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【経済】【クラウドファンディング】“人工タンパク質”を安く、早く、安全に 食・医療の課題解決を目指すNUProtein、1月7日募集開始

 「人工タンパク質」を食・医療分野に提供するバイオベンチャーNUProtein株式会社(徳島県徳島市)が、株式投資型クラウドファンディング(普通株式型)による出資を募集します。申し込みは2023年1月7日9時開始を予定しています。

・ 普通株式型
・ 目標募集額:1260万円、上限募集額:6930万円
・ 事業会社/CVC出資実績あり
・ エンジェル税制あり(優遇措置B)
・ みなし時価総額:6億2202万円
・ 類似上場企業:キッズウェル・バイオ、サンバイオ、ヘリオス、ブライトパス・バイオ、湖池屋、きちりホールディングス

※「みなし時価総額」はミンカブ編集部が「発行済み株式数×募集株式の払込金額」により試算

人工タンパク質を「安く、早く、安全に」

 NUProteinは、人工タンパク質を食と医療の両分野に向けて、「安く、早く、安全に」(同社)大量生産する技術を持つバイオベンチャーです。

 タンパク質は生命活動の根幹をなす、非常に重要な物質である一方、化学的・工業的に合成できるものではなく、同社はバイオテクノロジーによって、タンパク質をより安く、手軽に合成できる技術を通じ、培養肉、創薬、バイオマス・エネルギーなど幅広い産業の発展に寄与したいと考えています。

前回募集からの進捗

 同社は2021年10月、イークラウドで343人の個人投資家から、5738万円の資金調達を行い、その資金は海外向け事業開発や、コア技術である小麦胚芽由来のタンパク質合成技術の改良に充てています。

 資金調達から現在に至るまで、複数の国外培養肉・培養魚肉メーカーと本格的な取引に向けた商談を開始するとともに、複数の大手メーカーとの共同開発を実施、また、複数の助成金に採択されたほか、国内外の複数の賞を受賞するなど海外展開も進めています。

 同社は主に、3つの事業を行っています。

(1)タンパク質関連の研究を行う研究機関に向け、タンパク質の合成試薬を販売する「試薬販売事業」

(2)国内外の培養肉・培養魚肉メーカーに向け、人工タンパク質の合成に必要な成長因子を提供する「成長因子販売事業」

(3)食品・医療メーカーに向け、成長因子を大量に合成するための原料の販売・知財供与を行う「原料販売事業」

 2021年に目標としていた売上については、特に米FDA(米国食品医薬品局)において、培養肉や培養魚肉の市販前認可が想定よりも長くかかり、研究開発フェーズから移行しなかったなどの理由で未達となる一方、前年比135%増加しています。

 各事業の概況は以下の通りです。

【試薬販売事業】

 試薬商社を通じて、研究機関に向け、研究用の試薬を販売する事業。コロナ禍の影響から回復した海外売上がけん引し、全体で前年比130%の売上高となりました。

【成長因子販売事業】

 培養肉・培養魚肉メーカーに向けて成長因子を販売する事業。海外培養肉メーカーとの共同研究や、実証に向けた売上が当初の目標を下回ったものの、国内の受託による売上が計画通りに推移、全体で前年比137%の売上を記録しています。

【原料販売事業】

 培養肉・培養魚肉メーカーなどの食品メーカーや医療メーカーが、自社工場でさらに安価に成長因子を大量に合成するための原料となる小麦胚芽抽出液を販売する事業。小麦胚芽抽出液を基にした最終製品に対して、ライセンス収益を得るというモデルです。

 培養肉・培養魚肉メーカーの多くは研究開発を経て、数千リットル規模のバイオリアクター(培養槽)における大量生産を計画しており、同社はこれらの企業に、タンパク質合成原料として、小麦胚芽抽出液の提供を目指しています。

 同社は2021年、培養肉メーカーが集中する米国における需要を見越し、バイオインキュベーション施設との契約を締結、現地で調達した小麦を用いた抽出液の生産技術を確保しています。

 一方で、各社のFDAによる市販前認可が予測よりも長く、研究開発フェーズから移行せず、予想していたような小麦胚芽抽出液の大量販売に至らなかったため、当初計画を見直し、2022年12月、バイオインキュベーション施設の契約を解約・閉鎖する予定ですが、計画を見直した上で再度挑戦するとしています。

 進捗としては、国内のプラントメーカーと共同で、小麦胚芽の選別装置の試作機を完成させており、これは、小麦胚芽抽出液を用いたタンパク質の合成量が向上するもので、今後の大量製造と品質確保に寄与するものだといいます。将来的には、製粉メーカーなどへのライセンス供与・機器納入を目標としています。

募集の目的と見通し

 同社は今回の資金調達の目的について、遺伝子組換えイネ由来のタンパク質合成における技術基盤の確立を挙げています。

 同社は小麦胚芽の抽出液を用いて、極めて短い期間でタンパク質合成に必要な「成長因子」と呼ばれるタンパク質を合成する技術を確立していますが、各メーカーとの商談の中で、小麦胚芽由来の合成技術は培養魚肉の培養に適しているものの、培養肉においては、より高濃度の機能性タンパク質が求められることがわかったといいます。

 これは、培養肉の培養温度(約40度)が培養魚肉(約20度)よりも高く、培養中に成長因子が分解されやすいためだそうです。

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(出典:イークラウド)

 培養において、成長因子は生物種に対応したものを利用する必要があり、例えば、マグロ、鮭、ウナギなど、種類が無数にある魚介類に比べ、牛、豚などの畜肉は種類こそ少ないものの、魚よりも高濃度の機能性タンパク質が大量に必要になるといいます。

 そこで、現在確立している小麦由来の合成技術を培養魚肉メーカーに向けて、多品種・少量で提供する一方、培養肉向けには、より量産が容易な合成技術として、遺伝子組換えイネを用いた技術を確立することで、両輪でタンパク質合成の産業化を支えることを目指しています。

 売上の立ち上がりは遅れているものの、複数の培養肉メーカーとの商談が進んでいること、培養肉メーカーとの取引の規模が拡大する可能性があることなどを考慮し、前回ラウンド(約5.1億円)から約120%のアップラウンド(約6.2億円)となる調達前時価総額で、2度目の資金調達を行います。

「タンパク質危機」の回避に向けて

 同社によると、近年、食品や医療などさまざまな分野で、人工タンパク質を通じて、私たちの生活を豊かにする研究が進み、投資が活発に行われています。

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(出典:イークラウド)

 食品産業は、タンパク質合成が急速に進歩する市場の一つで、爆発的な人口増加を背景に、食肉の消費量増大が想定され、2030年に、8億4000万人が十分な食料を得られなくなる食糧危機が予測されているそうです。

 食糧、特にタンパク質の供給源を増やす手段として注目を集めているのが培養肉の開発で、培養肉は、牛や豚、鶏などの細胞を体の外に取り出して培養液で細胞を増やし、肉を製造する手法です。肉以外にも、魚やエビなどの培養技術も発達しつつあるといいます。

 家畜を飼育するための水や飼料、農地の利用量も抑えることができ、従来の畜産肉よりも、環境負荷が98%削減できるとの試算もあるため、米国、シンガポール、欧州など世界中で、培養肉の研究開発が進められ、各メーカーが市場への早期投入を目指しているそうです。

 医療においては、再生医療の分野でタンパク質合成技術の活用が期待されており、細胞を培養し、病気や事故で損なわれた臓器などの機能を回復するなどの用途が想定されているといいます。

 目や神経の難病、心不全といった分野での研究や臨床試験が進み、近年では、患者から採取した細胞を培養し、3Dプリンターで移植用の臓器を製造するなどの研究も行われており、手術や投薬など従来の手法で治療困難だった疾患を治療でき、社会保障費の抑制につながる可能性もあると同社は考えています。

 同社によると、人工タンパク質の合成の過程には、細胞を作る特殊な細胞である幹細胞と、細胞の増殖や分化を促進する成長因子という特殊なタンパク質が必要ですが、従来、製造コストの90%以上を占めると言われるほど、成長因子は高額だったといいます。

 そこで、同社は、タンパク質合成のボトルネックとなっていた成長因子を、圧倒的な効率で安価に生産する独自技術を開発。これをコアに、有用タンパク質の低コスト化と安定供給により、代替タンパク質市場の拡大▽タンパク質危機の回避▽持続性のある生産と消費に寄与していきたい考えです。

大きな成長が見込まれる培養肉市場

 同社によると、世界的な人口爆発を背景に、培養肉市場は大きく成長し続けることが予想されており、世界の食肉市場は今後約20年で、約200兆円に拡大する見込みだといいます。特に、培養肉は2040年に約70兆円と試算されるなど注目の領域で、培養肉を含めた代替肉は、伝統的な畜産業との市場シェアを逆転、6割に上るという予測もあるそうです。

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(出典:イークラウド)

 培養魚肉も同様、世界的な消費量の増加や水産資源の乱獲問題などを背景に注目が集まり、すでに米国で、高級レストランなどへの提供に向けた生産技術の研究が活発になっているといいます。

 こうしたフードテック分野には、国内外の大企業やスタートアップが相次いで参入しており、米国では、培養肉メーカーが2020年の1年間で累計約3400億円(31億米ドル)もの投資を受けるなど、期待と注目が集まる技術領域だと同社は考えています。

タンパク質合成量を増大させる特許技術群

 同社は自社の強みとして、DNAからRNAを抽出する鋳型の作成技術を活用し、成長因子を合成できることを挙げており、これを支えるのが、タンパク質合成量を効率よく増大させるための特許技術群だとしています。

(1)少量多品種のタンパク質合成を1日で可能にする小麦胚芽由来の合成技術

 独自の小麦胚芽抽出液を用いた成長因子の合成技術を確立しており、成長因子を合成するまでのプロセスは以下の通りです。

 特徴の一つは合成期間の短さで、遺伝子の増幅をPCR法で行うことにより、操作がシンプルで合成期間は短く、合成までわずか1日程度で済む特徴があるといいます。これにより、合成のリードタイムを短縮し、極めて効率的な生産が可能になるそうです。
(PCR法:「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」の略で、生物の遺伝情報を持つDNAを複製して増幅させる方法。遺伝子の研究やDNA鑑定など、幅広い分野で活用される)

 また、製粉所の副産物である小麦胚芽の搾り汁を利用するため、原料・管理コストを抑えられるほか、独自配合の小麦胚芽抽出液と組み合わせることで、成長因子の活性を高め、使用量を10分の1(同社調べ)に抑えられる点も優位性だといいます。

 現在、複数の培養魚肉メーカーと商談を進めており、実証実験では、成長因子製造コストにおいて、当初目標としていた3000分の1に近い結果を実現しているそうです。

(2)大量合成に向けたイネ由来のタンパク質合成技術

 同社は新たに、背丈が約20センチと短く、大きくならない性質を持つ矮性(わいせい)イネを利用して、牛や豚などの畜肉の培養に必要なタンパク質を大量製造する技術の開発に取り組んでいます。

 これは、遺伝子組換え技術によって、米粒の白い胚乳部分に、目的のタンパク質を蓄積できるイネの株を開発するというものです。イネの利用によって、培養肉の培養に必要なインスリン、トランスフェリンなど高濃度の機能性タンパク質の大量合成が可能になるといいます。

 開発は複数の大学を含めた産学連携で行う予定で、奈良先端科学技術大学院大学、京都府立大学、プリベンテック社の3者と、タンパク質の高発現技術を有する同社が連携し、早期の技術確立を目指しています。

 同技術の最大の優位性は、目的とするタンパク質を小面積で安く、大量に製造できる点で、矮性イネは草丈が低いため、大量に肥料を与えても倒れないという性質があり、また、丈の短さを生かした多段の水耕栽培も可能だそうです。

 イネの栽培にあたっては、海上輸送に利用される40フィートコンテナを利用した人工光型の植物工場を使う予定です。

 なお、タンパク質を蓄積できるイネの生育には4カ月程度が必要で、この期間が最終製品(培養肉向け成長因子)までに必要なリードタイムです(1年に3回収穫を行う場合)。1日で合成が完了する小麦由来の合成技術より長いものの、一度に大量生産が可能で、培養肉に必要なタンパク質の製造コストは小麦よりもさらに低くなると想定しているといいます。

 優れた製造効率の要因として、イネは温暖な環境下であれば、1年に複数回の収穫が行える「多期作」が可能な植物であることが挙げられるそうです。
(多期作:同じ土地で、1年のうち複数回にわたり収穫を行うこと。イネは亜熱帯での多期作が可能で、実際に沖縄地方などでは2期作や3期作が行われている)

 「従来の小麦由来のタンパク質合成技術に加え、合成期間は数カ月と長くなるものの、大量合成に圧倒的な優位性を持つイネ由来の合成技術を確立することで、両輪でより広く、培養肉・培養魚肉市場を支えていくことを目指します」(同社)

今後の成長に向けて

 同社はこれまで、小麦胚芽抽出物を用いたタンパク質製造技術の拡大を進めており、大手メーカーとの共同研究を主体にさらに継続発展させていきたい考えです。2023年からは、イネを用いたタンパク質合成技術の確立を進め、より大量のタンパク質を、より安価に製造する手段の開発を目指しています。

 今回の調達資金は、イネ栽培用の植物工場の設置に利用するほか、特許網拡大のための投資に活用する計画です。

 まずはイネの種を開発した後、イネ由来の成長因子の販売や種もみのライセンス販売により、収益を得る計画です。植物工場施設のリースなどが収益源となる可能性もあるそうです。
(種もみ:発芽のもととする、もみ状態の種)

 今後は海外培養肉・培養魚肉メーカーとの契約数をKPIとし、海外メーカーに対する露出と売上獲得に向けた事業開発を強化したい考えで、まずは、培養肉がすでに製造承認されているシンガポールを優先し、政府支援の厚い欧米等で事業開発活動を広く行う計画です。

 2023年7月期は、成長因子の共同開発費用収入の増加、NEDOの補助金により、赤字幅縮小を見込んでおり、また、海外の培養肉・培養魚肉メーカー向けに、成長因子や、その原料となる小麦胚芽抽出液の販売開始を計画しています。

 2024年7月期以降は、培養魚肉メーカーに向けた成長因子の売上が増加し、黒字転換する計画です。

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(出典:イークラウド)

 同社は将来的に、M&Aによるイグジットを目指しています。

 欧米をはじめとする海外のフードテックビジネスシーンでは、大企業の経営資源とスタートアップの最先端技術を相互に活用、協業する事例が多く見られると同社は分析。「タンパク質合成」においても、製品量産やサービス拡大などが求められるタイミングで、巨大な設備投資が必要になるといい、適切にM&Aを行うことで、世界規模の社会課題を解決していきたい考えです。

 売却先としては、穀物メーカー、製粉メーカー、食品メーカーなどを想定しています。

株主構成

 同社は、以下の企業などより出資を受けています。

・株式会社SRCホールディングス
・株式会社CWホールディングス
・その他個人株主

類似上場企業(業態やサービス・製品などで類似性の見られる企業)

・キッズウェル・バイオ <4584> [東証G]
・サンバイオ <4592> [東証G]
・ヘリオス <4593> [東証G]
・ブライトパス・バイオ <4594> [東証G]
・湖池屋 <2226> [東証S]
・きちりホールディングス <3082> [東証S]

発行者・募集情報

■募集株式の発行者の商号及び住所、資本金等
NUProtein株式会社
徳島県徳島市昭和町三丁目20-1
http://nuprotein.jp/ja/
代表取締役:南賢尚
資本金:38,690,000円
発行可能株式総数:30,000,000株
発行済株式総数:148,100株
調達前時価総額:622,020,000円
設立年月日:2016年8月2日
決算期:7月

■募集株式の数(上限)
普通株式 16,500株

■募集株式の払込金額
1株当たり 4,200円

■申込期間
2023年1月7日~1月16日
※上記申込期間のうち、募集期間は1月7日~1月15日。早期終了の場合、予定した申込期間の最終日よりも早く、申し込みの受付を終了することがある。
※上記申込期間のうち、1月16日は、募集期間の最終日である1月15日中に上限募集額に達し、早期終了した場合に、その後24時間のキャンセル待ちに申し込める期間。その他の場合、遅くとも1月15日までに申込期間は終了する。

■払込期日
2023年1月31日

■目標募集額
12,600,000円

■上限募集額
69,300,000円

■投資金額のコース及び株数
105,000円コース(25株)
210,000円コース(50株)
315,000円コース(75株)
462,000円コース(110株)

■資金使途
・調達額1,260万円(目標募集額)の資金使途
遺伝子組換イネ外注費用 6,000,000円
特許費用・研究開発費 3,828,000円
手数料 2,772,000円

・調達額4,095万円の資金使途
遺伝子組換イネ外注費用 6,000,000円
特許費用 4,000,000円
研究開発費 9,941,000円
新拠点賃料(植物工場設置場所) 12,000,000円
手数料 9,009,000円

・調達額6,930万円(上限募集額)の資金使途
遺伝子組換イネ外注費用 6,000,000円
特許費用 4,000,000円
研究開発費 13,115,500円
新拠点賃料(植物工場設置場所) 12,000,000円
植物工場関連設備 20,000,000円
手数料 14,184,500円

■連絡先
NUProtein株式会社
088-677-9226

※本株式投資型クラウドファンディングの詳細については、イークラウドの下記ページをご覧ください。

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