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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」―(16)天井と底のサインを出来高から読み取ろう!

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆出来高の増加から株価の天井、底打ちを読み取る

 では、実際にソフトバンクグループ <9984>のチャートを見てみましょう(図2)。2020年1月からの日足チャートを表示させています。2020年初めは世界中がコロナショックに見舞われたわけですが、日本の株式市場も同様にショック安に巻き込まれました。ソフトバンクグループも例外ではなく、株価は5871円から2609円まで下落したわけですが、この下落していく過程で出来高が増加していることがわかります。株価が下落すると「安くなったから買おう」と値頃感から「買い」を考える投資家が増えるため、出来高が増加するのです。

 チャートからは、出来高が増加しピークを迎えるとともに、株価が底を売っていることがわかります。ただ、そこで買うことができるかといえば、2609円まで下落した当時は総悲観のただ中にあり、まさに「陰の極」と言った状況でした。出来高が増加して投資家の注目が高まっていたとしても、その時に買いに動くことはなかなか難しかったかもしれません。


●図2 ソフトバンクグループ <9984>  日足と出来高チャート
【タイトル】

 底を打った株価は8月に7077円の高値を付けた後、中段保ち合いを上放れると2021年3月の高値1万0695円まで上昇していくわけですが、その途中、高値を抜いたタイミングで出来高が急増していることがわかります。つまり、株価が高値を抜いたことで先高期待が高まり、「買っておこう」と追随する投資家が増え、出来高の急増につながったのでしょう。

 ただ、すでに底の2609円からみればだいぶ上昇したところで出来高が急増しているわけで、天井が近づいているのかなと考えることもできました。しかしその後、株価はさらに大きく上昇していますので、判断が難しいポイントだったといえます。このように判断が難しい局面は株価が底を打って上昇し、ある程度上昇した時です。さらなる上昇となるのか、それともピークとなって下落するのかの判断の目安の一つとしては、株式市場の全体地合いに過熱感があるのかといった点が目安になるかもしれません。

 2021年3月の天井付近でもわずかに出来高は増加していますが、それほど目立つものではありません。しかし、株価が25日と75日移動平均線を割り込み、下落に転じたことが鮮明になっていくポイントでは出来高がそれまでの水準から目立って増加している様子がわかります。これはそれまで続いてきた上昇トレンドが下降トレンドに転じる兆しとして警戒され、我先にと投資家が売りを出したことが下げをさらに加速させたと考えられます。

 このように出来高が増加する状況を見るだけで、投資家の注目をどれだけ集めているのかがわかります。そして、出来高の増加がどの株価水準で表れるのかを確認することで、株価のトレンド分析に役立てることができるのです。

 私たちは欲に駆られて、株価が上昇してマーケットが盛り上がってくると、上昇に乗り遅れまいと強気になりがちです。反対に、株価が急落すると、下げがいつまで続くのか不安になって悲観的になってしまいます。周りの雰囲気にのまれて右往左往していては、マーケットの動向にいつまで経っても振り回される状況が続くことになります。株価は私たち投資家が売買をすることで成立するわけですから、いたずらにその時々の雰囲気にのまれることなく、出来高の推移を冷静に観察して売買戦略に役立てていきたいものですね。

 


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