市場ニュース

戻る
 

【特集】プラチナは値固めへ、FRB議長のタカ派発言受けたドル高再開が重石に <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、2月末に昨年10月以来の安値902ドル台をつけたのち、欧米の堅調な経済指標やドル高一服をきっかけに買い戻されて下げ一服となった。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が議会証言でタカ派の見方を示すと、ドル高が再開し、戻りを売られた。

 パウエル議長は予想以上に強い経済指標を指摘し、政策金利を従来の想定以上に引き上げる必要がある可能性を示した。CMEのフェドウォッチでは、21~22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.50ポイント引き上げの見方が高まった。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は6月に5.50~5.75%(現在4.50~4.75%)に引き上げられ、12月までの据え置きを織り込んでいる。米10年債利回りは昨年11月以来となる4.09%まで上昇したのち、上げ一服となったが、利上げ長期化の見方に変わりがなければ高止まりするとみられる。

 1月の米消費者物価指数(CPI)は前年比6.4%上昇と前月の6.5%上昇から伸びが鈍化したが、事前予想の6.2%上昇を上回った。米個人消費支出(PCE)デフレータは前年比5.4%上昇と前月の5.3%から伸びが加速し、インフレ高止まりに対する懸念が強い。また、第4四半期の米非農業部門の単位労働コスト改定値が前期比3.2%上昇と速報値の1.1%上昇から上方改定され、労働市場のひっ迫感も強い。

 今夜はパウエル議長が米下院金融サービス委員会で証言する。また、10日には2月の米雇用統計の発表がある。金融政策の見通しを引き続き確認したい。

 一方、2月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)速報値も前年比8.5%上昇と前月の8.6%上昇から鈍化したが、事前予想の8.4%上昇を上回った。インフレ高止まりから欧州中央銀行(ECB)当局者のタカ派発言も目立ち、3月と5月の理事会での利上げが見込まれている。ただ、1月のユーロ圏の小売売上高が事前予想を下回り、ユーロの上値を抑える要因になった。

●今年の中国のGDP成長率目標は5%前後

 中国の全国人民代表大会(全人代)で今年のGDP成長率目標が5%前後に設定された。新型コロナウイルス規制の撤廃で中国経済の回復期待が高まるなか、市場予想の下限となった。ただ、前年の3.0%(目標5.5%)を上回る見通しであり、新型コロナウイルスの感染が山場を迎えると、個人消費が拡大するとみられる。

 プラチナは中国の輸入が続けば供給不足に転じるとみられている。当面は欧米の利上げがいつピークを迎えるかが焦点である。

 一方、習近平国家主席が、ロシアのプーチン大統領との首脳会談のため訪ロを準備していると伝えられたことが懸念される。中国外務省は、ウクライナ危機の政治的解決に関する文書を発表した。欧米の企業がロシアから撤退したのち、中国の企業が進出しており、ロシアへの武器供与に対する警戒感が出ている。ウクライナ情勢の行方も確認したい。

●プラチナは投資資金流出や大口投機家の買い越し縮小が圧迫

 プラチナETF(上場投信)残高は3月7日の米国で31.32トン(1月末32.50トン)、6日の英国で14.05トン(同14.14トン)、3日の南アフリカで11.41トン(同10.31トン)となった。欧米のインフレ高止まりを受けて投資資金が流出する一方、南アで安値拾いの買いが入った。値固め局面になるようなら投資資金が戻る可能性がある。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告の発表はサイバー攻撃の影響でデータがそろわず、1月31日時点分から遅れながらの発表となっている。2月7日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万0620枚(前週1万6137枚)に縮小した。2021年4月以来の高水準となった1月10日の3万0702枚から手じまい売り、新規売りが出て買い越しを縮小した。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

株探ニュース

株探からのお知らせ

    日経平均