【特集】プラチナは安値もみ合い、米国の関税引き上げの行方を確認 <コモディティ特集>

トランプ米大統領は就任式の演説で不法移民の取り締まりなどを優先課題に挙げ、「米国の黄金時代が始まる」と表明し、就任初日に通商に関する覚書に署名するとみられていたが、当日の新たな関税措置の導入は見送った。ただ、米大統領はメキシコとカナダからの輸入品に最大25%の関税を2月1日までに賦課することを計画している。また、米ホワイトハウスは、気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」から離脱すると発表し、エネルギーに関する国家非常事態を宣言する大統領令にも署名した。更に米実業家イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)新設に向けた大統領令に署名。約100本の大統領令に署名したとされ、各市場の反応を確認したい。就任当日の関税導入が見送られたことを受けてドル安に振れたが、各国との交渉の行方も確認したい。
貿易摩擦に対する懸念が高まると、プラチナの圧迫要因になるとみられる。一方、電気自動車(EV)普及に関するバイデン前政権の取り組みを覆し、EV販売の義務化が撤廃される見通しであることはプラチナの下支え要因である。供給不足見通しもプラチナの下支え要因だが、関税引き上げの行方を確認するまで安値圏でのもみ合いが続くとみられる。
●米FRBの利下げペース鈍化と中国の景気刺激策
昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き下げ、4.25~4.50%とした。金利・経済見通しでは2025年の利下げ回数が2回と想定され、昨年9月の前回見通しの4回から半減している。パウエル米FRB議長は記者会見で「インフレの進展を見極めながら慎重に進む必要がある」と述べている。経済指標では労働市場の堅調が示されたが、インフレの落ち着きも示され、利下げ期待が戻った。
昨年12月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は25万6000人増加し、事前予想の16万人増を上回った。失業率は4.1%と前月の4.2%から低下した。一方、昨年12月の米消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇と前月の2.7%から伸びが加速し、昨年7月以来の大幅な伸びを記録した。ただ、コアCPIは前年比3.2%上昇と前月の3.3%上昇から伸びが鈍化した。トランプ米政権の政策でインフレ高止まりが見込まれているが、米大統領の経済チームはインフレ回避のため、関税を月ごとに徐々に引き上げる案を検討している。
中国の習近平国家主席は新年に向けたテレビ演説で、2025年の成長促進へ一段と積極的に政策を実行する方針を明らかにした。昨年第4四半期の中国の国内総生産(GDP)は前年同期比5.4%増加した。事前予想の5.0%増を大幅に上回り、2023年第2四半期以来の高水準となった。昨年通年の成長率は5.0%となり、政府目標を達成した。
ただ、第4四半期の好調は輸出の前倒しが背景にあるとみられており、今年は米国との貿易戦争に対する懸念が出ている。トランプ米大統領の就任式前に習主席との電話会談が行われたことが明らかになり、貿易戦争に対する懸念が後退する場面もみられたが、今後の交渉の行方を確認したい。米大統領が財務長官に指名したスコット・ベッセント氏は、中国の貿易黒字を指摘し「世界史上最も不均衡な経済」と批判している。また、米上院は20日の本会議で、対中強硬派として知られるマルコ・ルビオ上院議員の国務長官指名を全会一致で承認した。
●NY先物市場で売り圧力も年明けは買い戻される
プラチナETF(上場投信)残高は1月17日の米国で33.68トン(昨年11月末34.28トン)、英国で19.22トン(同18.44トン)、南アフリカで10.77トン(同11.17トン)となった。合計で0.22トン減少し、投資資金が流出した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月14日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万5560枚(前週1万7847枚)に縮小した。昨年10月29日の3万5543枚をピークとして昨年12月31日に昨年9月以来となる5656枚まで縮小したが、年明けは売られ過ぎ感から新規買い、買い戻しが入って買い越しを拡大した。ただ、戻り場面で利食い売りが出た。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース