【市況】【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】─歴史的波乱の2025年、後半相場の行方は?!

「歴史的波乱の2025年、後半相場の行方は?!」
●懸念材料の織り込み進展、日経平均のEPS切り上がりが焦点に
2025年後半の東京株市場は、引き続きトランプ政権の関税政策が懸念材料となる。下値不安は残るものの、徐々に織り込みが進む展開を想定する。12月までの日経平均株価の予想レンジは3万4500円~3万9500円。関税問題の行方次第で変動率の大きい展開を予想する。国内では7月に参議院議員選挙が行われる。少数与党の自民・公明党の動向によっては、国内政局が流動化する可能性にも留意したい。
トランプ大統領は4月9日に多数の国に対して相互関税の上乗せ分の適用を90日間停止し、ベースライン関税の10%を適用すると発表した。日本には自動車などに追加関税25%が課されている。日本政府は米国と個別に協議を行っているさなかで、その行方が最大の関心事となっている。遅くとも、90日後となる7月上旬には道筋が見えてくる公算が大きい。
IMF(国際通貨基金)は4月22日に、25年の世界経済の成長率見通しを1月時点の予測から0.5ポイント下方修正し2.8%としている。トランプ関税が経済に影響を与えてきている証左だ。米国は1.8%(前回比0.9%下方修正)、日本は0.6%(同0.5%下方修正)となる見通し。景況感の悪化が株価の上値を抑える要因となりそうだ。
5月中旬にピークを迎える3月期決算企業の決算発表では、26年3月期について慎重な見通しを示す企業が増加する可能性が高いとみられたが、序盤ではニデック <6594> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、NEC <6701> [東証P]などが前向きな内容を示し安心感を誘っている。また、JR東海 <9022> [東証P]、第一三共 <4568> [東証P]、信越化学工業 <4063> [東証P]、アドバンテスト <6857> [東証P]など自社株買いを発表する企業が多いことも特徴だ。当初懸念したほどではなさそうな出足だ。決算発表の集中期間直前の4月23日時点での日経平均株価の1株利益(EPS)は2460円であり、どこまで切り上がるかで上値の余地も広がる可能性がある。
●国策の追い風吹くサイバーセキュリティ関連のほか、マリコンなどに注目
物色は当面、関税問題など外部環境に左右されにくいセクターやテーマが軸になりそうだ。
サイバーセキュリティに対する注目度が再度高まっている。サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」を導入するための法案が、4月8日に衆議院本会議で与党の賛成多数で可決され、参議院に送られており、今国会内で成立する見通しとなっている。サイバー攻撃による被害が大きく、今後は国防にもかかわることなどが背景にある。証券会社で顧客の口座が乗っ取られ、株式を勝手に売買されるケースが頻発している。フィッシングと呼ばれる手口を使ったとみられるが、これも一種のサイバー攻撃といえる。
独立系のサーバーセキュリティ専業のFFRIセキュリティ <3692> [東証G]は防衛省および自衛隊、防衛産業企業向け国家安全保障関連のセキュリティサービス案件を受託。グローバルセキュリティエキスパート <4417> [東証G]は情報通信ネットワークを防御するサイバーセキュリティの専門企業で、脆弱性診断にも強みがある。サイバーセキュリティクラウド <4493> [東証G]はAI(人工知能)技術を活用したWebセキュリティサービス「攻撃遮断くん」の提供が主力。ネットワークセキュリティ事業とデータセキュリティ事業に展開する網屋 <4258> [東証G]にも妙味がある。
内需ではマリコン(海洋土木)に買い安心感がある。クルーズ船の寄港、 洋上風力、防災・減災などには海底を深くする、岸壁を保護するなどの工事において、マリコンのビジネスチャンスが見込まれるためだ。マリコン最大手であり、風力発電分野では作業船として使われるSEP船(自動昇降式作業台船)を2隻保有している五洋建設 <1893> [東証P]、浮体式洋上風力に展開する東洋建設 <1890> [東証P]のほか、東亜建設工業 <1885> [東証P]、若築建設 <1888> [東証P]、不動テトラ <1813> [東証P]など。
また、景気鈍化の一方で物価の上昇が継続すれば、「節約消費」に関心が向かう。業界再編の思惑もあるドラッグストア業界が注目される。ドラッグストアは一般的に利益率が高い一般用医薬品(大衆薬)で稼いだ利益を原資として、日用品や化粧品、食品などをより低価格で販売できる。調剤薬局併設店では、薬価(公定価格)が決まっており、値崩れしない処方薬でも稼ぐことができる。
都市型ドラッグストアのマツキヨココカラ&カンパニー <3088> [東証P]、九州地盤のコスモス薬品 <3349> [東証P]、調剤薬局併設のスギホールディングス <7649> [東証P]、首都圏軸のサンドラッグ <9989> [東証P]、北陸に強いクスリのアオキホールディングス <3549> [東証P] などは業績に安心感がありそうだ。
一方、物色の圏外となって久しい半導体関連だが、AIデータセンターの先行き鈍化などの悪材料は相当程度織り込まれている。一方、自動運転や2足歩行ロボット、空飛ぶクルマなど、AI半導体をはじめとして先端半導体の需要が伸びていくことは既定路線だ。米中貿易戦争が継続しても、基本的な流れは変わることはないだろう。後工程のアドバンテスト <6857> [東証P]、ディスコ <6146> [東証P]、前工程の東京エレクトロン <8035> [東証P]、SCREENホールディングス <7735> [東証P]などの主力株のさらなる押し目は、中長期目線で拾い場となりそうだ。決算もおおむね良好だった。
AIデータセンターを巡っては、マイクロソフト<MSFT>が先の決算で一部の設備投資を抑えるとの懸念を払しょくした格好となった。光ファイバーのフジクラ <5803> [東証P]、部材のMARUWA <5344> [東証P]、日東紡績 <3110> [東証P]などにも関心を払っておきたい。
(2025年5月2日 記/次回は6月1日 配信予定)
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