【市況】明日の株式相場に向けて=FOMC直前の「半導体関連」の静かな復活
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
為替市場で1ドル=137円台に入った円安が株価の下支え材料となったといえば、そうともいえるが、最も為替感応度が高いはずの自動車株にこれを好感した買いが集まっているわけでもなく、海運大手が踏ん張りをみせたほかは、ディフェンシブの電鉄株や医薬品株が業種別値上がり上位を占めるような、ひとことで言えば活力に乏しい地合いである。
日本時間あす未明に判明するFOMCの結果はかなりの確率で0.75%の利上げが見込まれるが、これについて市場は織り込み済み。会合後のパウエルFRB議長の記者会見で、どういったニュアンスの発言をするかに耳目の集まるところで、差し当たってインフレのピークアウト感が指摘されるなか、次の9月のFOMCの利上げ幅にマーケットの関心が高まりそうだ。市場では「本線は7月0.75%、9月0.75%、11月0.5%で打ち止めというシナリオ。ただ、11月時点で政策金利は3.75%まで水準が切り上がるため、米経済をオーバーキルしてしまうという警戒感も拭えず、とりあえず9月は0.5%の引き上げで様子を見るというケースも考えられる。パウエル氏の発言から推測できる可能性もある。9月0.5%の線なら相場にはポジティブ」(生保系エコノミスト)とする。
FOMC直前で売り買いともに気の抜けたきょうの相場で、おやっと思わせる動きを見せたのが半導体関連株の強さだ。個人投資家にとっても非常に関心の高い花形セクターではあるが、最近は言うまでもなく精彩を欠いている。半導体関連に対する投資家の失望感を如実に反映しているのが、半導体製造装置 で世界指折りの実力を有する東京エレクトロン<8035>の株価だ。日経平均寄与度の高さでも特筆される花形中の花形だが、6月中旬以降の急落はまさに千尋の谷底に丸太を転がすが如しで、信用取引を使って買い向かう逆張り個人投資家を片っ端から弾き飛ばし、4万円近辺まで転がり続けた。その後下げ止まったとはいえ、本格リバウンドに転じる気配もなく4万円台半ばでのもみ合いが続いていた。
その東エレクがきょうは夏枯れ相場のなかで一時1500円を超える上昇で4万6000円台まで上値を伸ばした。取引時間中に4万6000円台をつけたのは6月29日以来で約1カ月ぶりである。このタイミングで半導体製造装置関連の主力である同社株の戻りには少なからず違和感がある。これについては、「半導体関連株への空売りで話題となったヘッジファンド最大手のブリッジウォーターが、東エレクやASMLといった半導体関連主力への売り攻勢を休止した可能性がある」(ネット証券アナリスト)という指摘がある。
米中の覇権争いに加え新型コロナウイルスという未曽有のパンデミックも影響して、半導体は需給逼迫状況に陥り、これは製造装置や関連素材メーカーのビジネスチャンスを大きく膨らませることになった。しかし、結局はシクリカルの波に抗えず、足もとでは中国のダブルオーダー(二重発注)の解消などに伴い在庫調整の波に晒される可能性が高まっている。株価もその変化を読んで、今年に入ってからは荒い値動きで、半導体関連株は下値を試す銘柄が相次いだ。しかし、ヘッジファンド筋の半導体株ショート戦略も目先ピークアウトした可能性があるとすれば、それは株式市場にとっても朗報となる。半導体関連株が地を這ったままでは日経平均は上がらないのが道理だからだ。東エレクの動きは、投資対象という目線ではなく、ひとつのバロメーターとしてマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、6月の建機出荷が発表される。また、IPOが2社予定されており、HOUSEI<5035>、unerry<5034>が東証グロース市場に新規上場する。海外では7月の独消費者物価指数(CPI)、4~6月期の米実質GDPなどが注目されている。国内主要企業の決算発表ではオリエンタルランド<4661>、アドバンテスト<6857>、村田製作所<6981>などがある。一方、米主要企業ではアップル<AAPL>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、インテル<INTC>などの決算発表にマーケットの関心が高い。(銀)
出所:MINKABU PRESS
最終更新日:2022年07月27日 19時10分