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【特集】山口曜一郎(ワイズ・アセット・デザイン)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―

 日米の株式相場は、上下動を繰り返しながら高い水準を維持している。日本では高市早苗首相が率いる自民党が衆院選で大勝し、株高が加速。日経平均株価は史上最高値を更新した。一方、米国株式市場ではAI(人工知能)が業務を代替するとの懸念を背景に、ソフトウェア関連企業の株価が下落し、その影響は日本にも及んでいる。イラン情勢の緊迫など世界情勢もさらに不安定さを増している。台湾有事を巡る高市首相の発言を受けた日本と中国の対立や米国のインフレ懸念も根強い。トランプ大統領が「就任から24時間以内に終わらせる」と豪語したロシア・ウクライナ戦争は収束のメドがつかず、イランを中心とした地政学的リスクも残る。

 世界の政治経済が混迷を深める中、アナリストやエコノミストなどの専門家は「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第46回は、ワイズ・アセット・デザイン(東京・新宿)の山口曜一郎代表に話を聞いた。

●山口 曜一郎(やまぐち よういちろう)
ワイズ・アセット・デザイン 代表
慶応義塾大学経済学部卒業、ロンドン大学修士課程(金融学)修了。元三井住友銀行チーフエコノミスト。1992年三井住友銀行(当時さくら銀行)に入行。営業、セールストレーダーなどを経たあと、20年以上にわたり、エコノミストとして経済・金融市場の調査・分析業務に従事。米国、英国、スイス、シンガポールで計16年の海外駐在経験があり、国際情勢に詳しい。帰国後、人々に資産形成の大切さを伝えたいとの想いから、個人向け資産形成業務の企画・運営に携わり、2022年に銀行を退職、起業。現在は、経済・金融市場分析、資産形成アドバイス、金融教育を柱として、研修・セミナー講師、実践プログラム主催、個別相談、原稿執筆、書籍監修などを展開している。
・ウェブサイト:https://ysassetdesign.com/
・Facebook勉強会グループ「よーよーの資産形成塾」:https://www.facebook.com/groups/535315267271726

山口曜一郎氏の予測 4つのポイント
(1) 半年後の日経平均株価は5万4000円程度
(2) 半年後のS&P500株価指数は6600ポイント程度
(3) 自民党の衆院選大勝で日本株の好調続くが、年央にターニングポイント
(4) 注目するセクターは宇宙開発や核融合、レアアース、防衛など

―― 衆院選では自民党が総定数の3分の2を超える議席を獲得しました。高市政権への政策期待もあり、特に日本の株式相場は堅調に推移しています。一方で米株式市場ではAI(人工知能)がソフトウェアサービスを代替するとの懸念も浮上しています。半年後(2026年7月末)の日米の株価水準をどう予測しますか。

山口:私は7月末の日経平均株価を5万4000円程度、S&P500を6600ポイント程度だと予測しています。衆院選の与党勝利を受けて、日本株高はしばらく続くでしょう。日経平均株価は一時的に6万円を超える可能性もあります。

 ただ、日経平均株価の予想PER(株価収益率)はすでに20倍超まで上昇しています。米国株ほど割高とはいえませんが、米国に異変があれば日本株も水準調整が入ってくるでしょう。年央前後に株高のターニングポイントを迎え、年末にかけて下落するとみています。

図1 日経平均株価(週足)
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―― 半年後には現在の株価水準から下落しているということですね。予測の背景を教えて下さい。

山口:ポイントは2つあります。日本株は米国株の動きに大きな影響を受けますので、米経済を中心に解説します。1つは、米国の企業利益の伸びが市場予想通りの高さを達成できるかです。もう1つは、期待通りの金融緩和がされ、グローバルなマネー供給の伸びが続くのかということです。これらが達成されれば日米株価は上昇し続け、そうでなければ下落します。私は早ければ年央、遅くとも年末か来年の早い時期に調整局面が来ると考えています。

―― 2つのポイントは達成できないと予測しているわけですね。

山口:達成は難しいでしょう。1つ目は、米景気です。今年前半は昨年のトランプ減税による税還付が米国株を下支えしますが、年後半はその効果が剥落する可能性があります。特に米国では高所得者や富裕層が景気を支えています。株高による資産効果が少なくなれば、これまでの「株高→消費増→株高」という循環が逆回転し始めるリスクがあります。

 2つ目は、市場が予想する26~27年の前年比15%前後という米企業の増益率が達成されないリスクがあることです。

 3つ目は、米金融政策の見通しです。消費デフレーターも予想からやや上振れしており、米政府の期待通りに利下げすることが難しくなる可能性があります。具体的には市場関係者は26年中に2回以上の利下げを見込んでいますが、1回にとどまる可能性があります。

―― 市場関係者の間では、FRB(米連邦準備理事会)のウォーシュ次期議長は「タカ派で利下げには慎重」との見方もあります。

山口:確かにウォーシュ氏は、FRBの理事時代に低金利政策の長期化を批判したことから、タカ派だと見られがちです。ただ、利下げには必ずしも反対でなく、ある程度、柔軟な姿勢の持ち主だと思います。むしろウォーシュ氏が慎重なのはFRBのバランスシートの拡大です。心配するとすれば、量的引き締め(QT: Quantitative Tightening)の方だと思います。FRBを中心とした世界の中央銀行の政策によってマネーストック(経済全体で流通しているお金の総量)が鈍れば、株価の押し下げ要因になります。

図2 マネーストック(M2)と株価の推移
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―― 今月に入って米AI開発新興のアンソロピックが新技術を公開し、業務ソフトウェアがAIに代替されるとの警戒から関連企業の株価が下落する場面がありました。

山口:アンソロピックの発表は、AIが企業の利益成長を奪う可能性を示唆しており、高い成長期待によって支えられている株価水準に修正を迫るものと言えます。今のところ、この動きは市場の一部にとどまっていますが、利益見通しへの懸念が一段と広がれば、相場全体が大きく調整することになるでしょう。

―― 足元ではハイテク株が売られて指数全体は下がっても、オールドエコノミー関連株にお金が流れるという現象が見られます。

山口:足元ではそうしたセクターローテーションも見られますが、本格的な調整が始まれば、最終的にはどのセクターも下落に転じると思います。

―― トランプ米政権は年明けにベネズエラの首都を急襲し、大統領夫妻を逮捕しました。米国はイランとも核問題を巡って緊迫した情勢にあり、ロシアのウクライナ侵略もなお続いています。地政学的リスクはさらに高まっており、株式相場にも影響を与えています。

山口:トランプ氏の頭にあるのは「ドンロー主義」(自身の名前の「ドナルド」と、西半球から敵対勢力を排除するモンロー主義を組み合わせた造語)です。行動原理は西半球から敵対勢力を排除し、鉱物などの資源を支配することです。トランプ氏がデンマーク自治領グリーンランドの領有に意欲を示しているのもドンロー主義の一環です。これらの動きにより、鉱物資源やレアアース(希土類)、防衛などに関連する銘柄には注目が集まるでしょう。世界秩序も不安定になるため、金価格も上昇しやすい環境が続きます。しかし、実体経済にはプラスになりませんから、株式市場全体にとってはマイナスです。

―― 最近は金価格が上がると株価も上がるという現象も起きています。

山口:本来はリスク資産である株の価格が下がると金が買われるのが一般的です。今は景気の見通しが明るいため株価が上がっており、地政学的リスクの高まりや通貨の信認低下により金価格も同時に上昇しています。どちらも割高な水準まで上昇しているとすれば、当面は連動する動きになるかもしれません。

―― 注目セクターや銘柄を教えてください。

山口:レアアース(希土類)、防衛関連はもちろんですが、中長期を見ると、宇宙開発や核融合といった分野にも注目です。高市政権が重点政策として掲げる分野でもあり、長期保有で投資のポートフォリオに入れた方が良いのではないかと思います。

(※聞き手は日高広太郎)


◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
【タイトル】
1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証1部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「B to B広報 最強の戦略術」(すばる舎)を出版。内外情勢調査会の講師も務め、YouTubeにて「【BIZ】ダイジェスト 今こそ中小企業もアピールが必要なワケ」が配信中。



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