【特集】OPECプラスは原油安誘導を継続へ、サウジが生産割当不正国に警告<コモディティ特集>

石油輸出国機構(OPEC)プラスで自主減産を実施している8カ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は5月に続き6月も自主減産の縮小ペースを加速させることで合意した。6月の増産幅は日量41万1000バレルと、5月の増産幅とほぼ同水準。
サウジアラビアやロシアを中心としたOPECプラスのうち8カ国は4月から日量220万バレルの自主減産の巻き戻しを開始し、増産の前倒しによって 原油安を誘導している。米中双方は敵対的な関税を大幅に引き下げたが、トランプ米政権の不可解な経済政策によって世界的な景気見通しは依然として悪く、供給過剰懸念が高まっているなかでも増産にためらいはない。自主減産の解消を急ぐことによる原油安で生産割当を巡る不正を繰り返してきたイラクやカザフスタンを罰する狙いがあるようだ。協調性の乏しい産油国が生産枠を守ることができないならば、7月も増産幅が上振れする可能性があると伝わっている。
●不正常連国が態度改めねば、7月も自主減産巻き戻しで合意か
OPECプラスが率先して原油相場を圧迫しているものの、OPECプラス内部の産油国から不満はほとんど聞こえてこない。産油国の歳入は間違いなく目減りしているが、怨嗟の声はまるでなく、驚くほど静かであることに驚く。ただ、産油国の舵取り役であるサウジアラビアが怒っていることはおそらく確かである。
昨年10月の米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相が生産割当で不正する国に対して、1バレル=50ドルまで下落する可能性があると警告している。OPECプラスで協調する産油国に対し、サウジは価格戦争を仕掛けると事前に通告していた。
アブドルアジズ・エネルギー相はこの警告に基づいて原油相場を圧迫していると思われる。イラクやカザフスタンに怒り心頭であると判断するのが妥当だろう。世界最大のカルテルであるOPECプラスの規律を整える意味もあり、サウジは原油相場を下落させて意図的に波風を立てることに遠慮はないようだ。サウジは攻撃手段として原油相場をたびたび利用する。サウジの意図が明らかであることから、OPECプラスの産油国は原油安に不満をあらわにすることを控えていると思われる。
生産割当不正の常連国はこの警告を真摯に受け止めるのだろうか。イラクやカザフスタンが口先だけの態度を改めなければ、7月も自主減産の急激な巻き戻しが合意に至るだろう。カザフスタンのエネルギー相は原油の生産水準について「国益に従ってのみ行動する」と発言した経緯があり、注目すべきはカザフスタンに反省の色がみられるかどうかだと思われる。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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