【特集】プラチナはレンジ内で堅調、貿易摩擦の緩和期待や米国売りが支援 <コモディティ特集>

米英の貿易合意や米中の関税引き下げ合意を受けて貿易摩擦の緩和期待が高まった。米国は日本やインド、韓国、ベトナムなどとも協議を進めており、協議の行方を確認したい。ただ、米英の貿易合意は包括的な合意にはならなかった。また、米中は相互に発動した関税率を115%ポイント引き下げることで合意したが、上乗せ分の90日間の停止や経済・貿易関係に関する協議メカニズムの構築で引き続き交渉の余地が残っている。
中国の装飾品メーカーは関税30%なら注文が入るとみているが、生産は遅れており、10月31日のハロウィーンには間に合わない可能性があるという。また、トランプ米大統領の予測不能な動きに対する懸念も残っている。一方、4月の米小売売上高は前月比0.1%増と前月から伸びが鈍化した。米関税措置発表前にみられた自動車購入前倒しの動きが一服した。5月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値で1年先の期待インフレ率は7.3%と1981年11月以来の高水準となり、関税引き上げによるインフレ懸念が強く、景気減速につながるようなら、プラチナの上値を抑える要因になるとみられる。
米格付け会社ムーディーズ・レーティングスは、米国債の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に1段階引き下げた。米国の債務と財政赤字の急増が背景にある。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングが既に引き下げており、ムーディーズは米金融大手JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴの長期信用格付けも引き下げた。米下院予算委員会が18日、トランプ米大統領が掲げる減税策を盛り込んだ法案を可決したが、財政赤字は引き続き拡大するとみられている。米国売りが続くようなら、金主導でプラチナも上昇する可能性がある。ただ、株安で景気減速懸念が強まると、上値を抑える要因になるとみられる。
●WPICは3年連続の供給不足見通し
ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によると、2025年のプラチナは30トンの供給不足となり、3年連続の供給不足が見込まれた。前回見通しの26トンから不足幅が拡大した。トレバー・レイモンドCEOは、「今日の地政学がもたらす不確実性とは無関係に、プラチナ市場は構造的な不足に陥っている。米政府の関税政策に対する新たなアプローチが実施され始めても、プラチナの多様な需要はかなりの底堅さを維持すると考えられる。同時にプラチナ鉱山の供給が引き続き下振れリスクに直面していることも広く認識されている」と述べた。供給不足見通しはプラチナの支援要因だが、2024年は1100ドルで上値を抑えられており、需要が大幅に増加することがなければレンジ相場が継続するとみられる。
●プラチナETFから投資資金が流出
プラチナETF(上場投信)残高は5月20日の米国で32.48トン(3月末33.36トン)、19日の英国で19.23トン(同18.94トン)、南アフリカで10.73トン(同10.59トン)となった。合計で0.45トン減少した。米国と各国の貿易協議の結果が待たれるなか、投資資金が流出した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月13日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは9316枚(前週9510枚)となった。貿易摩擦激化に対する懸念を受けて4月8日に794枚売り越しとなったのち、協議開始を受けて29日に9962枚買い越しとなったが、戻り場面で利食い売りが出た。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース