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【市況】日本株と長期金利、政局動向、少子化の加速【フィリップ証券】

 日経平均株価は6月に入ってから、3万7500円近辺を中心として200日移動平均の3万7800円台が上値として意識されつつ、狭い横ばいの推移が続いている。6/13に「メジャーSQ」と呼ばれる指数先物とオプションの期近物の最終決済に関する特別清算値(SQ値)の算出日(SQ日)を控える。投資家はSQ日前日までにポジションを期先の限月へ乗り換える(ロールオーバー)か、手仕舞うかの選択を迫られるため、メジャーSQ週近辺は相場の転換点となりやすい。先物と現物に関する裁定取引の買い残(先物売り・現物買い)の動向が焦点となる中、日経平均の裁定買い残は5/30が1兆7475億円と、年初来ピークだった3/29の2兆4567億円から大幅に減少。ロールオーバーに伴うリスクの影響は小さくなっている。

 日経平均株価の構成銘柄ウェートを調整した加重平均ベースの6/5終値におけるPER(株価収益率)が15.43倍、同PBR(株価純資産倍率)が1.40倍の水準にある。過去4年間の平均値がそれぞれ14.41倍、1.29倍であることからすると割安ではない。

 増配や自社株買いの増加など株主還元の強化は、PERやPBRの上方シフトを正当化する要因となる。一方で、株価が将来の期待収益をその時々の金利で割り引いた「割引現在価値」の合計であるという考え方からすると、金利上昇は株価の上値を抑える要因となる。日本国債利回りは、超長期ゾーンで夏の参院選を前に財政拡張が意識されやすいことから上昇基調にある。長期・超長期金利が低下しない場合、日経平均株価の加重平均PERとPBRは過去の平均的水準へ回帰する可能性が高いように思われる。

 参院選をにらんだ与野党攻防の中、石破首相は、立憲民主党が内閣不信任決議案を提出した場合、採決前に衆院を解散する方向で検討に入ったと報道された。政界再編による「大連立」実現への思惑が強まれば、抜本的な政策実現への期待を背景に、海外投資家からの資金流入により、一時的にせよ割高な水準まで日経平均株価が押し上げられるシナリオが考えられるだろう。

 厚生労働省(人口動態統計)によれば、2024年に生まれた子どもの数(出生数)が国の推計よりも14年早く70万人を割り込んだ。少子化に伴う人手不足により、景気動向に関わらず省力化対応の設備投資需要が高まるだろう。財務省が6/2に発表した2025年1-3月の法人企業統計でも、製造業、非製造業を問わず、設備投資が堅調に伸びている。法人企業統計の経常利益では、製造業が前年同期比で減少した一方、非製造業は、建設業や不動産業で価格転嫁が進んだことや鉄道事業者による駅周辺の再開発が活発になったことを受けて増加している点が注目される。


■日本国債入札の基本的仕組み~欧米金利動向にも影響する重要イベント

 日本国債入札の動向が市場の不安心理を映すバロメーターとなり、ドイツ国債や米国債にも影響を及ぼすようになった。日本株の投資家にとっても日本国債入札の仕組みや市場との関係について基本事項を押さえておくことは重要だ。

 財務省が6/3に実施した10年国債入札では、応札倍率が3.66倍と前回(2.54倍)を上回り、2024年4月以来の高水準を記録。テールは1銭と前回(18銭)から大幅に縮小するなど「強い」結果となった。6/5に実施した30年国債入札は投資家の需要が集まらず「低調」な結果となった。応札倍率は2.92倍と、2023年12月以来の低水準となった。テールは49銭と、前回(30銭)から拡大した。夏の参院選を前に財政拡張が意識されていることが投資家の慎重姿勢につながったようだ。

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■出生数70万人割れ、出生率1.15~新型コロナ禍で減少した婚姻数も回復せず

 厚生労働省が6/4、2024年の人口動態統計を発表。日本生まれの日本人の子どもの数は前年比5.7%減の68万6061人で、1899年以降で初めて70万人を割った。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は同0.05ポイント低下の1.15と、3年連続で過去最低を更新。団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)の出産適齢期到来と晩婚化・晩産化の定着などを背景に、2005年の1.26を底に2015年の1.45まで回復したものの、2016年以降は減少が続いている。

 2024年の婚姻数は前年比2.2%増の48万5063組だったが、2年連続で50万組を下回り、戦後2番目に低い水準となった。親となる世代が今後減少することから、政府は「2030年代に入るまでが少子化反転のラストチャンス」と訴えている。

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参考銘柄


デジタルガレージ<4819>

・1995年にインターネット媒体広告等を目的として設立。電子決済手段を提供するプラットフォームソリューションを中心に、ロングタームインキュベーション、グローバル投資インキュベーションを展開。

・5/13発表の2025/3通期は、収益が前期比1.2%増の383億円、税引前利益が2Q(7-9月)に計上した投資先のBlackstreamの評価損により前期の62億円から▲102億円へ赤字転落。一時的要因を除く基礎事業利益は、プラットフォームソリューションの堅調な推移を受けて同3.6%増の43億円。

・2026/3通期会社計画は、前期売上比率59%のプラットフォームソリューションの税引前利益がQRコード決済拡大等を背景に前期比20%以上増加、年間普通配当が同4円増配の47円。アプリ決済独占を是正する「スマホソフトウェア競争促進法」が今年12月に施行される。同社の決済サービス「アプリペイ」は、アップル等の決済サービスを利用しない「アプリ外(外部)決済」として普及が見込まれる。


住友電気工業<5802>

・1897年に住友本店が日本製銅株式会社を買収し、大阪市北区に住友伸銅場を開設。環境エネルギー関連、情報通信関連、自動車関連、エレクトロニクス関連、産業資材関連の5部門を営む。

・5/13発表の2025/3通期は、売上高が前期比6.3%増の4兆6797億円、営業利益が同41.5%増の3206億円。セグメント別営業利益は、環境エネルギー関連(売上比率23%)が84%増の787億円、自動車関連(同58%)が19%増の1723億円。情報通信関連(同5%)は199億円の黒字へ転換した。

・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比3.8%減の4兆5000億円、営業利益が同14.2%減の2750億円、年間配当が同3円増配の100円。5/22開催の投資家向け説明会で、情報通信関連で生成AI(人工知能)拡大によりデータセンター事業者の投資が増加し、光デバイス等関連製品の需要拡大を想定の他、米エヌビディア<NVDA>が開発する電気集積回路と光学部品を単一パッケージ化する「CPO(Co-Packaged Optics)」で同社の採用開始の見通し。


IBJ<6071>

・2006年に婚活プラットフォームの開発・運営を目的として設立。加盟店事業(開業支援含む)、直営店事業(IBJメンバーズ、サンマリエ、ZWEIの3ブランド)、マッチング事業、ライフデザイン事業を営む。

・5/9発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比13.2%増の48億円、営業利益が同51.7%増の10億円。加盟店事業は、売上高が同9%増の9.1億円、事業利益が同3%増の6.0億円。直営店事業は、売上高が同8%増の23.0億円、事業利益が同24%増の5.8億円と堅調に推移した。

・通期会社計画は、売上高が前期比9.4%増の194億円、営業利益が同21.1%増の31億円、年間配当が同横ばいの8円。1Qは加盟店事業において結婚相談所への新規入会者数が前期比47%増、お見合い件数が同26%増。加盟店事業は2025年度より加盟金の引き上げを実施。直営店事業では1Qの入会者数が同13%増。自治体との協業による地方婚活支援拡大の追い風継続が期待される。


エリアリンク<8914>

・1995年に千葉県船橋市で設立。トランクルーム(レンタル収納スペース)関連事業を「ハローストレージ」ブランドで全国展開。ストレージ、土地権利整備、その他運用サービスの三事業を営む。

・4/30発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比9.3%増の75億円、営業利益が同11.3%増の15億円。土地権利整備事業が事業縮小の経営方針により42%減収、営業利益が60%減も、ストレージ事業は、売上高が同23%増の63億円、営業利益が同21%増の16.8億円。

・通期会社計画は、売上高が前期比5.3%増の260億円、営業利益が同9.0%増の53億円、株式分割考慮後の年間配当は同3.5円増配の48円。蓄積してきた自社の出店・顧客情報を基にしたデータ分析による出店精度向上、および出店現場の小型化が高稼働率に寄与。加えて、商品の認知度向上により成約数が拡大。2025年1-4月の累積出店数(6892室)は対年間計画の進捗率が46%。


※執筆日 2025年6月6日


フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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