなり疲弊していることを示唆する。イランは中東の米軍基地にミサイルやドローンを撃ち込み、領土や領空の使用を許可して米軍を支援する中東各国に大打撃を与えたほか、米国はイランのミサイル発射基地や石油関連施設、インフラを破壊するなど、被害の全容は不明であるが想像を絶する規模になっていると思われる。中東の惨状を認識したうえで、米軍が地上作戦を開始して勝敗を決するための衝突を開始するとは到底思えず、戦いの舞台は外交に戻るのではないか。イラン革命防衛隊(IRGC)やイスラエルのネタニヤフ政権はともかく、米国とイランの両政権の中心人物に大規模な軍事衝突を繰り返すだけの気概があるとは思えない。イスラエルのために米兵の命を差し出したトランプ米大統領はいずれ償う必要があり、精神的な負担は計り知れない。
米国とイランの協議の最中、ウィトコフ米特使やクシュナー氏を通じてイスラエルが介入し、バンス米副大統領が中心となった協議を妨げたとの報道がある。この報道の真偽は不明だが、イラン戦争に米国を引きずり出したことはイスラエルにとってこのうえない好機である。2週間の停戦期間内に米国とイランの再協議があるとしても、米国にイスラエルの干渉が続くことは避けられず、中東情勢は混沌としたままかもしれない。イスラエルの関与を排除できるかどうかが鍵だと思われる。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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