【市況】戻り上昇から曲がり角へ~日米財務相会談、日米関税交渉【フィリップ証券】
日本株は、米中貿易摩擦の解消期待、米国との関税交渉進展期待を背景に、日経平均株価が4/7の年初来安値3万0792円から5/13の3万8494円まで戻り上昇を辿った。米中両国は、90日間の期間限定で5/14より、互いに課していた追加関税を115%引き下げた。また、米英は5/8、新たな貿易枠組みで合意した。市場の期待がある程度は現実のものとなった。株価や市場全体が売られ過ぎか買われ過ぎを判断するテクニカル指標のうち、一定期間の価格の変動幅全体に対する値上がり幅の割合を表す「相対力指数(RSI)」では、日経平均株価のRSI(14日間)が5/14終値で96まで上昇と、買われ過ぎの目処とされる70ラインを大幅に超えた。また、一定期間の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率を表す「騰落レシオ」では、東証プライム市場全体の25日間で見ると5/15が146.54と、買われ過ぎの目処とされる120を大幅に超えた。決算発表一巡後、短期的には更なる上を目指しにくいのが現実だろう。
5/20-23に開催されるG7財務相・中央銀行総裁会議で日米財務相会談による為替協議の有無が注目されるほか、赤沢経済再生相も第3回目となる日米関税交渉を行うために訪米を検討していると報道された。対米貿易黒字が問題となっている韓国で為替相場の協議が話題となったことから、同様の事情を抱える日本も円安是正への思惑が高まりやすい。ドル円相場は2023年12月、2024年9月、今年4月と、1ドル140円近辺までドル安円高が進んだ後にドル高円安へと反転する場面が3回あった。このような場合、1ドル140円近辺のドル買い円売りを想定したポジションが構築されやすいため、一旦1ドル140円を突き抜けてドル安円高が進むと、ストップロスなどを巻き込んで大幅にドル安円高が進む可能性があることに要注意だろう。参院選を7月に控える中、石破政権としても物価高対策の観点から円安是正は歓迎だろう。
日米関税交渉では、日本は自動車に課せられた25%の関税の撤廃を強く要望するも、米国は難色を示している。米国の造船業復興に向けた協力を行う「造船黄金計画」の提案や、日本車メーカーが米国で生産する自動車を日本に逆輸入して米国の対日貿易赤字是正につなげる案等が政府内で検討されている。日本株式市場の中でも自動車株への売りが加速しているのは、関税交渉が不調に終わるのではないかとの懸念が背景にありそうだ。
内需関連の円高メリット銘柄は、直近のドル高円安により押し目買いの好機が来ているとみられる。米中貿易摩擦により、小麦など穀物の国際相場は軟調に推移していることから、製粉会社や飲食品チェーンなどはコスト低下の恩恵をうけやすい。また、原油価格の落ち着きにより、空運・陸運銘柄も好機だろう。
■日本国債利回り曲線スティープ化~超長期ゾーンは財政支出拡大を予想
日本国債市場で超長期ゾーンの利回り上昇が加速し、利回り曲線(イールドカーブ)も右肩上がりが急になるスティープ化が進んでいる。国内生命保険会社は2025年からの新たな資本規制への対応のため金利水準にかかわらず超長期債を積み増してきたが、その対応が一巡した。足元では超長期債の売買高全体(債券ディーラーを除く)に占める海外勢の割合が5割を占めている。
海外勢の多くは日本の財政悪化リスクを背景に一段の金利上昇(債券価格下落)を見込む。一方、日本が大規模な対外純債権国であるためリスク回避時に投資資金が国内回帰しやすいこと、および保有債券の残存期間が短くなることで利回りが低下する「ロールダウン効果」を見込んで日本国債に着目する向きもある。

参考銘柄
NJS<2325>
・1951年に現・日本ヒューム<5262>の子会社として設立。日本ヒュームが約34%の株式保有。国内外の上水道・下水道および環境等水と環境に関連する様々なニーズに応えるソリューションを提供。
・5/14発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比5.9%増の88億円、営業利益が同20.6%増の32億円。受注高が同47.1%増の38億円。老朽化対策と災害強靭化に対応したインフラの再構築に向け、管理施設・処理施設等の劣化調査・診断、改築更新計画・設計等が伸長した。
・通期会社計画を上方修正。カスタマーサービス事業の強化を目的として4/1付けでCDCアクアサービス社を完全子会社化したことを受け、売上高を前期比10.6%増の250億円(従来計画236億円)、営業利益を同1.9%増の30.5億円(同30億円)とした。年間配当は同5円増配の100円で従来計画通り。道路陥没事故などインフラ老朽化が社会問題となる中、災害対策需要の拡大が見込まれる。
ファナック<6954>
・1972年に富士通<6702>からNC(数値制御)部門が分離独立。工場自動化(FA)総合サプライヤーとしてCNCシステム技術を基盤に、レーザ、ロボット、ロボマシンによる自動化生産システムを扱う。
・4/23発表の2025/3通期は、売上高が前期比0.2%増の7971億円、営業利益が同11.9%増の1588億円。ロボット部門(売上比率41%)が中国と欧米の低調な推移が響き14%減収の一方、FA部門(同24%)が8%増収、ロボマシン部門(同18%)が33%増収、サービス部門(同17%)が4%増収だった。
・2026/3通期会社計画は、現時点で合理的に算定できないとして非開示。同社は2台のアーム型ロボットを組み合わせた遠隔操作システムを開発し、8月出荷予定。アームロボットや付属のセンサーを通じ、遠くの現場でも力の具合などを遅れなく正確に手元で感じて伝えられることから様々な作業に広く使えるとしている。先端半導体がヒト型ロボットへ導入される時代の潮流は同社へ追い風だ。
鴻池運輸<9025>
・1880年に鴻池忠治郎が大阪で創業した総合物流会社。様々な業種・業態で業務請負を行う「複合ソリューション」、定温・一般物流の「国内物流」、国内外の海上・航空貨物の「国際物流」を営む。
・5/9発表の2025/3通期は、売上高が前期比9.5%増の3449億円、営業利益が同28.6%増の213億円。複合ソリューション事業(売上比率63%)は7%増収、セグメント利益が183%増の205億円。空港関連での取扱量増加に加え、機材大型化による収受単価上昇や業務効率化が業績に寄与した。
・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比6.4%増の3670億円、営業利益が同2.9%増の220億円、年間配当が同14円増配の110円。同社はインドの事業展開を強化。2024年6月にインド医療器材滅菌会社の株式を取得。インドでの鉄道コンテナ輸送事業拡大のため、2024年11月より鉄道コンテナ輸送用車両9編成を投入。2025年1月にインド国営の鉄鋼スラグ処理会社を完全子会社化。
dely<299A> ※東証グロース上場
・2014年設立。調理工程を紹介する料理動画プラットフォーム「クラシル」、買い物サポートアプリ「クラシルリワード」、ライフスタイルメディア「TRILL」、ライバーマジメント事務所「LIVEwith」等を運営する。
・5/1発表の2025/3通期は、売上高が前期比32.4%増の131億円、営業利益が同13.8%増の26億円。事業別売上高は、広告収益のメディア事業が2%増の75億円、成果報酬・ストック型収益の購買事業が5.2倍の32億円。クラシルリワード関連で小売企業や食品飲料メーカーとの取引深耕が奏功。
・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比30.8%増の171億円、営業利益が同26.7%増の33億円、年間配当は無配。消費者の節約意識が高まる中、自炊をサポートするクラシル、およびクラシルリワードを通じた購買・ポイント獲得のライフスタイルが普及。4Q(1-3月)は、ウエブとアプリ合計MAU(平均月間ユニークユーザー数)は4100万人、クラシル国内認知度が58%(うち女性が76%)。
※執筆日 2025年5月16日
※フィリップ証券より提供されたレポートを掲載しています。
株探ニュース
5/20-23に開催されるG7財務相・中央銀行総裁会議で日米財務相会談による為替協議の有無が注目されるほか、赤沢経済再生相も第3回目となる日米関税交渉を行うために訪米を検討していると報道された。対米貿易黒字が問題となっている韓国で為替相場の協議が話題となったことから、同様の事情を抱える日本も円安是正への思惑が高まりやすい。ドル円相場は2023年12月、2024年9月、今年4月と、1ドル140円近辺までドル安円高が進んだ後にドル高円安へと反転する場面が3回あった。このような場合、1ドル140円近辺のドル買い円売りを想定したポジションが構築されやすいため、一旦1ドル140円を突き抜けてドル安円高が進むと、ストップロスなどを巻き込んで大幅にドル安円高が進む可能性があることに要注意だろう。参院選を7月に控える中、石破政権としても物価高対策の観点から円安是正は歓迎だろう。
日米関税交渉では、日本は自動車に課せられた25%の関税の撤廃を強く要望するも、米国は難色を示している。米国の造船業復興に向けた協力を行う「造船黄金計画」の提案や、日本車メーカーが米国で生産する自動車を日本に逆輸入して米国の対日貿易赤字是正につなげる案等が政府内で検討されている。日本株式市場の中でも自動車株への売りが加速しているのは、関税交渉が不調に終わるのではないかとの懸念が背景にありそうだ。
内需関連の円高メリット銘柄は、直近のドル高円安により押し目買いの好機が来ているとみられる。米中貿易摩擦により、小麦など穀物の国際相場は軟調に推移していることから、製粉会社や飲食品チェーンなどはコスト低下の恩恵をうけやすい。また、原油価格の落ち着きにより、空運・陸運銘柄も好機だろう。
■日本国債利回り曲線スティープ化~超長期ゾーンは財政支出拡大を予想
日本国債市場で超長期ゾーンの利回り上昇が加速し、利回り曲線(イールドカーブ)も右肩上がりが急になるスティープ化が進んでいる。国内生命保険会社は2025年からの新たな資本規制への対応のため金利水準にかかわらず超長期債を積み増してきたが、その対応が一巡した。足元では超長期債の売買高全体(債券ディーラーを除く)に占める海外勢の割合が5割を占めている。
海外勢の多くは日本の財政悪化リスクを背景に一段の金利上昇(債券価格下落)を見込む。一方、日本が大規模な対外純債権国であるためリスク回避時に投資資金が国内回帰しやすいこと、および保有債券の残存期間が短くなることで利回りが低下する「ロールダウン効果」を見込んで日本国債に着目する向きもある。

参考銘柄
NJS<2325>
・1951年に現・日本ヒューム<5262>の子会社として設立。日本ヒュームが約34%の株式保有。国内外の上水道・下水道および環境等水と環境に関連する様々なニーズに応えるソリューションを提供。
・5/14発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比5.9%増の88億円、営業利益が同20.6%増の32億円。受注高が同47.1%増の38億円。老朽化対策と災害強靭化に対応したインフラの再構築に向け、管理施設・処理施設等の劣化調査・診断、改築更新計画・設計等が伸長した。
・通期会社計画を上方修正。カスタマーサービス事業の強化を目的として4/1付けでCDCアクアサービス社を完全子会社化したことを受け、売上高を前期比10.6%増の250億円(従来計画236億円)、営業利益を同1.9%増の30.5億円(同30億円)とした。年間配当は同5円増配の100円で従来計画通り。道路陥没事故などインフラ老朽化が社会問題となる中、災害対策需要の拡大が見込まれる。
ファナック<6954>
・1972年に富士通<6702>からNC(数値制御)部門が分離独立。工場自動化(FA)総合サプライヤーとしてCNCシステム技術を基盤に、レーザ、ロボット、ロボマシンによる自動化生産システムを扱う。
・4/23発表の2025/3通期は、売上高が前期比0.2%増の7971億円、営業利益が同11.9%増の1588億円。ロボット部門(売上比率41%)が中国と欧米の低調な推移が響き14%減収の一方、FA部門(同24%)が8%増収、ロボマシン部門(同18%)が33%増収、サービス部門(同17%)が4%増収だった。
・2026/3通期会社計画は、現時点で合理的に算定できないとして非開示。同社は2台のアーム型ロボットを組み合わせた遠隔操作システムを開発し、8月出荷予定。アームロボットや付属のセンサーを通じ、遠くの現場でも力の具合などを遅れなく正確に手元で感じて伝えられることから様々な作業に広く使えるとしている。先端半導体がヒト型ロボットへ導入される時代の潮流は同社へ追い風だ。
鴻池運輸<9025>
・1880年に鴻池忠治郎が大阪で創業した総合物流会社。様々な業種・業態で業務請負を行う「複合ソリューション」、定温・一般物流の「国内物流」、国内外の海上・航空貨物の「国際物流」を営む。
・5/9発表の2025/3通期は、売上高が前期比9.5%増の3449億円、営業利益が同28.6%増の213億円。複合ソリューション事業(売上比率63%)は7%増収、セグメント利益が183%増の205億円。空港関連での取扱量増加に加え、機材大型化による収受単価上昇や業務効率化が業績に寄与した。
・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比6.4%増の3670億円、営業利益が同2.9%増の220億円、年間配当が同14円増配の110円。同社はインドの事業展開を強化。2024年6月にインド医療器材滅菌会社の株式を取得。インドでの鉄道コンテナ輸送事業拡大のため、2024年11月より鉄道コンテナ輸送用車両9編成を投入。2025年1月にインド国営の鉄鋼スラグ処理会社を完全子会社化。
dely<299A> ※東証グロース上場
・2014年設立。調理工程を紹介する料理動画プラットフォーム「クラシル」、買い物サポートアプリ「クラシルリワード」、ライフスタイルメディア「TRILL」、ライバーマジメント事務所「LIVEwith」等を運営する。
・5/1発表の2025/3通期は、売上高が前期比32.4%増の131億円、営業利益が同13.8%増の26億円。事業別売上高は、広告収益のメディア事業が2%増の75億円、成果報酬・ストック型収益の購買事業が5.2倍の32億円。クラシルリワード関連で小売企業や食品飲料メーカーとの取引深耕が奏功。
・2026/3通期会社計画は、売上高が前期比30.8%増の171億円、営業利益が同26.7%増の33億円、年間配当は無配。消費者の節約意識が高まる中、自炊をサポートするクラシル、およびクラシルリワードを通じた購買・ポイント獲得のライフスタイルが普及。4Q(1-3月)は、ウエブとアプリ合計MAU(平均月間ユニークユーザー数)は4100万人、クラシル国内認知度が58%(うち女性が76%)。
※執筆日 2025年5月16日
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当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得る場合があります。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
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