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【市況】明日の株式相場に向けて=ペロシ・ショックに揺れる市場

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(2日)の東京株式市場では、日経平均株価が前営業日比398円安の2万7594円と大幅反落を余儀なくされた。好調な戻りを演じた7月相場を引き継ぎ、8月は初日から日経平均が190円あまりの上昇でプライム市場の8割の銘柄が上昇する幸先の良いスタートとなったのだが、きょうは一転してリスクオフ一色となり倍返しの下げに見舞われた。きょうは値下がり銘柄数が9割弱に達した。

 対中強硬派で知られるペロシ米下院議長が台湾を訪問するとの報道が全体相場を波乱に導いた。アジア歴訪の一環とはいえ、バイデン米大統領にすればこのタイミングで要職のペロシ氏が訪台することは、中国を刺激することが必至で中間選挙を前に政権運営の負担が増す。支持率低下に喘ぐ民主党政権にとって「再び中国との対峙姿勢が鮮明となる何かがあれば、いわゆるUSAコールを巻き起こし民主党にとって形勢逆転の礎となるという見方が、以前からないとは言えなかった」(中堅証券ストラテジスト)と指摘する。しかし、今回のペロシ氏の蛮勇ともいえる行動に、「バイデン政権の中間選挙をにらんだ“不利な時は戦線拡大”という打算的な要素をみるのは穿(うが)ち過ぎだろう」(同)とする。

 ペロシ氏は今から33年前の1989年に起こった天安門事件に対する批判の急先鋒であり、91年には天安門広場で抗議のプラカードを掲げるという行動で世界の耳目を驚かせた。それだけに、中国にしてみれば今回のペロシ氏の訪台を静観していられないという事情がある。中国側は外務省記者会見で、ペロシ氏の行動が政治的に重大な影響をもたらすとし、主権、領土を守るため「中国軍は座視しない」という脅しにも近い警告を発している。

 市場では「中国メディアの反応も尋常ではなく、その内容を拾い読みしても事の重大さが分かる。台湾海峡へのミサイル発射などの可能性も取り沙汰されるなか、これは李登輝総統時代の1995~96年の台湾海峡危機を想起させるような事態に発展するのではないか」(ネット証券アナリスト)とする声もあった。日本にとっても対岸の火事ではない。ペロシ氏がアジア歴訪で台湾を訪問した直後に日本を訪れるとすれば、岸田首相はその火の粉を被ることにもなる。さかのぼって今年5月のバイデン米大統領との首脳会談後に岸田首相は防衛予算枠の大幅拡大に言及したが、これは加速する中国の軍拡を念頭に置いている。日米安保があればノーガード状態でも殴られることはない、という時代ではなくなっている。

 こうした状況下で、日経平均株価がボックス上限の2万8000円大台近辺に来ていた東京市場でもきょうは利食い急ぎの動きが一気に顕在化した。また、地政学リスクを嫌う海外投資家の売りも観測されていたが、このなかには戦略的な空売りもかなりのウエートで載せられていることは想像できる。売り方の目には、全体株価指数が伸びたところで叩く絶好の機会にも映るからだ。外国為替市場では急激な円高が続いている。日米金利差拡大を背景とした一方通行のドル買い・円売りの反動がどこかで出てくることは想定されたが、あまりにも円高が急で、きょうはあっという間に1ドル=130円大台攻防の様相をみせる場面があった。7月中旬ごろは今にも140円台突入を示唆する円安一辺倒の動きであったのだが、そこからわずかな時日で風景はガラリと変化し、気がつけば10円近くも円高方向に振れている。円安については悪玉論もあったが、明らかに株式市場にとって味方だった。とすれば、ここ10日あまりの円高進行を見なかったことにもできない理屈である。

 目先は決算発表も絡み、なかなか手が出しにくい。物色対象としては低位株か需給にしがらみのない直近IPO銘柄に資金が流れやすいということはいえそうだ。きょうは大陰線を引いたもののHOUSEI<5035>は直近IPOならではの強みを発揮していた。この流れに乗って好チャートのマイクロ波化学<9227>などもマークしておきたい。低位株ではスパークス・グループ<8739>や東洋証券<8614>が強い動きをみせている。

 あすのスケジュールでは、8月の日銀当座預金増減要因見込みが朝方取引開始前に発表される。海外では7月の財新中国非製造業PMI、6月のユーロ圏小売売上高、ブラジル中銀の政策金利発表、7月のADP全米雇用リポート、7月の米ISM非製造業景況感指数、6月の米製造業受注など。国内主要企業の決算発表ではZホールディングス<4689>、花王<4452>、JFEホールディングス<5411>、リコー<7752>、任天堂<7974>、日本郵船<9101>などが予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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