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【市況】日経平均は続落、明日のFOMCは無風通過か?/ランチタイムコメント

日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより

 日経平均は続落。107.26円安の27024.08円(出来高概算5億1074万株)で前場の取引を終えている。

 25日の米株式市場でNYダウは66.77ドル安(-0.19%)と小幅反落。ウクライナを巡る緊張に加え、日本時間明日未明に結果公表を控える連邦公開市場委員会(FOMC)への警戒感から売りが続いた。ただ、アメリカン・エキスプレスなどの企業の好決算や5年債入札の結果を受けた安心感からNYダウは一時上昇に転じる局面もあった。ハイテク株への売りは続きナスダック総合指数は-2.27%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は-3.70%とそれぞれ大幅に反落した。小幅安にとどまったNYダウを受け日経平均は25.36円安でスタート。寄り付き直後に一時27184.54円(+53.20円)とプラスに転じる場面もあったが、FOMCの結果公表を目前に控えるなか買い手に乏しくすぐに失速。早々に27000円を割り込むと下値模索の動きが続いたが、引けにかけては急速に下げ渋り27000円を回復した。

 個別では、米ハイテク株安を受けて東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>の半導体関連株のほか、村田製<6981>、TDK<6762>、ローム<6963>などが下落。本日大引け後に決算発表を控える日本電産<6594>とファナック<6954>は出尽くしへの警戒感から4%近く下落。また、22年度に6年ぶりとなる過去最高の世界生産台数の計画を発表したトヨタ自<7203>は足元の減産報道から計画への懐疑的な見方もあり下落、デンソー<6902>も安い。一方、傘下の英アームの新規株式公開(IPO)の準備について伝わったソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>が大幅高。郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの海運株、三菱UFJ<8306>、日本製鉄<5401>、住友鉱<5713>などの景気敏感株の一角も高い。ほか、ベイカレント<6532>、HOYA<7741>、マネーフォワード<3994>などグロース(成長)株の一角も買われている。

 セクターでは石油・石炭製品、パルプ・紙、食料品などが下落率上位に並んだ。一方、その他製品、海運業、精密機器などが上昇率上位に並んだ。東証1部の値下がり銘柄は全体の44%、対して値上がり銘柄は49%となっている。

 本日の東京市場では主要株価指数がまちまち。イベント前に大型株を手掛けにくいなか日経平均や東証株価指数(TOPIX)は軟調だが、幕間つなぎの物色でJASDAQ平均とマザーズ指数は小幅ながら上昇している。東証1部全体では値上がり数と値下がり数の割合はほぼ拮抗しており、FOMC前の模様眺めの雰囲気が伝わってくる。前場、日経平均は一時26858.68円まで下げる場面があり、売り仕掛けのような動きも見られたが、前引けにかけては再び27000円を回復するなど、心理的な節目を意識した底堅さも見られた。

 さて、明日はいよいよFOMCの結果公表とパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見の内容を織り込むこととなる。市場ではすでに年4回の利上げと年央からの量的引き締め(QT)はほぼ織り込み済みだ。焦点は3月の利上げ幅が0.25%と0.5%のどちらなのか、量的緩和縮小(テーパリング)のペースを一段と加速した上でQTの前倒しがあるのかといった点だろう。

 足元、米国では経済指標の下振れが目立つ。12月の小売売上高が前月比1.9%減と市場予想を大きく下振れたほか、18日に発表されたNY連銀製造業景気指数は予想の25.0を大幅に下回る-0.7だった。また、24日に英IHSマークイットが発表した1月の購買担当者景気指数(PMI)の総合は50.8と前月から6.2ポイントも低下し、1年半ぶりの低水準となった。さらに、前日に発表された1月リッチモンド連銀製造業指数は8と前月から半減し、予想の14も大きく下振れた。

 前日には国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表し、世界経済全体の実質成長率は4.4%と昨年10月時点の予測から0.5pt引き下げられた。特に際立たったのが、1.2pt引き下げられた米国と0.8pt引き下げられた中国だ。米国では長期化するインフレやバイデン政権が進める大型歳出・歳入法案の遅れ、金融政策の引き締めなどが反映され、中国は感染封じ込めのための厳しい「ゼロコロナ」政策による内需停滞が要因だ。22年の米国の成長率は4.0%と21年の5.6%から大きく後退し、中国は4.8%と21年の8.1%から大幅に低下する。

 米国をはじめとした各国の経済指標の下振れ傾向に加え、世界経済大国のツートップである米中の景気見通しの大幅下方修正は景気減速懸念を一層高めるような内容だ。米10年国債利回りは19日に一時1.9%を付けた後は足元1.7%台半ばで安定している。また、ドル円は1ドル=116台の高値を付けた後は失速し、足元では113円台後半だ。米長期金利やドル円の上昇一服は、景気減速の兆候が見られるなかでのFRBによる金融引き締めが景気後退を招くのではないかとの不安を表していると考えられる。

 一方、昨日に発表された米11月S&Pコアロジック・ケース・シラー・住宅価格指数は前年同月比+18.3%と引き続き高い伸びではあったが、10月の同+18.5%からは伸びが鈍化し、伸びが減速したのは4カ月連続となった。

 インフレ指標への反映に遅行性のある平均賃金や住宅価格の伸びがインフレ長期化の懸念を強めているわけだが、後者の住宅価格については若干ながらもこのように鈍化の兆候が見られている。ベース効果などの影響もあり、市場では年央からのインフレ鈍化というシナリオも根強い。こうした背景もあり、足元の経済・物価指標を見る限りでは、さすがのFRBも景気やマーケットに配慮し明日のFOMC結果公表において、市場予想を上回るような過度な引き締め策を発表することはないのではと考えている。その通りとなれば目先のあく抜け感から相場の反発も短期的には期待できそうだ。しかし、昨年12月からのFRBの急速なタカ派転換は目覚ましく、都合のよい予想が裏切られるリスクもあろう。投資家には慎重な対応を求めたい。

 後場の日経平均は引き続き27000円を意識した一進一退となりそうだ。アジア市況が小高いなか、時間外取引の米株価指数先物も本日は今のところ落ち着いている。材料難のなかイベント直前に持ち高を大きく動かす向きは少ないとみられ、後場は落ち着いた展開が想定される。
《AK》

 提供:フィスコ

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