【特集】株価10倍化が2度の霞ヶ関C、3度目はなるのか
~株探プレミアム・レポート~霞ヶ関C 最終回
・前回記事「上場5年で利益はダブル・テンバガー、霞ヶ関Cのその先」を見る
・本コラムの記事一覧
前年同期から営業利益は4.6倍、当期純利益は8.9倍――。
霞ヶ関キャピタル<3498>の2025年8月期1Q(第1四半期)決算は、利益が大きく伸長したにもかかわらず、同社株の上値は重い状況だ。
発表翌日の今年1月15日の終値は、前日比▲7%の1万3540円に沈んだ(下のチャート)。株価にモメンタム(騰勢)が欠ける状況となっているのは、昨秋から続く主に需給面からの2つの懸念だ。
1つは、日銀の追加利上げに対する警戒感だ。業績の成長に有利子負債の拡大がセットになる事業構造の同社にとって、利上げはネガティブ視されやすい。
もう1つは、昨秋のCB(転換社債)の発行だ。24年10月17日に発表すると、 EPS(1株当たり当期純利益)の希薄化懸念から下落基調で推移した。昨年12月半ばから反発に転じているものの、週足ベースで見ると、昨春頃からやや大きめのボックス圏で推移する格好だ。
ただセンチメント(投資家心理)は揺れ動いているが、業績のモメンタムに衰えは見られない。29年8月期までの中期経営計画では、最終年度の純利益は500億円と、24年8月期の50億円から10倍に拡大する見込みだ。
中計達成の確信が高まれば、株価は足元の3倍を超える水準の「5万円も視野に入る」と、大和証券の増宮守アナリストは分析する。時価総額は足元の1500億円から5000億円に膨らむ計算だ。
同社株が上値を切り上げていく鍵は、どこにあるのか。
■霞ヶ関Cの日足チャート(2024年9月末~)

「株価5万円」の根拠は?
まず、増宮氏が株探の取材で「株価5万円」としたのは、次の計算式からだ。29年8月期の予想EPSを5000円とし、これに予想PER10倍を掛けたものだ。
EPSを5000円としたのは、29年8月期の利益計画を、やや上振れる前提だ。増宮氏は会社計画を慎重に見ても、EPSは4418円になると想定。これを上振れるとして、5000円を前提とした。
PERの10倍は、直近の最低水準を参考にした。同社の足元のPERは14倍台で推移するが、24年12月には一時11倍と、10倍前後に低下した(下)。
ただし、同社の成長性を鑑みれば「PERは、足元のTOPIXの15倍水準を上回って推移しても不思議ではない」と増宮氏は言う。となると株価は、足元の1万4000~1万5000円を起点にすると、5倍程度の7万5000円まで評価されることになる。
■『株探プレミアム』で確認できる霞ヶ関CのストリカルPER(日足ベース、2023年末~)

利益成長は、需給懸念の縮小にも寄与
同社株の動向を占ううえで、ポイントの1つが「純利益」になる。
純利益が膨らみ、自己資本に厚みが生まれれば銀行借り入れが使いやすくなり、エクイティファイナンス(株式発行による資金調達)による需給悪化懸念で株価の上値が重くなる可能性が低くなるからだ。
25年8月期の予想純利益は、会社計画ベースで前期から2倍の100億円となっている。今期以降も、純利益100億円超えの状況が続けば、足元で約280億円となる自己資本に厚みが増して、自己資本比率の向上が見込める。
同社・管理本部の廣瀬一成取締役も「自己資本比率」の向上は、KPI(重要業績評価指標)の1つという。
同社は、2023年10月に東証グロース市場からプライム市場に区分変更してからエクイティファイナンスを3回実施し、計350億円ほど調達している(下の表)。いずれも発表後は株価を下げている。
■霞ヶ関Cのエクイティファイナンスの事例、発表翌日の株価騰落率
出所:同社IR資料、株探。注:▲はマイナス
度重なる資本市場からの調達は、自己資本比率の低さなどから銀行借り入れによる調達に一定の制約があったため。これまで、同社の自己資本比率は20~30%台で推移していた。
しかし、純利益「100億円超え」が安定すれば、
→金融機関から借り入れ
→開発用地の取得拡大(≒棚卸資産の拡大)
→利益拡大
→自己資本比率の向上
→同借り入れの拡大
――と、間接金融での調達を活用した成長が軌道に乗る。
同社の廣瀬取締役は、「純利益が100億、150億円の水準に達すれば、エクイティファイナンスなど直接金融による調達が常態化することはなくなるだろう」との見通しを示している。
■霞ヶ関Cの廣瀬一成取締役

「売上高」の伸びより、重要なもの
では、霞ヶ関Cの純利益が計画通り拡大していくかを見極めていく際に、トップライン(売上高)の伸びは重要なのか。
大和証券の増宮氏は、同社の売上高の状況は評価に加えていないとする。取引先との関係から、売上高のみ積み上がるケースもあるからだ。その一端は、同社のIR(投資家向け広報)資料からも読み取れる。同社は、「ホテル」「物流施設」など4つの事業の収益状況を表す際に、売上高は用いず売上総利益の比率で示している。
では、注目する指標には何があるのか。同社の事業特性から大和証券の増宮氏が主に注視しているのが、次の3つだ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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取材・文/真弓重孝、高山英聖
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この記事を読んで分かること |
1 目標株価5万円の根拠 |
2 株価動向を占う際に、注視すべき指標 |
3 株主還元の方針 |
前年同期から営業利益は4.6倍、当期純利益は8.9倍――。
霞ヶ関キャピタル<3498>の2025年8月期1Q(第1四半期)決算は、利益が大きく伸長したにもかかわらず、同社株の上値は重い状況だ。
発表翌日の今年1月15日の終値は、前日比▲7%の1万3540円に沈んだ(下のチャート)。株価にモメンタム(騰勢)が欠ける状況となっているのは、昨秋から続く主に需給面からの2つの懸念だ。
1つは、日銀の追加利上げに対する警戒感だ。業績の成長に有利子負債の拡大がセットになる事業構造の同社にとって、利上げはネガティブ視されやすい。
もう1つは、昨秋のCB(転換社債)の発行だ。24年10月17日に発表すると、 EPS(1株当たり当期純利益)の希薄化懸念から下落基調で推移した。昨年12月半ばから反発に転じているものの、週足ベースで見ると、昨春頃からやや大きめのボックス圏で推移する格好だ。
ただセンチメント(投資家心理)は揺れ動いているが、業績のモメンタムに衰えは見られない。29年8月期までの中期経営計画では、最終年度の純利益は500億円と、24年8月期の50億円から10倍に拡大する見込みだ。
中計達成の確信が高まれば、株価は足元の3倍を超える水準の「5万円も視野に入る」と、大和証券の増宮守アナリストは分析する。時価総額は足元の1500億円から5000億円に膨らむ計算だ。
同社株が上値を切り上げていく鍵は、どこにあるのか。
■霞ヶ関Cの日足チャート(2024年9月末~)

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
「株価5万円」の根拠は?
まず、増宮氏が株探の取材で「株価5万円」としたのは、次の計算式からだ。29年8月期の予想EPSを5000円とし、これに予想PER10倍を掛けたものだ。
EPSを5000円としたのは、29年8月期の利益計画を、やや上振れる前提だ。増宮氏は会社計画を慎重に見ても、EPSは4418円になると想定。これを上振れるとして、5000円を前提とした。
PERの10倍は、直近の最低水準を参考にした。同社の足元のPERは14倍台で推移するが、24年12月には一時11倍と、10倍前後に低下した(下)。
ただし、同社の成長性を鑑みれば「PERは、足元のTOPIXの15倍水準を上回って推移しても不思議ではない」と増宮氏は言う。となると株価は、足元の1万4000~1万5000円を起点にすると、5倍程度の7万5000円まで評価されることになる。
■『株探プレミアム』で確認できる霞ヶ関CのストリカルPER(日足ベース、2023年末~)

利益成長は、需給懸念の縮小にも寄与
同社株の動向を占ううえで、ポイントの1つが「純利益」になる。
純利益が膨らみ、自己資本に厚みが生まれれば銀行借り入れが使いやすくなり、エクイティファイナンス(株式発行による資金調達)による需給悪化懸念で株価の上値が重くなる可能性が低くなるからだ。
25年8月期の予想純利益は、会社計画ベースで前期から2倍の100億円となっている。今期以降も、純利益100億円超えの状況が続けば、足元で約280億円となる自己資本に厚みが増して、自己資本比率の向上が見込める。
同社・管理本部の廣瀬一成取締役も「自己資本比率」の向上は、KPI(重要業績評価指標)の1つという。
同社は、2023年10月に東証グロース市場からプライム市場に区分変更してからエクイティファイナンスを3回実施し、計350億円ほど調達している(下の表)。いずれも発表後は株価を下げている。
■霞ヶ関Cのエクイティファイナンスの事例、発表翌日の株価騰落率
発表日 | 資金調達の手段 | 手取り概算額 | 翌日の株価騰落率 |
2023年12月8日 | 新株式の発行 | 127億円 | ▲17.4% |
2024年1月19日 | 第三者割当増資 | 16億円 | ▲2.4% |
2024年10月17日 | 転換社債 | 220億円 | ▲7.2% |
度重なる資本市場からの調達は、自己資本比率の低さなどから銀行借り入れによる調達に一定の制約があったため。これまで、同社の自己資本比率は20~30%台で推移していた。
しかし、純利益「100億円超え」が安定すれば、
→金融機関から借り入れ
→開発用地の取得拡大(≒棚卸資産の拡大)
→利益拡大
→自己資本比率の向上
→同借り入れの拡大
――と、間接金融での調達を活用した成長が軌道に乗る。
同社の廣瀬取締役は、「純利益が100億、150億円の水準に達すれば、エクイティファイナンスなど直接金融による調達が常態化することはなくなるだろう」との見通しを示している。
■霞ヶ関Cの廣瀬一成取締役

「売上高」の伸びより、重要なもの
では、霞ヶ関Cの純利益が計画通り拡大していくかを見極めていく際に、トップライン(売上高)の伸びは重要なのか。
大和証券の増宮氏は、同社の売上高の状況は評価に加えていないとする。取引先との関係から、売上高のみ積み上がるケースもあるからだ。その一端は、同社のIR(投資家向け広報)資料からも読み取れる。同社は、「ホテル」「物流施設」など4つの事業の収益状況を表す際に、売上高は用いず売上総利益の比率で示している。
では、注目する指標には何があるのか。同社の事業特性から大和証券の増宮氏が主に注視しているのが、次の3つだ。
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
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